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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科5巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

上医医未病之病

著者: 倉本進賢

ページ範囲:P.195 - P.196

 私の勤務している大学の新講堂の玄関壁面に次のような扁額が掲げてある.
上医医未病之病

総説

Pain Mechanism

著者: 石島武一

ページ範囲:P.197 - P.206

 いたみは古くて新しい命題である.太古の昔から今日までその研究の集積は尨大なものであるが,いまだにその本態についてはほとんどわかっていない.新しい説が次々と出ては消えて行き,そのたびにわれわれは新たな混乱の中に投げ込まれる.まさに群盲象を撫でるの図である.
 いたみの機構についての研究の歴史と現状をこの限られた紙面につくすことは不可能なので,ごく表面的な記戴に止め,詳しくは文献を参照していただくことにした.しかしそれとても全てを網羅できるものではなく,重要な文献が見落されているおそれがあるが御寛恕をこうしだいである.ここではいたみに関する解剖と生理に主眼をおき,薬理学的な面は割愛した.順序として末梢から高位中枢へ上っていき,そのつど問題となる臨床的な事柄を挿入して行く予定である.

手術手技

経皮的コルドトミー

著者: 天野恵市

ページ範囲:P.207 - P.215

Ⅰ.はじめに
 経皮的コルドトミーが最初に行われたのは1963年Mullanによってであるから,現在2でに13年の歴史がある.Mullanが最初に発表したのは実は針を脊髄内に刺入する真の意味でのコルドトミーではなく,経皮的に脊椎管内にストロンチウム90の放射能針を入れ,外側脊髄視床路を脊髄外部から放射線照射により破壊しようというものであった.
 脊髄内に針を刺入して電気凝固巣を作るという,現在我々が行っている経皮的コルドトミーは2年後の1965年にMullan, Rosomoffが相次いで発表している.北米ではじめられたこの簡便でかつ的確な除痛術は現在はヨーロッパでも広く行われているが,残念なことに我が国ではいまだそれほど脳神経外科医の間に普及しているとはいえないのが現状である.

診断セミナー

MLF症候群—本邦73例の文献的考察

著者: 中里厚 ,   里吉営二郎

ページ範囲:P.217 - P.222

Ⅰ.はじめに
 脳幹部における内側縦束(Medical longitudinal fasciculus以下MLFと略す)の病変により,側方視に際し眼球の内転が障害されているが,輻輳が可能で,外転眼の外転側に向かう単眼性の眼振がみられるという特異な眼球運動障害は,内側縦束症候群と呼ばれている.本症候群は1902年Bielschowsky1)の初めての記載以来,1922年Lhermitte2,3)は"Ophthalmoplegia internuclearis"と呼び,その後剖検例の報告や動物実験により病巣と臨床症状の関係が更に詳細になり,1950年Bender4)ははじめて"Syndrome of the MLF"という名称で呼んだ.現在本症候群は核間麻痺,核間性眼筋麻痺,MLF症候群(内側縦束症候群)などの種々の名称で呼ばれている.
 本邦では1941年丹羽5),1948年鎌尾ら6)の報告があるが純粋な核間麻痺の報告は1960年横山ら7)が行っている.最近では長島8),柴崎ら9)の詳細な報告があるが,本稿では著者らの1例を加え,本邦において報告された73例のMLF症候群について文献的考察を加えて述べてみたい.

研究

中枢性多尿性低Na血症—新たな中枢性水電解質代謝異常症の検討

著者: 大井静雄 ,   大井美行 ,   松本悟

ページ範囲:P.223 - P.228

はじめに
 第3脳室近傍腫瘍と水電解質代謝異常は,現在,尿崩症,口渇欠如,あるいは本能性6)などによる高Na血症を呈する群と,Syndrome of Inappropriate Secretion of Anddiuretic Hormone(以下SIADHと略す)に代表される低Na血症を呈する群とに分類されてきた9).しかし,同じ視床下部の障害で,なぜ一方では高Na血症を呈し,他方では全く相反する低Na血症を呈するかという疑問19)は未解決のままであり,また,必ずしもこの両群の発現機構では説明しがたい症例も経験され,最近,Na代謝の解明に今一つの中枢機構の存在を考慮する必要性も指摘されるようになった13)
 我々も日常臨床上,時にこれらの問題に遭遇する症例を経験し,Na代謝の中枢性要因について解明を試みてきた.最近,Gitelmanら8)が下垂体後葉からnatriuretic factorの分離に成功したという報告をみ,我々の経験した高Na血症の発現機構でも,また,いわゆるSIADHの発現機構でも説明されえないと思われる低Na血症,すなわち.口渇・多飲・多尿ならびに尿中Na排泄過多に続発した低Na血症4例が,やはり新たな症候群であると考えられるに至ったので,ここにその症例の報告と発現機構について一考察したい.

