icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科5巻11号

1977年10月発行

雑誌目次

恐竜の骨と木星の麻

著者: 魚住徹

ページ範囲:P.1109 - P.1110

 昭和47年だったと思うが子供を連れて「ソビエト恐竜展」を観に行った.その前年,シカゴでも博物館で別種の大きな骨骼などを見た.恐竜の骨を見ているとだいたいのところOS……というように人骨になぞらえて名前を自分なりにつけることができる.あそこにヒルンが入っておって,あの辺にレーバーがあって……きっとそうするとcyclic AMPとかいうむずかしいものも働いて居たんやろなあ……,成長するのに成長ホルモンで大きくなりよったんやろなあ……脳下垂体なんか大きいんかなあ…….それにしてもこんな図体が大きいのやから,ようけ食いよったんやろなあ,それにしても1億年も前からあまり変わっとらんところがようけあるわけやなあ,と考えていて,私はこの爬蟲類は要するにヘビ,トカゲの親類の祖先みたいなものであるにしては骨骼が頑丈で手足がたくましく長いのが妙に印象に残った.
 最近,バッカーという人の論文(恐龍,R.T.バッヵー,SCIENTIFICAMERICAN日本版,サイエンス,1975,6月号,p.47-65)を読んだ.恐竜は現生爬蟲類と似ているという単純な理由で冷血動物すなわち外温動物と考えられて定説化しているが,著者は恐竜は温血動物すなわち内温動物で現生のトカゲとは全く異なる生物である……とし,その訂正再分類によると恐竜の子孫は現生の鳥類だというのである.その主なる論拠は2つある.

総説

各種シャントシステムの構造,機能と問題点

著者: 津金隆一

ページ範囲:P.1111 - P.1118

Ⅰ.はじめに
 shunt手術は,水頭症の治療に現在最も一般的な方法として施行され,その効果も充分に認められている.しかし,同時にshunt閉塞,感染,低髄液圧,shunt依存性などの副作用や合併症が高頻度に認められるのも事実である.正しい手術手技の確立および習熟により,減少させうる合併症も多いが,なかには現在のshunt systemでは宿命的な避けられない副作用もある.しかし,患者の状態に応じて,最も適したshunt systemを使用することにより,こうした副作用もある程度には減少させうるものと考えられる.
 shunt systemの構造および機能について熟知することは,systemの選択にも,また合併症や副作用に対処するためにも最も大切なことと考え,脳室心房吻合術または脳室腹腔吻合術に使用されるshunt systemの構造および機能につき述べ,問題点の2,3をとり上げた.

手術手技

Spina bifidaの手術

著者: 深井博志

ページ範囲:P.1119 - P.1127

Ⅰ.はじめに
 脊椎披裂(脊椎破裂)Spina bifida(Rachischisis)は中枢神経系の先天奇形,dysraphic stateの1型で,胎生期の神経管形成不全(閉鎖障害)とその影響による周囲の中胚葉性組織の形成不全に基づいて発生するものと説明されている.
 この脊椎披裂は脊椎管内容の脱出の有無と脱出内容により,次のように分類され(Fig.1),治療方針も手術時期も異なる.

診断セミナー

Exophthalmos(眼球突出)・2

著者: 諌山義正

ページ範囲:P.1129 - P.1134

Ⅵ.超音波診断とcomputerized axial tomography(CT scan)
 眼窩病変の診断の手段として,最近数年の間にB-scan超音波診断とCT scanが登場し,最も有用な方法として利用されることが多くなりつつある.これらの方法は非観血的で,患者に対する苦痛が少ないとともに,従来のX線診断では異常の見出せなかった症例にも高率にそれを発見できる利点がある.

研究

下垂体腺腫の組織培養におけるGH,PRL,LHおよびFSH分泌能の経時的変化

著者: 久保長生 ,   氷室博 ,   上条裕朗 ,   喜多村孝一 ,   出村黎子 ,   出村博 ,   鎮目和夫

ページ範囲:P.1135 - P.1141

Ⅰ.はじめに
 近年,下垂体腺腫におけるホルモン分泌動態および形態学的研究についての報告は数多くみられるようになった,さらに,今までnon-functioning tumorといわれてきた嫌色素性下垂体腺腫においても,ホルモン分泌能があることが知られてきた.これらはradioimmunoassayの進歩により,各種ホルモンの測定が可能となり,組織培養によるホルモン分泌能の検索や,腫瘍組織内のホルモン濃度の測定が行われるようになったためである.しかし,下垂体腺腫の組織培養での各種ホルモンの経時的分泌能についての報告は少ない.
 今回,われわれはacromegalyおよびnon-acromegaly症例の下垂体腺腫に対する手術によって摘出された腫瘍組織について,組織培養を行い,培養液中の成長ホルモン(GH),プロラクチン(PRL).LHおよびFSHを経時的に測定した,また,これらの症例の血漿中ホルモンおよび腫瘍組織内ホルモン含量をも同時に測定した.これらの結果,acroinegaly症例の下垂体腺腫にGHのみならず,PRLの分泌能を有するものがあることがわかった.また,non-acromegaly症例の下垂体腺腫に,GHおよびPRL分泌例がみられた.この研究において,下垂体腺腫のGHとPRLのin vitroにおける分泌能には両者において相違があることがわかった.

