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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科5巻12号

1977年11月発行

雑誌目次

神経放射線夏期セミナー

著者: 牧豊

ページ範囲:P.1201 - P.1202

 1965年のColumbia大学の神経研究所(所長H.Merrit)の神経放射線科(主任E.H.Wood)のX線meetingはTaverasの遺して行ったstyleであった.月曜日から金曜日まで毎日午後3時から,その日に撮影されたfilmのreviewが始まった.連続脳血管撮影,somersaultのPEG, myelographyなどが主で,頭蓋単純撮影は,2カ月交代でstaffが早朝にstereoviewerでみたもののうち,所見のあるもの,教育的なものだけが顔を出すに過ぎなかった.当時はTaveras & WoodのDiagnostic Neuroradiologyが出版された直後であり,欧州や南米からの見学者も多かった中TaverasはSt.Louisに栄転したばかりで時折打合せに来たときmeetingにも顔を出していた.
 Meetingでは,procedureを行ったresidentがOxford card位の臨床メモとbrain scintigraphyの所見などを述べ,脳血管撮影では針刺部位よりしだいに末梢までpointerで指しながら判読し,最後にangiographical diagnosisを述べるといったごく一定した判読を行っていた.そのあとdiscussionが行われ,key filmが決定され,それらに黄色のメモ用紙がクリップされ,直ちにsubtruction, duplicationあるいはslide作製へと回わされた.

総説

軸索流と視床

著者: 新見嘉兵衛

ページ範囲:P.1203 - P.1214

 従来,中枢神経系の神経線維結合の研究方法として変性軸索鍍銀法(Nauta法とその変法)と逆行性細胞変性法が最も多く用いられてきた.しかし,これらの方法には通過線維の問題や軸索側枝の問題などがあり,所見の判定にかなりの困難な点があった.ところが最近,軸索流を利用した方法(オートラジオグラフィー法とパーオキシデース法)が開発され,上述のような問題点がある程度解決される可能性ができてきた.
 オートラジオグラフィー法(AR法)は注入された放射性同位元素標識アミノ酸(3H-leucine, 3H-prolineなど)が神経細胞体に取り込まれ(神経線維からは取り込まれない),順行性軸索流によって軸索の終末まで運ばれたものをオートラジオグラフで検べるものである.軸索流の速度はおおまかにいって早い相と遅い相があり,早い相(100-400mm/day)をとった場合,すなわち生存期間を短くすると,終末部におけるラベルのみが認められるが,遅い相(1-3mm/day)をとった場合,すなわち生存期間を長くすると,終末ラベルのほか途中の経過—軸索ラベルも見られる(Fig.2,3).しかしこの場合シナプスを超えて次のNeuronに進む可能性もでてくる.

手術手技

外傷性てんかんの手術

著者: 大本堯史

ページ範囲:P.1215 - P.1223

Ⅰ.はじめに
 外傷性てんかんは閉鎖性頭部外傷の1-5%程度3,4,13)に発生するといわれているごとく,決してまれではない.頭部の開放性損傷の場合にはさらにてんかん発生率は高いが,開放性損傷の救急処置として日常行っているdebridement,異物除去,感染予防,さらに陥凹骨折のさいの硬膜あるいは頭蓋骨形成などの処置はいずれも最大の目的は外傷性てんかんの予防にあるといっても過言ではない.
 外傷性てんかんに対する外科的療法は1886年Horsleyにより行われた皮質瘢痕切除術に端を発する中これはまた,後にモントリオール学派により受け継がれ,てんかんに対する皮質焦点切除術へと発展した歴史の中でも,重大な意義をもつ業績である.Jacksonらにより述べられているごとく,てんかん発作がてんかん焦点に基づくものであれば,この焦点を完全に除去することが根治的治療につながるであろう.しかし,たとえ明らかな皮質焦点を見出しえても,手術による脱落症状が強く予想される場合には直接脳にメスを加えることができないところに外科的療法のジレンマがある.

