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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科49巻2号

2021年03月発行

雑誌目次

特集 脳神経画像Critical Findings—おさえておきたい症状とCT/MRI画像所見

Editorial

著者: 藤井幸彦 ,   岡本浩一郎

ページ範囲:P.219 - P.219

 さまざまな主訴や症状で来院する患者に直面し,正しく診断し,適切な治療の方向性を考える上で,客観的な情報を提供する種々の画像読影の果たす役割は大きいと思われます.画像所見から診断が示唆されることが多く,鑑別診断を考え,さらなる画像検査の追加などから,ある程度診断を絞り込むことができます.一方,所見を見逃したり,誤認したりすれば,脳神経系疾患では患者の生命や機能を失うことに直結するなど,重大な結果を招く可能性もあります.
 本特集では,脳神経外科医がおさえておきたい画像所見や疾患について取り上げ,日々の診療や専門医試験に役立つ情報を提供することを目的としています.第一線でご活躍の脳神経外科の先生方に,ご専門とされる領域の中から脳神経外科専門医を目指す医師にぜひ知っておいてほしい基本的知識や新しい概念を学べる症例を中心にご執筆いただきました.また,中枢神経系の画像診断を担当する放射線科医が,これはぜひ脳神経外科医にも知ってほしいと思われる画像所見の症例,脳神経内科医が診断・治療を担当する疾患でも,患者が脳神経外科外来を受診してこの画像所見を見たり,この疾患を疑ったりした場合には脳神経内科医に相談してほしいという症例など,臨床の現場で脳神経外科医が遭遇し得る症例画像を提示し,画像所見・疾患概念や病態生理,治療法などについてわかりやすくご解説いただきました.

ⅠCT/MRIで見落とし・誤認してはいけない疾患—CT isoattenuated/MRI isointense lesions

くも膜下出血

著者: 遠藤英徳 ,   藤村幹 ,   冨永悌二

ページ範囲:P.220 - P.228

Point
・くも膜下出血(SAH)の検出において,CTに加えてMRI FLAIR像やSWIが時として有効である.信号強度のみならず,シルビウス裂の左右差や側脳室下角の拡大にも注意する必要がある.
・多発瘤を合併したSAHや微小動脈瘤の破裂部位診断において,vessel wall imaging(VWI)が有効である.
・脳動脈解離の画像診断において,basi-parallel anatomical scanning(BPAS)は血管外径の拡張,VWIはintramural hematomaの検出や壁不安定性の評価に有効である.

脳腫瘍

著者: 東山央 ,   松木充

ページ範囲:P.229 - P.237

Point
・頭部CTを読影する際,はじめに脳溝,脳回に加えて,灰白質,白質のCT値の違いを意識することが重要である.
・頭部CT/MRIとも皮質,皮質下の病変を見落とさないためにも,皮質をなぞって読影するよう心掛けるべきである.
・脳腫瘍がT1WI/T2WIで白質,灰白質に近い信号を示しても,FLAIR/T2WI/DWIで明瞭に描出されることが多数で,すべてのシークエンスや他断面でも詳細に読影することが重要である.

両側性慢性硬膜下血腫

著者: 土屋一洋

ページ範囲:P.238 - P.243

Point
・CTで等吸収の慢性硬膜下血腫はしばしばみられ,とりわけ両側性のものを見逃さない注意が必要である.
・慢性硬膜下血腫と類似した画像所見を示す病態には,硬膜転移,肉芽腫性の諸疾患,肥厚性硬膜炎がある.
・小児では,慢性硬膜下血腫は虐待に起因することが稀でないことを念頭に置く.

ⅠCT/MRIで見落とし・誤認してはいけない疾患—Vessel signs

虚血性脳卒中

著者: 栗城綾子 ,   神谷雄己

ページ範囲:P.244 - P.251

Point
・急性期脳梗塞の診断・再開通療法の適応決定には,出血の除外,脳虚血範囲の評価,閉塞脳血管の評価が不可欠である.
・脳虚血の評価時はearly CT signにおける早期虚血変化を見逃さないようにし,ASPECTSを用いて梗塞範囲を半定量的に評価する.
・脳血管の評価にはCTAやMRAを用いるが,単純CTにおけるhyperdense MCA/ICA signも有用である.
・MRIにおけるT2WI susceptibility vessel sign,FLAIR vessel hyperintensityについても併せて解説する.

