icon fsr

文献詳細

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科48巻12号

2020年12月発行

文献概要

脳神経外科で「小児は成人のミニチュアではない」と主張すべきか?

著者: 坂本博昭12

所属機関: 1大阪市立総合医療センター小児脳神経外科 2大阪市立大学大学院医学研究科脳神経外科

ページ範囲:P.1103 - P.1105

文献購入ページに移動
 小児科領域で「小児は成人のミニチュアではない」という表現が用いられるのはご存じでしょうか.これは小児の専門性や特殊性を強く主張する意図をもって用いられます.小児脳神経外科に長く携わってきた私としては,脳神経外科ではこの点を現状ではあえて強調しないほうがよいと思います.この考えに至った理由を述べたいと思います.
 私が新生児の脊髄髄膜瘤の修復や乳児のシャント手術を最初に経験した頃は,小児例は体が小さいのみならず,皮膚は薄く,頭蓋骨・脊椎は十分に骨化せず軟らかいので,確かに「小児は成人のミニチュアではない」と感じました.しかし小児例の手術を多く行うようになって,顕微鏡下の脳や脊髄は,乳幼児であっても成人例と同じようにみえることに気づきました.さらに,松果体部,脳室内,トルコ鞍上部などの脳深部,あるいは脊髄髄内の病変の術野は,小児例では浅く,顕微鏡下での手術操作が行いやすいため,「小児は成人のミニチュアである」と感じるようになりました.また,小児の脳は牽引しても壊れにくく,動脈硬化がないので血管の操作も容易です.このように,「小児は成人のミニチュアである」という点に助けられて手術ができると意識するようになりました.

参考文献

1) 末廣栄一,甲村英二,鈴木倫保:日本脳神経外科学会専攻医実態調査アンケート.脳外誌26:899-909, 2017
2) 坂本博昭:日本における小児脳神経外科領域の移行期医療の現状と対策.脳外誌29:279-287, 2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1251

印刷版ISSN:0301-2603

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?