診断セミナー

乳頭浮腫(うっ血乳頭)と視神経萎縮

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1225 - P.1230

 乳頭浮腫(うっ血乳頭),視神経萎縮の両者は,疾患ではなく疾患による形態学的変化の結果であり,病理学的実体である.検眼鏡的に乳頭部に変化を認めることが頭蓋内腫瘍発見の手がかりとなることから,眼科,脳神経外科医の両者の間において重視されてきた.
 眼科領域では,従来の直像鏡による眼底検査が主体とされてきた時代より,双眼立体倒像鏡,細隙燈顕微鏡による眼底検査の時代にと移り,乳頭浮腫の早期診断の所見も,直像鏡による所見を主体とした時代とは変わってきた.さらに螢光眼底撮影の導入により,乳頭浮腫の病態にさらに詳しい情報が得られるようになった.これに加えて過去10年間,少なくとも6つの乳頭浮腫の実験モデルの作成に成功してから,その病態の解明が著しく進歩した.精密視野検査(定量視野)の普及,ERG, EOG, VEPなど電気生理学的検査が普及し,ルチーンの検査になってきたこと,またiris corderによる瞳孔検査の登場はCT scanの普及と相まって神経眼科領域の診断上に飛躍的発展をもたらしてきた.今回はこれらの進歩を背景とし,乳頭浮腫と視神経萎縮の両者について,眼科医の立場より若干述べてみることとする.

研究

くも膜下出血後の脳脊髄液循環動態—CTとRI cisternographyによる再検討

著者: 平塚秀雄 ,   岡田洽大 ,   吉田麗己 ,   菅沼康雄 ,   大畑正大 ,   小松清秀 ,   稲葉穰

ページ範囲:P.1231 - P.1237

Ⅰ.はじめに
 くも膜下出血(SAH)後に交通性水頭症ないし正常圧水頭症(NPH)をきたし,Shunt手術(脳室心房吻合術または脳室腹腔吻合術など)により神経症状の改善をみることは周知の事実であるが9,19),これら病態の分析に従来,RI-cisternographyおよび気脳写などが最も信頼のおける検査法として重視されてきた7,16,17)
 一方,1971年英国でHounsfieldにより開発されたComputed Tomography(CT)は,脳室系および脳表くも膜下腔の形態を表わすのに侵襲の少ない画期的な方法であることが認められ,水頭症,脳萎縮などの診断にも広く応用されるに至った2,3,4,5,8,14,18).われわれも,SAH後のCSF循環動態の変化,特にNPHとの関係を検討する目的で従来施行してきたRI-cisternography11,12)と,新しく導入されたCT(EMI-scanner)の両者により検索し,臨床症状,経過と対比しつつそれらの診断的価値について再検討したので報告する.

髄膜腫の術後予後と再発についての検討

著者: 古瀬和寛 ,   小林達也 ,   梅村訓 ,   桑山明夫 ,   杉田虔一郎 ,   永井肇 ,   景山直樹

ページ範囲:P.1239 - P.1246

Ⅰ.はじめに
 髄膜腫は頭蓋内腫瘍のうち神経膠腫についで発生頻度の高い腫瘍であり,その比率は諸家の報告5,9,13,14,27,37)の中では13.4%から19.2%程度で,本邦集計17,37)でも15%前後の頻度とされる.通常,髄膜腫はその発生が脳外であること,また生物学的性質が比較的良性であることから,その術後予後は一般によいとされているが,全摘されたと考えられる症例からの腫瘍再発がしばしばみられ治療上の問題となっている,Cushing & Eisenhardt(1938)6)はその膨大な記述の中で,術後予後は手術内容と関連することを述べ,Simpson31)は主にこの問題について検討し再発比率は腫瘍の切除程度と平行することを報告した.一方,Cromptonら4)は組織分類別に術後再発について検討を行っているが,術後予後に関連する因子についてはなお不明な点も多い.また,髄膜腫手術に際して不完全摘出に終らざるを得なかった症例の中にも,ときにかなりの長期生存例のあることは日常診療の中で経験されることであるが,腫瘍残存症例の予後について詳細な検討を行った報告はあまりみられない.
 本報告では,名古屋大学医学部で扱った髄膜腫症例について追跡調査を行い,手術内容および病理診断とその術後予後,再発との関係を中心に検討を加え,治療上の問題点について考察した.

