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研究
中枢性多尿性低Na血症—新たな中枢性水電解質代謝異常症の検討
著者: 大井静雄1 大井美行1 松本悟1
所属機関: 1神戸大学脳神経外科
ページ範囲:P.223 - P.228
文献購入ページに移動第3脳室近傍腫瘍と水電解質代謝異常は,現在,尿崩症,口渇欠如,あるいは本能性6)などによる高Na血症を呈する群と,Syndrome of Inappropriate Secretion of Anddiuretic Hormone(以下SIADHと略す)に代表される低Na血症を呈する群とに分類されてきた9).しかし,同じ視床下部の障害で,なぜ一方では高Na血症を呈し,他方では全く相反する低Na血症を呈するかという疑問19)は未解決のままであり,また,必ずしもこの両群の発現機構では説明しがたい症例も経験され,最近,Na代謝の解明に今一つの中枢機構の存在を考慮する必要性も指摘されるようになった13).
我々も日常臨床上,時にこれらの問題に遭遇する症例を経験し,Na代謝の中枢性要因について解明を試みてきた.最近,Gitelmanら8)が下垂体後葉からnatriuretic factorの分離に成功したという報告をみ,我々の経験した高Na血症の発現機構でも,また,いわゆるSIADHの発現機構でも説明されえないと思われる低Na血症,すなわち.口渇・多飲・多尿ならびに尿中Na排泄過多に続発した低Na血症4例が,やはり新たな症候群であると考えられるに至ったので,ここにその症例の報告と発現機構について一考察したい.
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