小脳橋角部腫瘍における前下小脳動脈と顔面神経の解剖学的関係,およびその手術的治療法における意義

著者: 白馬明

ページ範囲:P.1143 - P.1150

 巨大な小脳橋角部腫瘍26例におけるAICAと顔面神経との関係について報告したが,両者の位置関係はきわめて密接であり,AICAの偏位は顔而神経の偏位に一致していることが多く,これら腫瘍の摘出にあたっては,AICAを保存するための1つのガイドとして顔而神経はきわめて重要な役割を果たすものである.

Spasmodic torticollisの外科的治療

著者: 榊寿右 ,   菊池晴彦 ,   古瀬清次 ,   唐澤淳 ,   吉田泰二 ,   大西英之 ,   涌田幸男 ,   滝和郎 ,   本藤英樹

ページ範囲:P.1151 - P.1155

Ⅰ.はじめに
 痙性斜頸は,頸筋群の不随意の収縮によって斜頸が生じる神経筋疾患である.その発生病理については不明であり.時に他の異常運動症と合併して生じることもある.そのため,痙性斜頸がはたして独立疾患であるかということに強い疑問が持たれる.また,精神的要素によりても症状の発現性が異なり,自然に軽快することもある点などから,心因性と考えられた時代も存在した.しかし原因が何であれ,いかなる薬物療法や精神療法によっても,症状の改善せぬ症例の肉体的精神的苦痛は,適切なる外科的療法によって解決がつけられねばならない.我々はその目的のため,まず数週間から数カ月間の薬物療法を試み,精神的要因が強いと思われる症例にはさらに自己催眠療法などの精神療法を加え,なお無効の症例に対し,両側上部頸神経前根切断と両側副神経脊髄根の切断を行ってきた.我々は,8症例に本手術法を施行し,比較的良い結果を得たので報告するとともに,その手術および術後の間題点にっいて険討する.

脳動脈瘤と脳動静脈奇形の合併例—9例の外科的治験例

著者: 小沼武英 ,   堀重昭 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.1157 - P.1164

Ⅰ.緒言
 脳動静脈奇形(以下AVMと略す)に脳動脈瘤を合併する症例は比較的稀でその発生機序および治療に関しては問題の多いところである.著者らは1957年より1975年末迄に140例のAVM(ただしdural AVMは除く)を経験し,そのうち9例に脳動脈瘤の合併を認め,深部AVMの1例を除いたすべてにAVM全摘術と脳動脈瘤根治術を行い治癒せしめたので症例とともに若干の考察を加え報告する.

症例

脳神経外科における高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡の2治験例

著者: 西村敏彦 ,   清水隆 ,   今永浩寿 ,   久保長生 ,   吉田滋 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.1165 - P.1170

Ⅰ.はじめに
 高浸透圧性非ケトン性糖尿病昏睡(Hyperosmolar nonketotic coma,以下HNCとする)とは,ketoacidosisを伴わないで高血糖,高血漿浸透圧,脱水を呈する症候群である.この病態は古く80年以上も前にFrerichs8)および1924年Umber-Berlin9)によって報告されたが,1957年Sament & Schwartz8)が報告して以来注意が向けられるようになった.欧米では1969年までに200例以上,本邦でも1974年末までに92例の報告6)があり,決して稀な症候群とは言えない.しかし,Steroid,Thiazide系利尿剤,Diphenylhydantoin,Mannitolの投与8)やGlycerolの投与14),長期のGlucose輸液8),水分制限12),高蛋白経管栄養7)などの脳神経外科的治療がHNCの誘因になるために脳神経外科分野でも本症候群が最近注目されるようになった.
 最近,本症候群の2治験例を経験したので報告し,文献的考察を加える.

下部胸椎〜腰椎腫瘍とうっ血乳頭—脳動脈瘤破裂後の水頭症とまちがえた胸・腰椎移行部の神経腫の1例と文献的考察

著者: 小山素麿 ,   花北順哉 ,   石川純一郎 ,   近藤明悳

ページ範囲:P.1171 - P.1180

Ⅰ.はじめに
 脳腫瘍の場合と同様,上部頸椎の腫瘍でもまれに脳圧充進症状,水頭症あるいはうっ血乳頭が出現することはよく知られた事実で,その頻度は2-3%といわれている15,20)
 しかし胸椎あるいは腰椎の腫瘍でこれらの症状が認められることはきわめてまれであり,Arseni & Maretsis3)によれば1967年までに文献上26例を数えるにすぎない.

思春期早発症を呈して患側大脳半球萎縮をきたしたastrocytomaの1例

著者: 浜田博文 ,   粟博志 ,   門田紘輝 ,   小林栄喜 ,   朝倉哲彦

ページ範囲:P.1181 - P.1187

Ⅰ.はじめに
 大脳の二次性萎縮をきたす原因としては,種々の疾患があげられるが,腫瘍によるものはきわめてまれである7,8,9,12,13,15).このたび,われわれは思春期早発症を呈し,かつ同側大脳半球萎縮をきたした小児の星細胞腫の1例を経験したので報告する.また,このような症例は従来の神経放射線学的諸検査では診断がきわめて困難であるが,最近わが国でも,急速に普及・活用され始めたCT sannerによれば,診断ばかりでなく腫瘍の進展・経過の把握も容易であった.CTの有用性についてもあわせて述べる.

外傷性尿崩症の1剖検例

著者: 浜田毅 ,   田代邦雄 ,   都留美都雄

ページ範囲:P.1189 - P.1194

Ⅰ.緒言
 近年の交通外傷の増加に伴い比較的稀とされていた外傷性尿崩症の報告も増加しているが,本邦においてはその剖検例はほとんど知られていない.私達は最近,頭部外傷後に発生したと思われる尿崩症の1剖検例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?