皮質静脈血栓症,脳静脈洞血栓症

著者: 秋岡直樹

ページ範囲:P.252 - P.261

Point
・脳静脈洞血栓症は非特異的な症状で初発することが多く,鑑別診断として念頭に置かなければ診断に難渋することがあるので注意が必要である.
・特徴的なvessel signとして,cord sign, empty delta signがある.静脈洞内のDWI高信号あるいはT2WI低信号は血栓の存在を示唆する所見である.
・脳実質の変化としては,静脈性梗塞,脳皮質下出血を呈する.
・確定診断には,造影CT/MRI,MR venography,脳血管撮影が非常に有用である.

もやもや病

著者: 舟木健史

ページ範囲:P.262 - P.270

Point
・小児例において,頭部CTでの虚血性病変や,MRI T2WIにおける内頚動脈終末部近傍の血管外径縮小や異常血管網を認めた場合には,もやもや病を疑いMRAを施行する.
・成人例において,典型的な被殻出血や視床出血を認めた場合でも,年齢が比較的若年の場合には,出血型もやもや病などを疑いMRAやCTAなどの血管評価を緊急で施行する.
・もやもや病の脳血管撮影読影には,①狭窄・閉塞部位の特定,②5つの側副路の評価,③血行動態の全体像の把握の3つのステップが必要である.

ⅡおさえておきたいCT/MRI所見からの鑑別

脳実質石灰化

著者: 西原眞美子 ,   谷由子 ,   伊藤靖 ,   加村毅 ,   岡本浩一郎

ページ範囲:P.271 - P.277

Point
・脳実質内石灰化は生理的な石灰化に加え,さまざまな病態で認められる.
・皮質静脈への逆流を伴う硬膜動静脈瘻では,皮質下に沿った特徴的な石灰化を認めることがある.
・転移性脳腫瘍では,海綿状血管奇形に類似する画像所見を呈することがある.中高齢者で石灰化や出血を伴う腫瘤性病変では,転移性脳腫瘍の可能性を考慮すべきである.

Fatty densityとair

著者: 内野晃

ページ範囲:P.278 - P.283

Point
・CT画像で水(脳室内)よりも吸収値が低いのは,脂肪と空気のみである.脂肪は臨床的意義に乏しい場合が多いが,空気の存在は重大な所見であることも多い.
・脂肪と空気の鑑別には,CT値を測定するよりも,画像表示の階調を変えて眼窩内などの脂肪組織の吸収値と比較するとよい.明らかに低い場合は空気である.MRIを追加できれば,両者の鑑別にT1WIが有用である.

脳出血

著者: 平松匡文 ,   春間純 ,   菱川朋人 ,   杉生憲志 ,   伊達勲

ページ範囲:P.284 - P.292

Point
・脳出血急性期にCTAを撮影する意義は大きい.
・CTAで二次的な脳出血を鑑別し,出血源が明らかであれば外科的治療を検討する.
・単純CTやCTAで,血腫増大・再出血の危険因子となる所見を検出する必要がある.

脳室内(壁)の所見

著者: 明石敏昭

ページ範囲:P.294 - P.300

Point
・側脳室の形態には正常でも左右差や変異があり,正中には透明中隔腔やベルガ腔を認めることがある.
・脳室内には脳脊髄液の流れがあり,MRI,特にFLAIR像ではartifactがみられる.
・側脳室壁にはリング状の結節が偶発的にみつかるが,上衣下腫である可能性が高い.

下垂体の腫大

著者: 米岡有一郎 ,   岡田正康

ページ範囲:P.301 - P.315

Point
・生理的な下垂体腫大が存在し,正確な診断は無用な医療を防ぐ.
・Incidentalomaはasymptomaticとは限らず,治療介入の要否を判断しなければならない.
・Endocrinological emergencyが存在し,遅滞なく診断し治療介入すべき病態を理解すべきである.

水頭症

著者: 山田茂樹

ページ範囲:P.317 - P.327

Point
・水頭症は頭蓋内もしくは脳室内に脳脊髄液が過剰に貯留して症状を来した病態であり,脳室が拡大することが多い.
・正常圧水頭症(NPH)は,特発性(iNPH),続発性(sNPH),先天性要因(cNPH)に分けて診療する.
・iNPHでは,側脳室と脳底槽とシルビウス裂が一体となって頭頂方向へ拡大し,頭頂円蓋部の脳とくも膜下腔が圧縮される.