Lumbar Subarachnoid-Peritoneal Shuntの簡便法

著者: 桑名信匡 ,   桑原武夫 ,   中島麓 ,   細田浩道 ,   山口和郎

ページ範囲:P.229 - P.234

Ⅰ.はじめに
 先天性あるいは後天性の交通性水頭症に加えて,クモ膜下出血,髄膜炎,頭部外傷などのあとに生ずる正常圧水頭症の概念が,近年ほぼ確立されてきた.後者に対してもshunt手術の有効性が認められており,実際に行われることが多い.したがって,われわれ脳外科医はshunt手術を行う機会が多くなっているといえよう.
 現在一般的に行われているshunt手術の術式としてはTorkildsen手術を除き,大部分は脳室心房短絡術(V-A shunt),あるいは脳室腹腔短絡術(V-P shunt)のいずれかである.いずれの場合も,種々の原因による管の不調がしばしばおこることは,われわれが日常よく経験するところであり,この不調の原因をできるだけ除くために諸家により種々に工夫がなされている.

乳幼児水頭症における髄液短絡術後の硬膜下血腫

著者: 山崎駿 ,   田中允 ,   平山昭彦 ,   苧坂邦彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.235 - P.242

Ⅰ.はじめに
 水頭症の症例では,軽微な外傷により25,28)あるいは気脳写3,12),脳圧降下剤の投与13)といった頭蓋内圧の変動により,硬膜外または硬膜下血腫を生じやすい.したがって急激な髄液圧の変動をきたす髄液短絡術後の合併症として硬膜下血腫を発生しやすいことは十分に予想されうる.今回,私どもが経験した乳幼児水頭症術後の硬膜下血腫11症例について,術前の水頭症の病態,髄液短絡術施行時の状態,硬膜下血腫の発生状況,治療方針について検討を加えたので報告する.

側脳室内腫瘍のレ線診断—傍側脳室腫瘍との鑑別

著者: 中島啓次 ,   渡辺博 ,   千ケ崎裕夫 ,   石井昌三 ,   久留裕

ページ範囲:P.243 - P.251

Ⅰ.はじめに
 側脳室内腫瘍は,脳腫瘍の中でも,臨床的に特殊な位置に属するものである.すなわちその大部分は手術的に別出可能な良性腫瘍ではあるが,慢性的に経過する脳圧亢進症状以外にこれといった特定な神経症状を示すことが少なく,その診断にはもっぱら気脳写,脳血管写,脳シンチグラムなどの補助診断法が主体となる.
 これに対し傍側脳室腫瘍は、浸潤性に発育し,悪性像を呈するものもあるなど側脳室内腫瘍との間には,手術手技,治療方針などに関して大きな相異を有する.しかしながら,この両者の鑑別は,レ線学的にも非常にむずかしく,明確な解答は得られていないのが現状である.

脳血管異常に対し,trappingを必要とする際のSTA-MCA Anastornosisの有用性

著者: 榊寿右 ,   菊池晴彦 ,   古瀬清次 ,   唐澤淳 ,   吉田泰二 ,   大西英之 ,   湧田幸雄 ,   滝和郎

ページ範囲:P.253 - P.259

Ⅰ.はじめに
 脳血管の閉塞性疾患に対する新しい治療方法としての浅側頭動脈中大脳動脈吻合術(以下STA-MCA anastomosisと略する.)は,1967年Danaphy and Yasargil2)により提案され,我が国では,菊池らにより初めて紹介された.それ以来,多くの施設においてこの方法が取り入れられ,閉塞性疾患に対する新しい治療法の1つとなっているのが現況である.我々は,単に閉塞性疾患ばかりでなく,動脈瘤,内頸動脈海綿静脈洞瘻,動静脈奇形などの根治的治療に際し,病変部のtrappingが必要な場合や,主血管の結紮が行われる症例に対してもこの方法を応用し,非常に良好な成績を得た.