脳神経外科領域におけるGlucocorticoid投与法の検討(第3報)—Betamethasone 8mg投与後の血中cortisol濃度の推移について

著者: 吉本尚規 ,   森信太郎 ,   松村茂次郎 ,   大田正博 ,   梶原四郎 ,   沖修一 ,   日比野弘道 ,   石川進 ,   魚住徹 ,   松本圭史

ページ範囲:P.1247 - P.1251

Ⅰ.緒言
 脳神経外科実地臨床上,脳浮腫の予防治療に用いられる大量のglucocorticoidの作用機序15)およびその効果発現の時期9),持続時間についてはいまだに十分な解明がなされておらず,各臨床医が脳浮腫の発生する状況に応じて経験的に投与しているのが現状である.
 我々はglucocorticoidの脳浮腫に対する最も有効で副作用の少ない投与法,投与量の確立を目指しており,現在まで第1報にglucocorticoid投与下にmajor neurological surgeryを受けた患者における手術前後の下垂体ホルモン分泌能の変化6)を,第2報にヒト静脈内に投与されたhydrocortisoneの髄液内への移行濃度を経時的に測定し報告した17)

頸椎後縦靱帯骨化症に対する前方手術法の検討

著者: 真鍋昌平 ,   野村進

ページ範囲:P.1253 - P.1259

 頸椎後縦靱帯骨化症の病理形態学的検討や剖検例の所見をもとにして,これまでに後方除圧術が多くなされて来たが,最も合理的と考えられる前方除圧術について検討した.本法は椎体前方削開により骨化巣を摘出し,後,椎体削開溝に骨移植を行うもので,この操作により,後方へ圧迫されていた頸髄を前方の正常位にもどし,かつ,骨移植を行うことにより頸椎の安定性をもたらすものである.原則として,骨化症により頸髄症状が急速に発現している場合は本法の適応となる.除圧が前方からなされるためにC2以上,Th1以下に骨化巣が拡がっている場合は本法の適応ではない.手術時に注意すべきことは,骨化巣と硬膜との癒着が広範囲な場合で,椎体削開後に骨化巣が硬膜と共によく浮上して来るならば,この癒着部の骨化巣を完全に摘出する必要はない.本法を8症例に対して施行した.これら全例に術前,痙性四肢麻痺,歩行困難,知覚障害が認められ,3例に排尿障害が見られた.これら症例では,前方除圧術の後,痙性四肢麻痺と知覚障害の著しい改善と歩行の正常化,および排尿障害の消失または改善が見られたが,1例においてC5の高位で右側方に存在せる骨化巣を限局性に取り残し,これが浮上せる頸髄の一部を圧迫したために惹起されたと思われる右上肢の運動障害が術後残存している.本法を成功に導くには頸髄に対する完全な除圧と愛護的操作が望まれる.

シャント手術後の硬膜下血腫について

著者: 末松克美 ,   土田博美 ,   相馬勤 ,   官尾邦康

ページ範囲:P.1261 - P.1266

Ⅰ.はじめに
 シャント手術の合併症としては髄液誘導管の閉塞や感染が最も多く,それらについては数多くの報告があるが,硬膜下血腫については発生頻度も低くその報告は少ない.しかし,シャント手術施行に当って合併症としての硬膜下血腫の存在を考慮することはきわめて重要なことであると考える.
 本論文では文献上より集計したシャント手術後の硬膜下血腫例を検討し,著者らの経験を報告する.

症例

頭蓋内Dermoidの1例—Computed Tomography(CT)所見を中心に

著者: 門脇弘孝 ,   谷藤誠司 ,   加川瑞夫

ページ範囲:P.1267 - P.1271

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内腫瘍のうちで,dermoidの占める頻度は比較的低く,特に硬膜内のdermoidは少ないとされている1,15-18)
 最近,我々はcomputed tomography(以下CTと略す)にて病変を見つけ.手術にて治癒せしめたdermoidの1例を経験した4,6,11)

開頭術術後に発生した慢性硬膜下血腫の3症例

著者: 小松伸郎 ,   高久晃 ,   堀重昭

ページ範囲:P.1273 - P.1277

Ⅰ.はじめに
 慢性硬膜下血腫は脳神経外科臨床ではごくありふれた疾患の1つである.しかし本症が開頭術後に発生することはきわめて稀といわれ,著者渉猟の範囲内でも特に症例を纒めて報告したものはなかった1,7,15).教室においては1975年9月末までに201例の慢性硬膜下血腫を経験したが,開頭術後のものは3例(1.5%)であった.今回はこの3症例を紹介し若干の文献的考察を加える.
 なお,shunting operation後に発生するいわゆる慢性硬膜下血腫は形態学的には類似するものもあるが問題点が多いため12),本論文では除外した.