Ⅲ脳卒中と鑑別すべき疾患

低血糖

著者: 城倉健

ページ範囲:P.328 - P.334

Point
・低血糖では,脳卒中に類似した片麻痺(低血糖性片麻痺)を呈することがある.
・低血糖性片麻痺では,MRIで内包に急性期脳梗塞と類似する所見がみられることもある.
・MRI異常所見が内包に限局している低血糖患者は,血糖補正により神経症状(意識障害や片麻痺)が速やかに改善する.
・MRI異常所見が皮質下白質にまで広がっている低血糖患者は,血糖を補正しても機能予後は不良である.

てんかん重積の評価

著者: 福多真史

ページ範囲:P.335 - P.341

Point
・てんかん重積におけるMRI DWIでの高信号領域は,大脳皮質中心に広がり,海馬や視床枕にも認められることがある.
・てんかん重積状態での持続脳波モニタリングでは,徐波律動,てんかん性異常波,周期性発射などさまざまな所見が認められ,特に非痙攣性てんかん重積状態での診断価値が高い.
・MRIおよび持続脳波モニタリングを用いて,できる限り早期にてんかん重積状態を診断し,速やかに治療に移ることが重要である.

可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS),可逆性後頭葉白質脳症(PRES)

著者: 他田正義

ページ範囲:P.342 - P.348

Point
・可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)と可逆性後頭葉白質脳症(PRES)は,若年性脳卒中の鑑別および原因として考慮すべき症候群である.
・両者は,顕著な高血圧,子癇,薬剤使用,自己免疫疾患などに関連して発症し,しばしば同一患者に合併することから,共通・類似の病態が推測されている.
・適切な早期診断のためには,両者の臨床像,画像所見およびその経時的変化の特徴を理解しておくことが肝要である.

ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)

著者: 森田有香 ,   相田典子

ページ範囲:P.349 - P.355

Point
・ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)はミトコンドリア病の中で最も頻度の高い臨床病型であり,20歳以下での発症が多い.臨床症状は多様で,脳卒中様発作,痙攣,頭痛の頻度が高い.
・CT/MRIでは後頭頭頂葉,側頭葉後部に好発する血管支配域に一致しない梗塞様病変を示し,急性期は血流亢進を示すことが多い.MRSでの著明な乳酸ピークは,中枢神経系への乳酸蓄積を示す重要な所見である.

頚髄硬膜外血腫

著者: 加藤大祐 ,   寺江聡

ページ範囲:P.356 - P.361

Point
・特発性頚髄硬膜外血腫は,突然の頚部痛と片側性の脊髄圧迫症状で発症することが多く,脳血管障害と誤診されることがある.
・片麻痺および頚部痛を来す鑑別疾患として,動脈解離や血管炎症候群などの頭蓋外血管病変も重要である.
・片麻痺を呈する症例で頚部痛を伴う場合は,頭蓋内評価のほかに頚部病変の評価も必要と考えられる.

Ⅳ脳腫瘍と鑑別すべき疾患

硬膜動静脈瘻

著者: 井手里美 ,   清末一路

ページ範囲:P.362 - P.367

Point
・皮質静脈への逆流による静脈うっ血を伴う硬膜動静脈瘻では,脳実質の浮腫性変化や出血を来す.
・シャントや拡張した皮質静脈のflow voidやMRAでの高信号域の所見から硬膜動静脈瘻の診断が可能である.
・画像所見で硬膜動静脈廔が疑われた場合には脳血管撮影を行い,早期に診断を行うことが重要である.

脳膿瘍

著者: 梅田諭 ,   藤川章 ,   土屋一洋

ページ範囲:P.368 - P.374

Point
・脳膿瘍の死亡率は5〜32%であり,脳室穿破すると50%にも達するため,臨床像と画像を併せた迅速な診断と治療が重要である.
・脳膿瘍はDWIで高信号かつADC値は0.9(×10−3 mm2/s)以下を示すことが多い.脳膿瘍以外の囊胞性病変はDWIで低信号かつADC値は2(×10−3 mm2/s)以上を示すことが多い.
・脳膿瘍の被膜がSWIで高率に低信号を示す“dual rim sign”は特異度の高い所見であり,脳腫瘍との鑑別に有用である.

