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特集 脊髄脊椎・末梢神経外科ことはじめ Ⅰ 脊髄脊椎・末梢神経外科のすゝめ
—▼コラム—脊髄外科医を育てる
著者: 寳子丸稔1
所属機関: 1社会医療法人信愛会交野病院信愛会脊椎脊髄センター
ページ範囲:P.1136 - P.1140
文献購入ページに移動脊髄脊椎疾患は非常に多い病気である
若い脳神経外科の先生方の中には,「脊髄外科」といってもピンと来ない方も多いのではないかと思います.実際,Japan Neurosurgical Database(JND)の2018年のデータ1)によると,全脳神経外科手術207,783件のうち,脊髄脊椎手術は17,969件(8.6%)を占めるにすぎません.また,同年の京都大学関連施設の非公式のデータでは,全38施設において年間の全脳神経外科手術件数が平均304件あるにもかかわらず,26施設で脊髄脊椎手術件数が10件以下となっており,多くの施設において脊髄脊椎疾患は縁遠いものとなっています.
それでは,脊髄脊椎疾患は少ない病気かというと,決してそうではありません.有訴者率とは,病気やけがなどで自覚症状のある人の人口1,000人当たりの割合を示す指標です.そのデータは厚生労働省webサイトで確認することができますが,その1位と2位は腰痛と肩こりで,症状として最も多いものです.また,連続剖検例による検討2)では,80歳を超えると37%の人に頚椎での脊髄圧迫が認められたと報告されており,頚椎症性脊髄症は非常に多い病気です.さらに,DALYs(disability-adjusted life-years)とは,病的状態,障害,早死により失われた年数を意味する疾病負荷を総合的に示す指標ですが,世界全体でみると,腰痛と頚部痛が1990年には13位であったものが2016年には4位に上昇しています.また,先進国に限ると1990年から不動の2位を占めています3).これらのことから,脊髄脊椎疾患が引き起こす症状は社会への大きな負担になっているばかりでなく,国の経済が発展するに従い年々増加していることがわかります.
若い脳神経外科の先生方の中には,「脊髄外科」といってもピンと来ない方も多いのではないかと思います.実際,Japan Neurosurgical Database(JND)の2018年のデータ1)によると,全脳神経外科手術207,783件のうち,脊髄脊椎手術は17,969件(8.6%)を占めるにすぎません.また,同年の京都大学関連施設の非公式のデータでは,全38施設において年間の全脳神経外科手術件数が平均304件あるにもかかわらず,26施設で脊髄脊椎手術件数が10件以下となっており,多くの施設において脊髄脊椎疾患は縁遠いものとなっています.
それでは,脊髄脊椎疾患は少ない病気かというと,決してそうではありません.有訴者率とは,病気やけがなどで自覚症状のある人の人口1,000人当たりの割合を示す指標です.そのデータは厚生労働省webサイトで確認することができますが,その1位と2位は腰痛と肩こりで,症状として最も多いものです.また,連続剖検例による検討2)では,80歳を超えると37%の人に頚椎での脊髄圧迫が認められたと報告されており,頚椎症性脊髄症は非常に多い病気です.さらに,DALYs(disability-adjusted life-years)とは,病的状態,障害,早死により失われた年数を意味する疾病負荷を総合的に示す指標ですが,世界全体でみると,腰痛と頚部痛が1990年には13位であったものが2016年には4位に上昇しています.また,先進国に限ると1990年から不動の2位を占めています3).これらのことから,脊髄脊椎疾患が引き起こす症状は社会への大きな負担になっているばかりでなく,国の経済が発展するに従い年々増加していることがわかります.
参考文献
1)Iihara K, et al;Japan Neurosurgical Society:The Japan Neurosurgical Database:overview and results of the first-year survey. Neurol Med Chir(Tokyo)60:165-190, 2020
2)村山繁雄:高齢者連続剖検例における頚椎・頚髄病変3年間566例の経験.脊椎脊髄ジャーナル 15:531-536, 2002
3)GBD 2016 DALYs and HALE Collaborators:Global, regional, and national disability-adjusted life-years(DALYs)for 333 diseases and injuries and healthy life expectancy(HALE)for 195 countries and territories, 1990-2016:a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016. Lancet 390:1260-1344, 2017
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