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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科5巻4号

1977年04月発行

雑誌目次

長崎にいた天草四郎

著者: 森和夫

ページ範囲:P.295 - P.296

 「扉前線」は南下をつづけ,ついに長崎にやってきたが,実のところ適当な題材がなくて困り果てている.
 医の倫理や医療制度の問題などを,真正面から取り上げて論じる自信はないし,また,ふり上げた拳のもって行きどころがない.自繩自縛,自分で自分の横面を張ることでおわるような気もする.

総説

脳神経外科における筋電図

著者: 井奥匡彦

ページ範囲:P.297 - P.306

Ⅰ.はじめに
 筋電図検査には大きく分けて2通りの方法があり,その1つは針電極や表面電極を用いて,静止時や運動時の筋線維から発するelectrical activityを記録し分析するものであり,他の1つは末梢神経(特殊な場合には筋肉)に電気刺激あるいは機械的刺激を与えて応答(反射電位)を記録するもので,一般には誘発筋電図と呼ばれている.前者は脊髄,末梢神経および筋疾患の検査にしばしば用いられ,後者はそのメカニズムから反射機構の解明に大いに役立ち,したがって上位中枢損傷時の病態を把握するのに有益である.
 脳神経外科領域においては,それらのうちどちらがよく用いられるかといえば,後者すなわち誘発筋電図の方がよく用いられる.それは頭蓋内や脊髄内に生じた病態を分析するのに非常に有意義であるからである.したがって脳神経外科の診療においては誘発筋電図を理解していれば都合がよいといえるであろう.ただし,脳神経外科において前者に関しては重要ではないというのではない.そもそも脳神経外科とは「脳,脊髄および末梢神経に関する外科」と定義されている.したがってその広い範囲をも含めた研究と診療に当たるのが当然であるから,前者も大いに必要である.しかし誘発筋電図がよく用いられるという点を考慮し,与えられた頁数にも制限があるので,ここでは後者について述べることとする.

手術手技

開放性脳外傷の手術

著者: 中村紀夫

ページ範囲:P.307 - P.315

Ⅰ.はじめに
 本稿の直接目的は開放性脳外傷に関する,基本的手技にある.そこでまずその日的に沿って,手技について多少冗長かとも思われるほどに,そのABCから図説してみたい.その図の説明だけで手技を理解していただけるであろう.
 さらに開放性脳外傷の手術に関して,手技の裏づけになる理窟に関心のある方は,図説のあとのIII.以降の内容に眼を通していただければ幸甚である.

診断セミナー

除脳硬直

著者: 田崎義昭 ,   澤田徹

ページ範囲:P.317 - P.324

 除脳硬直decerebrate rigidityは,周知のごとく,動物の中脳上・下丘間以下延髄上部までの間を切断した際生ずる抗重力筋の硬直性収縮に対して,Sherringtonが名づけた言葉である36).この現象の発見はその後の神経生理学とくに筋緊張,伸展反射などの研究に画期的な飛躍を与え,以後この分野では除脳動物が絶好の動物実験モデルとして広く用いられている.一方,Wilson46)やWalshe44,45)らの報告以来,臨床例でも除脳硬直が注目されるようになり,現在ではその筋緊張の異常よりも脳幹障害とくに脳ヘルニアによる中脳障害を示す重要な徴候として重視されている30).しかし,実験的に作られた動物の除脳硬直と臨床例にみられるそれとは質的に異なるとする意見もあり10,11),また,その概念にも多少混乱がみられる29).そこで本稿では,除脳硬直の発現機序と臨床的意義を局所診断学的な立場から検討してみたい.

