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症例
造影剤のextravasationにより診断された急性後頭蓋窩硬膜下血腫の1例
著者: 若井晋1 青木信彦1 水谷弘1 高良英一2 金井清次3
所属機関: 1都立府中病院脳神経外科 2東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科 3信清会外科脳外科医院
ページ範囲:P.1089 - P.1094
文献購入ページに移動外傷性後頭蓋窩血腫は比較的まれなものとされてきたが最近,本疾患群に注目が払われるようになり,報告例も増加してきた.しかしそれでも硬膜下血腫は,硬膜外血腫に比べてよりまれなものとされており,Ciembroniewicz1)によると全硬膜下血腫の0.57%,McKissock8)によると0.5%,Munroら12)によると1.1%の頻度であると報告されており,我々が通常経験する天幕上硬膜下血腫に比べるとはるかに少ないと言わざるを得ない.ちなみに硬膜外血腫はMcKissockら9)によると後頭蓋窩血腫中,硬膜下血腫の約10倍の頻度で発生するという.
本邦では現在まで著者らの知りえた範囲では,剖検例も含め16例であった5,6,11,13,14,15,18).これまでの報告では急性,亜急性,慢性例が一括して扱われてきたが,急性例と亜急性,慢性例では,症状,臨床経過,治療などの点で明らかな相違があり,我々はこれらを別々に論ずべきであると考えている.最近我々は,外傷後3時間で昏睡となり5時間で呼吸停止をきたし,椎骨動脈写にて造影剤のextravasationを見,術前に硬膜下血腫の診断のもとに手術し,救命しえた急性後頭蓋窩硬膜下血腫の1例を報告するとともに,急性例の特徴を自験例と文献報告例に基づいて論じたい.なお,後頭蓋窩硬膜下血腫で,血管写上造影剤のextravasationを見た例は内外の文献例にはなく,本症例がはじめてである.
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