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文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科48巻11号

2020年11月発行

文献概要

テクニカル・ノート

側腹壁アプローチによる体位変換を要しない腰部くも膜下腔—腹腔短絡術腹側カテーテル留置

著者: 田中達也1 緒方敦之2 岩下英紀1 劉軒2 正島弘隆2 桃﨑宣明1 本田英一郎3 阿部竜也2

所属機関: 1伊万里有田共立病院脳神経外科 2佐賀大学医学部附属病院脳神経外科 3白石共立病院脳神経脊髄外科

ページ範囲:P.1021 - P.1027

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Ⅰ.はじめに
 特発性正常圧水頭症は診療ガイドラインによる疾患概念の普及と社会の高齢化により罹病患者が増加したため,シャント術の件数は増加している.また,SINPHONI(Study of Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus on Neurological Improvement)-23)において,腰部くも膜下腔—腹腔短絡術(lumbo-peritoneal shunt:L-Pシャント)は脳室—腹腔短絡術(ventriculo-peritoneal shunt:V-Pシャント)と比較して非劣性が証明された.脳に穿刺を行わないL-Pシャント術を選択する施設が増加しており,全国疫学調査5)では,V-Pシャント43.2%,L-Pシャント55.1%の施行率である.
 一方,L-Pシャント腹部操作時の体位は,腰椎側手術後に側臥位から仰臥位に変更する方法2),手術台の回旋を利用した体位変換を行う方法7)が報告されている.手術台の回旋を利用した方法はドレープの交換を必要とせず,術中感染の合併症もないが患者転落の危険がある.われわれの施設でも手術台の回旋を利用した体位変換を行ってきたが,2017年8月より体位変換を行わず,側腹壁アプローチにて腹側カテーテルを留置する手術法を行っている.
 今回,体位変換を行わない側腹壁アプローチによるL-Pシャントについて画像的検討を行い,その手術成績について報告する.

参考文献

1) 新井 一:脳室腹腔短絡術.河瀬 斌(総編集):脳神経外科専門医をめざすための経験すべき手術44.メジカルビュー社,東京,2007,pp.32-35
2) 岩崎真樹:はじめての腰椎腹腔シャント術.脳外速報24:1082-1087, 2014
3) Kazui H, Miyajima M, Mori E, Ishikawa M;SINPHONI-2 Investigators:Lumboperitoneal shunt surgery for idiopathic normal pressure hydrocephalus(SINPHONI-2):an open-label randomised trial. Lancet Neurol 14:585-594, 2015
4) 金 一徹,竹内 亮,有澤 正,石井龍宏:腰椎腹腔シャント術直後に生じた腹直筋鞘内出血により緊急再開創を要した1例—腹壁解剖理解の重要性—.No Shinkei Geka 44:305-310, 2016
5) Kuriyama N, Miyajima M, Nakajima M, Kurosawa M, Fukushima W, Watanabe Y, Ozaki E, Hirota Y, Tamakoshi A, Mori E, Kato T, Tokuda T, Urae A, Arai H:Nationwide hospital-based survey of idiopathic normal pressure hydrocephalus in Japan:epidemiological and clinical characteristics. Brain Behav 7:e00635, 2017
6) McCullough DC:Hydrocephalus:Treatment. Wilkins RH, Rengachary SS(eds):Neurosurgery Vol3. McGraw-Hill Book Company, New York, 1985, pp.2140-2150
7) 鮫島直之,桑名信匡,渡邊 玲,関要次郎:LPシャントのtips.脳外速報28:668-676, 2018
8) 高田寛人,川崎 隆,石渡祐介,日高 聖,千葉康洋:脳室腹腔短絡術における腹腔カテーテルの簡便挿入法—臍下部穿刺法の工夫—.脳外誌8:355-357, 1999
9) 田中達也,桃﨑宣明,後藤公文,川久保洋晴,渋木太郎,水田敏彦,松永和雄,本田英一郎:成人正常圧水頭症患者での腰椎腹腔シャント症例に対する経皮内視鏡的胃瘻造設術の経験.在宅医療と内視鏡治療21:35-41, 2017
10) 吉田正弘:LLIFにおける腸管損傷のリスクマネジメント.脊椎脊髄30:947-951, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

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