研究

後索刺激による除痛効果の発現機序—とくに視床正中中心核の活動を指標として

著者: 西本博 ,   坪川孝志 ,   片山容一 ,   小谷昭夫 ,   森安信雄

ページ範囲:P.325 - P.331

Ⅰ.緒言
 1965年Melzaek&Wall7)が脊髄後角内におけるgate control systemを示唆して以来種々の刺激による除痛法が考案され,破壊による除痛法に代わって刺激による除痛法が臨床応用されてきた4,17,20).「痛み」のmodulating systemを刺激し除痛効果を得ようとする方法は,破壊による除痛法に比較して脱落症状を残さず,より生理的であり、とくにその対象となる疾患がbenign painの場合には推奨される除痛法である.
 事実Wall & Swect(196720),196813)),Shealy(196710,11))により脊髄後索の刺激がこのような除痛法に応用できる可能性が報告されてより,今虫でに約7年間の期間がある.この間電極の種類,刺激条件,手術法,適応条件などに詳細な検討が加えられ,最近では長期follow upの成績まで散見される8,12,14)

Computerized transverse axial tomographyによる脳出血の診断

著者: 山本昌昭 ,   今永浩寿 ,   神保実 ,   喜多村孝一 ,   小林直紀 ,   斉藤由子

ページ範囲:P.333 - P.341

Ⅰ.緒言
 近年イギリスで開発されたnon-invasiveなX線診断法であるcomputerized transverse axial tomography(CT)1,2,4)は,各種頭蓋内疾患の診断に飛躍的な進歩をもたらしつつある3,6).もちろん,CTにより頭蓋内の血管病変そのものが即座に診断されるものではない.脳血管の病変により二次的に起こる脳梗塞や血腫などの病理学的変化がきわめて鮮明に描出されるのである.
 我々は,昭和50年8月以来,700余例の頭部CTを行っている.特に頭蓋内血腫では,その解剖学的な広がりはもとより,随伴する脳浮腫の程度,脳室の偏位,変形などが正確に検出されることが確認された.本稿では非外傷性頭蓋内血腫に関してのCTによる診断成績について述べるとともに,血腫像の時間的変化について検討する.

外減圧開頭術後の諸問題—頭蓋形成術に関して

著者: 山浦晶 ,   佐藤政教 ,   目黒琴生 ,   中村孝雄 ,   植村研一 ,   牧野博安

ページ範囲:P.345 - P.353

Ⅰ.はじめに
 重篤な脳挫傷に対する広範囲減圧開頭術の効果はすでに広く認められており10,15,16,24),また脳血管障害,脳腫瘍,頭蓋内感染症やこれらに対する手術に続発する著しい脳浮腫に対しても外減圧開頭術は救命を目的とした最後の外科的手段となることはしばしば経験するところである.
 外減圧開頭術により頭蓋内圧亢進の時期を脱したものは,社会復帰あるいは機能訓練に先だち頭蓋形成術を受けることになる.頭蓋形成術は古くよりその方法と材質については工夫が重ねられ,現在では比較的容易に行える手術手技であるためと,これを受けるものがすでに急性期を脱しているために,むしろ充分な関心を得ていないのが現状であるが、頭蓋形成術前後には未解決の問題が少なくないことを痛感している,外減圧開頭術後皮膚弁が著しく陥没した状態での脳機能およびこれに頭蓋形成術のおよぼす影響につき論じたものはみあたらず,また脳実質および頭蓋の急速に発育する2歳未満児における.頭蓋形成術前後の問題点,人工骨々折あるいは人工骨感染について単独の大きな症例群より論じたものも少ない.本文においては300例の経験よりこれらの問題につき検討した.

症例

閉塞性脳血管障害におけるSTA-MCA—anastomosisと他手術法の併用経験

著者: 真鍋武聡 ,   菊池晴彦 ,   古瀬清次 ,   唐澤淳 ,   榊寿右

ページ範囲:P.355 - P.361

Ⅰ.はじめに
 閉塞性脳血管障害に対する外科的治療は,近年ますます普及されつつあり,その代表的なものはcarotid endarterectomyとanastomosis between the superficial temporal artery and the middle Cerebral artery(以下STA-MCA anastomosisと略す)であろう.
 これらは主として,頭蓋内あるいは頭蓋外の主幹脳動脈の閉塞または狭窄に対して行われているが,最近われわれは,これら個々の手術法のみでは十分な治療効果を望みがたいと考えられる症例を経験した.