頭蓋外・頭蓋内動脈吻合術による血行再建術に関する実験外科的検討

著者: 浅利正二 ,   衣笠和孜 ,   小原進 ,   藤沢洋之 ,   景山敏明 ,   松本圭蔵

ページ範囲:P.261 - P.268

Ⅰ.はじめに
 近時,脳卒中のうち,本邦においても,かなりの数のものが脳血管閉塞によるものであることが認識され17),この疾患に対する治療への関心が高まりつつある.また脳神経外科領域ではmicrosurgical techniqueの発展に伴い,閉塞の原因である血栓や塞栓を直視下に除去したり16,19),あるいは,閉塞の結果,その末梢領域に生じた血流不全状態の改善のための副血行路としての,頭蓋外・頭蓋内動脈吻合術3,18,30)など,積極的な外科的治療が試みられるようになったことも,いっそう、この疾患の治療面における関心を高めているといえよう.
 脳主幹動脈に閉塞が起これば,時間的経過とともに末梢灌流領域の循環は障害され28),適切な側副血行がなければ遂には非可逆性変化に陥り14),重篤な神経脱落症状をひき起こすこととなる.したがって理論的には,動脈閉塞後,末梢領域の血管および脳実質の乏血による病変がまだ可逆期にある時期に,適切な処置により血流を再開すれば,当然,神経細胞の機能は保全されるはずである6,8)

症例

脊髄硬膜下膿瘍

著者: 井上洋 ,   平井達夫 ,   長屋孝雄 ,   武田文和 ,   川淵純一

ページ範囲:P.269 - P.272

Ⅰ.はじめに
 脊髄硬膜下膿瘍はまれな疾患で,文献上に報告された症例はきわめて少ない.われわれは,馬尾部に発生した脊髄硬膜下膿瘍を経験し,膿瘍を全摘出して治癒せしめたので,ここに報告し,あわせて文献上に報告された症例について考察を加える.

脳血管写上Extravasationを呈した外傷性小児硬膜外血腫の1治験例

著者: 大関潤一 ,   小穴勝麿 ,   小林東洋 ,   川田洋一郎 ,   金谷春之

ページ範囲:P.273 - P.278

Ⅰ.はじめに
 幼小児においては頭蓋骨は薄く弾力性に富み,骨縫合の融合が不完全であり,硬膜と頭蓋骨内板とは強く癒着している,さらに硬膜血管溝が未発達であるため,骨折による硬膜動脈の損傷が少ないなどの解剖学的特異性のために急性硬膜外血腫は大入に比べて発生しにくい2,18).また成人の硬膜外血腫にextravasationを認める頻度は20-30%といわれているが5,10),幼小児ではきわめて珍しい.
 最近私どもは交通事故後に発生し,脳血管写上extravasationを示した小児急性硬膜外血腫例で,血腫別除により救命しえた1例を経験したので,小児のextravasationおよび救命例における時間的因子などについて文献的考察を加え報告する.

外頸動脈起源のMarginaltentorial arteryに栄養されるテント部髄膜腫—症例と文献的考察

著者: 垣田清人 ,   福間誠之 ,   竹友重信 ,   佐々木良造 ,   大町純一

ページ範囲:P.279 - P.283

Ⅰ.はじめに
 テント部髄膜腫は,頭蓋内全髄膜腫の4%,後頭蓋窩髄膜腫の11%を占めるにすぎない比較的稀な疾患である6).またテントの上下に接する後頭葉および小脳は,自覚的,他覚的に所見に乏しいためか,その経過も,数カ月から数年に及び,頭蓋内圧亢進症状のみを主訴として来院することが多い.
 このテント部病変の脳血管撮影上の所見として,1956年にBernasconiとCassinari2)が報告した内頸動脈のCavernous portionより分枝するrnarginaltentorial artery,いわゆるBernasconi-Cassinari arleryの造影増強があげられる.最近われわれが経験したテント部髄膜腫では,このmarginaltentorial arteryが外頸動脈より分岐しており,選択的内頸動脈造影より,むしろ選択的外頸動脈造影の方が,診断上より有用であった.marginaltentorial arteryの外頸動脈起源の存在の可能性について,解剖学的,発生学的考察を加えて報告する.

内腸骨動脈分枝よりfeedされる脊髄動静脈奇形の1例

著者: 高橋宏 ,   城下博夫 ,   斉藤勇 ,   佐野繁夫 ,   赤城嘉久

ページ範囲:P.285 - P.289

Ⅰ.はじめに
 選択的脊髄血管撮影を積極的に施行することにより,脊髄動静脈奇形の診断および治療は大きな進歩をとげた1,3)
 現在までに脊髄動静脈奇形のfeederとして,椎骨動脈,鎖骨下動脈分枝,肋間動脈,および腰動脈からのradciulomedullary branchが造影されることは広く知られている.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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