icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科5巻6号

1977年06月発行

雑誌目次

研究

EMI-Scannerによる脳腫瘍の診断

著者: 今永浩寿 ,   山本昌昭 ,   神保実 ,   喜多村孝一 ,   小林直紀 ,   斉藤由子

ページ範囲:P.497 - P.510

Ⅰ.はじめに
 Hounsfield4)によって開発され,Ambrose1,2)によってはじめて臨床に応用されたcomputerized tomography(以下CTと略す)は診断能力がすぐれており,患者に与える苦痛が少なく,non-invasiveであることから,またたくまに神経放射線学的診断法の中で大きな役割をになうようになった.著者らは1975年8月よりEMI-Scannerを使用しはじめてから,現在までに約1,200例の頭部疾患の診断を行ってきた7).今回は著者らが経験した脳腫瘍症例について検討を加え,本法の脳腫瘍診断法としての有用性および限界について述べる.

頸椎後縦靱帯骨化症と脊椎管前後径について

著者: 佐藤正治 ,   都留美都雄 ,   矢田賢三

ページ範囲:P.511 - P.517

 1)38例のsymptomatic OPLLと29例のasymptomatic OPLLのAPD(Fig.1-A)を測定し正常成人例と比較した.
 2)symptomatic OPLLとasymptomatic OPLLのTPDと靱帯骨化の厚さ(Fig.1-B,C)を比較検討した.
 3)靱帯骨化の年間成長率を計算した.
 4)OPLLの発生頻度を報告した.
 5)OPLLとcervical spondylosisとの比較を行った.

脳動脈瘤と内分泌障害(第1報)—内分泌障害の諸型および直接圧迫による影響の検討

著者: 真田祥一 ,   神尾正己 ,   冨松愈 ,   宇都宮隆一 ,   中村紀夫

ページ範囲:P.519 - P.526

Ⅰ.はじめに
 近年,脳動脈瘤の診断ならびに手術件数が増加するに従って,その好発部位がトルコ鞍をとり囲む脳底動脈輪であることもあって,間脳下垂体系に及ぼす影響が考慮の対象となってきた.一方最近の内分泌学の進歩は,臨床症状として内分泌異常が表面に出現する以前の,軽度の内分泌機能変化を測定可能とした.こうしたことから我々は従来より脳動脈瘤患者に対して,必要に応じて種種の内分泌機能検査を行い,間脳下垂体系の変化を把握しようと心掛けてきた.
 脳動脈瘤患者における間脳下垂体障害の発生は,多くのことなった機序がからみ合って出現していると考えられる.そこで今回は自験例のうち,発生機序に差異を認めうる4症例を報告し,加えて従来下垂体腫瘍に類示した脳動脈瘤として報告されている,間脳下垂体を直接圧迫することにより内分泌症状を呈した症例につき文献をもとに検討を加えた.

脳内血腫を伴った破裂動脈瘤

著者: 阿部弘 ,   都留美都雄 ,   田代邦雄 ,   高村春雄

ページ範囲:P.527 - P.535

Ⅰ.はじめに
 最近の脳動脈瘤に対する外科的治療の進歩は目ざましく手術成績も著しく向上し,手術死亡率も5-10%以下になったと報告されている.しかしながら術前に意識状態の悪いものすなわちgradeの重症なものは依然として手術死亡率が高いようで必ずしもよい成績をおさめていない.gradeの重症なものに対する手術の時期および適応については論議のあるところであるが,手術成績を向上させるためにともすると手術せずに放置される傾向もないとはいえない.
 動脈瘤破裂によるくも膜下出血早期の意識障害の原因としては種々の要因があるが,そのもっとも重要なものは頭蓋内圧亢進である.それをもたらすものには急激な多量のくも膜下出血による脳腫脹,血性髄液の循環吸収障害,脳内出血,血管攣縮およびそれに伴う脳梗塞などがある.今回は破裂動脈瘤による脳内血腫例をとりあげ,手術の時期および適応,救命しえた例と死亡例との比較などについて検討した結果を報告する.