思春期早発症を呈したHCG産生異所性松果体腫瘍の女児例

著者: 久保長生 ,   山崎直美 ,   上条裕朗 ,   天野恵市 ,   喜多村孝一 ,   出村黎子

ページ範囲:P.363 - P.369

Ⅰ.はじめに
 松果体部あるいは視交叉部に発生した腫瘍における思春期早発症の発現機序については,松果体説,視床下部説,腫瘍説など,いろいろの報告がみられる.とくに興味ある問題はStowell6),景山3)らが述べた腫瘍からのゴナドトロピン分泌による思春期早発症が内分泌学的諸検査,とくにradioimmunoassayの進歩によってしだいに実証されつつあることである.
 1973年高倉7)と著者4)らは,いわゆるtwo ccll patternのectopic pinealomaにおいて,組織培養法を用いてゴナドトロピン分泌能を実証した,この症例はゴナドトロピン分泌腫瘍として,内分泌学的に実証した第1例目のectopic pinealomaと考える.これ以後,血中ゴナドトロピン異常高値を示す症例がしばしば報告されるようになった.

著明なextravasationを示した乳児の外傷性脳動脈瘤の1例

著者: 中村徹 ,   松岡好美 ,   西村周郎

ページ範囲:P.371 - P.378

Ⅰ.はじめに
 脳動脈瘤はその原因により先天性,脳動脈硬化性,細菌性,外傷性などに分類される.このうち,外傷性脳動脈瘤は比較的まれなものとされており,その数はBenoitら5)によれば850例の頭蓋内動脈瘤中,わずか4例約0,5%と少なく,特に乳児の外傷性脳動脈瘤の報告については現在までに遠藤12),Thompson43),Overton35)の3例をみるのみである.
 一方,脳血管撮影にて動脈瘤からのextravasationを認めた症例は,著者らの調査しえた限りでは現在までに14例報告されているが3,13,15,18,19,22,25-28,31,34,41,46),そのうち脳室内への造影剤の流入をみたものはわずか3例19,22,31)にすぎない.

頸静脈孔神経鞘腫の1例—特に症候診断学的考察

著者: 鈴木定雄 ,   山口克彦 ,   坂井博 ,   丹治裕幸 ,   比嘉恒治 ,   古川冨士弥 ,   遠藤辰一郎

ページ範囲:P.379 - P.384

Ⅰ.緒言
 神経鞘腫が頭蓋内下部脳神経から単独発生するのは非常にまれであり,しかも石山ら5)によると頭蓋内Ⅸ,Ⅹ, Ⅺ脳神経より発生した神経鞘腫は本非邦で2例,世界で27例しか報告されていない.
 最近,我々は左jugular foramenから発生したと思われる神経鞘腫で後方はcisterna magnaへ伸展し,下方はforamen magnumを越えて第1頸椎上縁まで達しforamen magnum tumorのcraniospinal typeを呈した症例を経験したのでここに若干の文献的考察を加えて報告する.

Deep sylvian meningiomaの1例

著者: 森信太郎 ,   石原博文 ,   曽我部貴士 ,   児玉安紀 ,   日比野弘道 ,   石川進 ,   魚住徹 ,   今田寛睦 ,   瀬川芳久

ページ範囲:P.385 - P.392

Ⅰ.緒言
 meningiomaはその発生原基がarachnoid remnantにあるとされ,実地臨床上経験される症例のほとんどはdura materあるいはchoroid plexusにattachmentを存しており,いわゆる脳表面に全く現れないで脳実質内へ発育していくものはきわめて稀である.
 我々は最近臨床的にdeep sylvian meningiomaと診断された1例を経験したので報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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