Tumefactive demyelinating lesion (TDL)

著者: 中島章博 ,   河内泉

ページ範囲:P.376 - P.382

Point
・Tumefactive demyelinating lesion(TDL)とは,2 cm以上の腫瘤様脱髄病変で,周囲への浮腫やmass effectを伴う中枢神経系炎症性病巣の総称である.
・TDLの背景病理には,多発性硬化症(MS),急性散在性脳脊髄炎(ADEM),視神経脊髄炎(NMOSD)などがある.
・近年では,MRI検査や自己抗体検査をはじめとした非侵襲的検査でTDLの背景病理を診断可能な場合もある.
・TDLを疑う場合,脳腫瘍や脳膿瘍などを除外し,TDLの背景にある病理・病態を確定する.TDLは診断プロセスを進めるために有用な臨床症候群名である.

Ⅴ特徴的な画像所見を示す新しい概念の脳腫瘍

大脳多結節空胞状神経細胞腫瘍(MVNT)

著者: 岡本浩一郎 ,   棗田学 ,   大石誠 ,   藤井幸彦

ページ範囲:P.383 - P.387

Point
・大脳多結節空胞状神経細胞腫瘍(MVNT)は,痙攣,頭痛あるいは偶然発見される大脳半球の脳回に沿う皮質深部〜皮質下神経系腫瘍性病変(WHO 2016 gradeⅠ相当)である.
・MRIで1〜5 mmの結節が3〜10個以上集合する7〜57 mmの大きさで,mass effectは乏しくGd増強効果を示さない.
・増大せず,痙攣を来す一部の例を除き生検や病変摘出などの外科的処置を必要としない“leave-me-alone” lesionと考えらえる.

黒色腫(メラニン細胞)系腫瘍

著者: 岡本浩一郎 ,   棗田学 ,   大石誠 ,   藤井幸彦

ページ範囲:P.389 - P.394

Point
・単純CTで高吸収,T1WIで高信号を認める場合,出血・石灰化に加えメラニン含有性病変を考える.
・頭蓋内にメラニン含有性病変を認めた場合,皮膚病変(母斑)の有無を確認する.
・無症状でも大きな,あるいは多発する先天性母斑を認める場合,神経皮膚黒色症を疑う.
・神経皮膚黒色症の40〜60%に悪性黒色腫が発生し,予後不良である.

異形成性小脳神経節細胞腫(レルミット・ダクロス病)

著者: 岡本浩一郎 ,   棗田学 ,   大石誠 ,   藤井幸彦

ページ範囲:P.395 - P.399

Point
・レルミット・ダクロス病は,小脳回が腫大し変形する比較的境界明瞭な小脳半球の稀な良性腫瘍,あるいは過誤腫性病変である.
・虎縞様層構造(tiger-striped striation)が特徴的MRI所見で,拡散制限はない.
・カウデン症候群の主要な中枢神経系の病変で,小児〜高齢者の広い年齢層で認められる.
・カウデン症候群の診断がついていない場合,カウデン症候群に伴う全身の過誤腫性・腫瘍性病変の検索を行う.

Ⅵおさえておきたい神経内科疾患(拡散強調像高信号)

自己免疫性脳炎・髄膜炎

著者: 佐藤晶

ページ範囲:P.401 - P.406

Point
・自己免疫性辺縁系脳炎では,海馬や帯状回皮質においてDWIで高信号病変を呈することがあり,てんかん重積による画像変化と類似するが,注意が必要である.
・関節リウマチや多発軟骨炎などリウマチ性疾患に伴う髄膜炎では,DWIで主に前頭葉のくも膜下腔に高信号の特徴的病変を呈することがある.
・延髄最後野病変は,視神経脊髄炎の病巣の好発部位である.

クロイツフェルト・ヤコブ病

著者: 佐藤晶

ページ範囲:P.407 - P.412

Point
・急性〜亜急性進行性の認知症の症例はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の可能性があり,DWIの特徴的所見が診断の手がかりとなる.
・大脳皮質が左右非対称にDWI高信号を呈し,しばしば線条体前部も侵す.
・MRI画像はてんかん重積発作によるDWI高信号病変と類似点があるが,CJDでは辺縁系のみの病変を来すことは少なく,中心前回を避ける傾向がある.