石灰化硬膜下血腫に合併した亜急性硬膜下血腫の1症例

著者: 井須豊彦 ,   高村春雄 ,   上野一義 ,   平間元博

ページ範囲:P.1279 - P.1283

Ⅰ.はじめに
 石灰化硬膜下血腫は,それほど稀なものではないと思われるが2,14).意外にその報告例は少ない3,4,6,9,12,15,17).しかしそれに合併して亜急性硬膜下血腫1,18)が発生したという報告はわれわれが集めえた文献には見られなかった.最近,われわれは45歳男性が意識消失のない軽微な頭部外傷2日後に失語症にて発症し,手術により石灰化硬膜下血腫とその周辺に新鮮な硬膜下血腫を認め,それらを摘出し治癒せしめえた症例を経験したので文献的考察を加えてここに報告する.

髄液中に腫瘍細胞を証明した斜台脊索腫の1例

著者: 保坂泰昭 ,   辛秀雄 ,   末吉貫爾 ,   館崎慎一郎 ,   池田栄雄

ページ範囲:P.1285 - P.1292

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内脊索腫は,稀な脳腫瘍でその頻度は全脳腫瘍の1%に満たない34).一方髄液細胞診は,1891年Quinkeが腰椎穿刺法を紹介後,Ravautらにより始められ4),その後採取法,集細胞法8,19)および脳腫瘍患者よりの腫瘍細胞の検出などについて非常に多くの報告がある14,20,21,29)
 最近われわれは斜台部脊索腫症例の精査中,脳室写時に採取した髄液中に腫瘍細胞を検出した.われわれが収録しえた文献の限りにおいては,髄液中に腫瘍細胞を検出した頭蓋内脊索腫は,その報告を見ない.

Pituitary Apoplexyを起こした巨大下垂体腺腫

著者: 嘉山孝正 ,   内田桂太 ,   吉本高志 ,   和田徳男 ,   並木恒夫

ページ範囲:P.1293 - P.1297

Ⅰ.はじめに
 Pituitary apoplexyは一般に脳下垂体腫瘍において腫瘍内出血が起こり,そのために臨床症状の急激な発症,増悪を意味するclinical termである4).われわれは20年の長期の経過の後,突然重篤状態で発症し,主にnasopharyngeal extensionを呈していた巨大下垂体腺腫を経験したので臨床経過,剖検所見について報告し,あわせて若干の文献的考察を加えた.

VP-shunt後intractable ascitesにCarboquoneが著効を呈したmedulloblastomaの1症例

著者: 森照明 ,   嘉山孝正 ,   片倉隆一 ,   和田徳男

ページ範囲:P.1299 - P.1303

Ⅰ.はじめに
 1898年Ferguson6)により頭蓋内圧亢進に対し脳脊髄液のドレナージが実施されたが,感染多発,材質不良などのためその後は断念されていた,しかし1960年代に入り,種々の材料のドレーンが開発されて以来感染の危険も少なくなり,水頭症,脳腫瘍,その他の疾患にshunt手術は広く用いられるようになってきた.特に後頭蓋窩腫瘍に関しては,1963年Abraham1)がその有効性を発表したが,以来術前術後に実施されるshunt手術の有用性は明らかとなっている.しかし,それと同時にshunt手術によるcomplicationも多数報告されるようになった下その内にはまれではあるが,shunt tubeを介しての頭蓋外転移の症例報告3,4,11,13,17),あるいはintractable ascitesの報告がある9,15)
 最近我々は脳室腹腔吻合術(以下VP-shunt)を施行した小児medulloblastoma患者が術後,intractable ascitesを生じ,腹水内には中型の単核細胞の増殖がみられ,shunt tubeを介しての腹腔内転移が疑われた症例を経験した.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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