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特別寄稿 脳神経外科コントロバーシー2019
(9)増え続ける高齢者腰椎変性疾患に脳神経外科医としてどのように対峙するか
著者: 西村由介1 原政人2 若林俊彦1
所属機関: 1名古屋大学医学部脳神経外科 2稲沢市民病院脳神経外科
ページ範囲:P.261 - P.270
文献購入ページに移動われわれが“高齢者”という場合,通常は75歳以上の後期高齢者を指すことが多い.内閣府による平成30年版高齢社会白書によると,現在,後期高齢者は1,748万人,総人口に占める割合は13.8%といわれ,その数は年々増加している.このように本邦は世界一の超高齢社会を迎えるとともに,高齢者脊椎変性疾患は増加の一途をたどっており,特に腰椎変性疾患はその頻度やADLに与える影響から,脊髄脊椎外科医にとって最も重要な疾患といえる.平成28年度国民生活基礎調査では,国民の自覚症状として最も多いのは腰痛で,国民の約10%にみられる.これは日常生活において最も大きな可動性を有し,メカニカルストレスにさらされる部位の加齢変化が基盤となっており,すなわち腰痛に代表される腰椎変性疾患は決して特殊な病態ではなく,加齢とともに誰にでも起こり得る必然の病態なのである1).
そのような“病気”ではなく,“加齢変化”に伴う神経症状や画像所見を有する患者に対しては,患者の社会的背景・患者や家族の希望・症状出現前のADL・併存疾患・内服薬・身体的予備力など,高齢患者ならではのさまざまな因子を総合的に考慮して,適切な治療適応と手段を提示する必要がある.われわれは,予防医療や内科治療の進歩,健康意識の高まりから,より良好なADLを求める高齢患者にどのような治療の選択肢を提供できるだろうか? また,手術治療を選択した場合には,治療すべき責任病変の同定と病態の把握をどのように行い,どの手術手技を用い,どの範囲まで治療し,どこに治療目標点をおくべきだろうか? このような壮大なテーマの答えは容易に出るものではなく,正しい答えは存在しないであろう.しかし,答えは存在しなくても,そこには一貫した哲学が必要である.
本稿では,日本脳神経外科学会第76回学術総会のコントロバーシーセッション[脊椎・脊髄]を企画し,司会を務めさせていただいた経験と,私自身が臨床現場で得た知見から,本疾患に対する私なりの治療方針・哲学について,手術治療に焦点をあてて提示したい.
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