可逆性脳梁膨大部病変を有する脳炎・脳症(MERS)

著者: 佐藤晶

ページ範囲:P.413 - P.417

Point
・MERSは,脳梁膨大部にDWI高信号,ADC低下を示す可逆性の左右対称病変で,この病変自体は一過性で機能障害を残さないとされる.
・インフルエンザなどの感染症,薬剤性,代謝性など,さまざまな状態でみられることがある.
・脳梁を侵す疾患には,他にマルキアファーヴァ・ビニャミ病のように,脳梁を広範囲に傷害し後遺症を残すものもあり,注意が必要である.

神経核内封入体病(NIID)

著者: 佐藤晶

ページ範囲:P.419 - P.424

Point
・神経核内封入体病(NIID)は,認知症や筋力低下など多様な症状を呈する疾患で,2011年に皮膚生検でも診断可能とされたことにより,報告数が増加している.
・DWIではU-fiberに強い大脳白質高信号病変が遷延することが特徴である.

Ⅶおさえておきたい特殊画像検査

数値流体力学(CFD)

著者: 鈴木倫明

ページ範囲:P.425 - P.431

Point
・脳動脈瘤壁にかかる基本的な血行力学的パラメーターとして,圧力(pressure)と壁面ずり応力(WSS)がある.
・クリッピング術の際に認めることがある脳動脈瘤壁の菲薄部は,high pressureとlow WSSとの関連が言われている.
・動脈硬化部は,血流停滞時間であるrelative residence time(RRT)との関連が言われている.
・コイル塞栓術後の再発には,pressure関連の血行力学的パラメーターとの関係が言われている.
・画像モダリティの進歩(Silent MRAなど)と数値流体力学(CFD)の組み合わせによって,新たな知見が得られる期待がもたれる.

Black-blood法によるplaque imaging

著者: 吉田和道

ページ範囲:P.432 - P.437

Point
・動脈硬化による虚血発症のリスク評価において,狭窄率のみでなく血管壁の性状が極めて重要である.
・血流信号を抑制するblack-blood MRIにより,プラーク性状を低侵襲かつ正確に評価できる.
・不安定プラークの特徴として,出血,脂質コア,菲薄化線維性被膜,陽性リモデリングなどが重要である.

Proton magnetic resonance spectroscopy (1H-MRS)

著者: 五十嵐博中 ,   武田基秀 ,   棗田学 ,   藤井幸彦

ページ範囲:P.438 - P.444

Point
1H-MRSは脳内の低分子を定量するMR測定法である.
・通常のMRIに加え,付加情報を得ることが可能である.
1H-MRSの所見は脳内の代謝の変化をみている.

総説

「脳卒中・循環器病対策基本法」に基づく本邦の脳卒中治療体制の将来

著者: 宮本享 ,   山田清文

ページ範囲:P.445 - P.451

Ⅰ はじめに
 2015年以降,急性期脳虚血に対する機械的血栓回収療法の有効性に関するエビデンスが続々と報告され,急性期脳卒中診療体制の整備が急務となった.2016年12月に日本脳卒中学会は日本循環器学会とともに「脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画」を公表し,2018年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(以下,循環器病対策基本法)が成立した1)
 本稿では,本邦における脳卒中診療体制がこれからどのように整備されていくかについて述べる.

症例

母指または示指のみの屈曲障害を初期症状とした前骨間神経麻痺の2症例

著者: 清水曉 ,   望月崇弘 ,   黒田博紀 ,   大澤成之 ,   田中理 ,   根本充 ,   隈部俊宏

ページ範囲:P.452 - P.457

Ⅰ.はじめに
 前骨間神経(anterior interosseous nerve:AIN)麻痺は,母指の指節間(interphalangeal:IP)関節と示指の遠位指節間(distal interphalangeal:DIP)関節の屈曲障害を同時に示す完全型と,母指IP関節または示指DIP関節のいずれかの屈曲障害にとどまる不全型に分類される3, 9, 12-14).これらのうち,2指の症状が揃わない不全型は,認知度が低く看過される傾向がある3, 12)
 今回われわれは,不全型で発症し完全型に進行した非典型的な経過のため,診断に一考を要したAIN麻痺の2症例を経験したので報告する.

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目次

ページ範囲:P.214 - P.215

欧文目次

ページ範囲:P.216 - P.217

次号予告

ページ範囲:P.458 - P.458

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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