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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科47巻2号

2019年02月発行

文献概要

連載 臨床研究の知識update

(1)利用目的から考える個人情報保護—医療・医学研究から商業利用まで

著者: 田代志門1

所属機関: 1国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理・医事法研究部

ページ範囲:P.241 - P.248

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Ⅰ.現場の事例から
 まずは具体的な事例から考えてみたい.あなたは総合病院に勤務している医師であり,ある医療機器メーカーからパンフレットや展示で使用したいので,病院で実際にその機器を使って撮像したさまざまな画像をまとめて提供してほしい,と持ち掛けられたとする.こんなとき,どう対応すべきだろうか.
 まずどの医師でも考えるのは,仮に渡すにしても,画像そのものから患者が特定できそうなものはまずい,ということだろう.例えば,頭部のCTの断層撮影情報は再構成すれば顔画像が作れてしまうので,やめたほうがよいかもしれない.また,DICOM画像の場合,タグ情報に患者IDや氏名,生年月日などが含まれているので,このあたりは渡すにしても削除する必要がある.いずれにしても,渡す場合には一定の加工が必要だし,直接個人が特定できそうなものは渡せないだろう,というのが1点目である.これはこれで正しい.

参考文献

1) 日置巴美,板倉陽一郎:個人情報保護法のしくみ.商事法務,東京,2017, pp.28-32
2) 個人情報保護委員会:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(平成28年11月) https://www.ppc.go.jp/personal/legal/
3) 個人情報保護委員会,厚生労働省:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(平成29年4月14日) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027272.html
4) 厚生労働省,レセプト情報等の提供に関する有識者会議:レセプト情報・特定健診等情報データの第三者提供の在り方に関する報告書(平成25年1月) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002s0h8.html
5) 厚生労働省,医療情報データベースの運営等に関する検討会:医療情報データベースの運営等に関する検討会 最終報告書(平成29年8月) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000174865.html
6) 文部科学省・厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(平成26年12月22日) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kenkyujigyou/i-kenkyu/index.html
7) 岡本利久:次世代医療基盤法(「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」)の概要.論究ジュリスト24:115-119, 2018
8) 坂下昭宏,藤井啓介:改正法における統計の扱い(特集:個人情報保護法改正で何が変わるか 必要となる実務対応の検討).Business Law Journal 89:49-51, 2015
9) 鈴木正朝,高木浩光,山本一郎:ニッポンの個人情報—「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ.翔泳社,東京,2015, pp.18-31
10) 田代志門,藤原康弘:個人情報保護法改正と研究倫理指針—「学術研究の用に供する」とは—.日本小児血液・がん学会雑誌54:279-286, 2017
11) 田代志門:医学研究の現場からみた個人情報保護法改正—「適切な同意」とは—.NBL 1103:34-41, 2017
12) 田代志門:改正個人情報保護法と医学研究—「新しい」個人情報の定義とは—.精神科治療学32:1529-1533, 2017
13) 田代志門:個人情報保護法改正と臨床研究—同意手続きが「困難な場合」とは—.薬理と治療45(suppl 2):s106-108, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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