ラット実験的脳水腫—作成法

著者: 山木垂水 ,   小竹源也 ,   成瀬昭二 ,   井端泰彦 ,   野条良彰 ,   松浦忠夫

ページ範囲:P.537 - P.540

Ⅰ.はじめに
 実験的脳水腫には先天的なものと,後天的なものがある.先天的なものは,主としてラットの母体に種々の奇形誘発物質を投与することによって作成される.一方,後天的なものは1914年DandyとBlackfan3)がイヌの中脳水道に綿片を挿入して脳水腫を作って以来,種々の動物で脳室,中脳水道,大槽内へ化学物質を注入したり,バルーンで髄液路を閉塞したり,静脈系を結紮したりすることによって作成されている.
 しかし,これらのほとんどがイヌ,ネコ,ウサギ,サルなどの比較的大きな動物で作られており,脳水腫の脳全体を組織学的に観察するには,難点がある.そこで我々はもっと手軽に利用できる小動物としてラットを用い,後天的脳水腫を作ろうと考え,近年進歩した手術用顕微鏡を利用することにより高頻度にこれを作りえたので,ここに若干の歴史的考察を加えて報告し,将来の髄液産生,流通,吸収機構の究明に役立たせようとした.

視床出血—そのC.T.所見と治療

著者: 神野哲夫 ,   片田和広 ,   香川泰生 ,   シャーM. ,   佐野公俊 ,   藤本和男 ,   戸田孝

ページ範囲:P.541 - P.548

Ⅰ.緒言
 高血圧性脳内出血のうち被殻出血の手術適応およびその術式については学会でもかなり以前より議論され,その考え方も現在では既に定説となっている感が深い.しかるに視床出血のそれについてはいまだ議論の余地が多い.視床出血の診断,血腫進展方式,あるいはそれに付随する病態の把握はいまだ十分ではないようである.その理由として脳血管撮影ではその詳細を知りがたいこともあろう.
 本論文では,著者らが昭和50年11月より使用しえたC.T.(Computed Tomography HITACHI C-T.-H250)による視床出血の診断,血腫の進展形式およびその臨床症状について要約し,C.T.のこの面における有用性と手術々式の選択について検討し,少し考察を加えたい.

脳腫瘍の放射線治療予後の検討

著者: 吉井与志彦 ,   牧豊 ,   恒元博 ,   青木芳朗 ,   梅垣洋一郎 ,   栗栖明

ページ範囲:P.549 - P.557

Ⅰ.はじめに
 脳腫瘍の治療は古くから脳神経外科医の第一の命題で,なかでも悪性脳腫瘍は治療予後が悪く,常に我々の前途に難問を残している.放射線治療が脳腫瘍に応用されてから久しくその効果は皆の認めるところである.従来発表されている放射線治療の成績をみても,腫瘍の悪性度と線量の問題,予後と線量の問題が論じられているが,線量については総線最/照射期間で論じられ互いに比較しづらく,また予後の表現法としても粗生存率で示されていて追跡不明者とか観察期間中の者の取り扱いが不明確であった.これらはお互いの結果を比較するのには参考になるにしても,実際の治療にとっては実際的な資料とはなりえない.そこで著者らは上記の観点に立ち,放射線医学総合研究所(放医研と略す)で昭和37年から49年までに扱った原発脳腫瘍135例の治療予後を検討し,他の報告例と比較考察を加えたので報告する.

激症経過をとる外側型脳内出血について

著者: 古場群巳 ,   横山徹夫 ,   金子満雄

ページ範囲:P.559 - P.565

Ⅰ.はじめに
 高血圧性脳内出血の中,被殻外包部出血(外側型)に対する外科的治療の適応については現在,内科側,外科側を通じて,一応の合意に達した観がある.すなわち,昭和49年の日本脳神経外科学会総会での脳出血の外科シンポジウムで金谷・半田によって,まとめられた意見のごとく,意識障害が昏妄以下の中等症以上の群に対しては,外科治療の方が優れているという基本線である8)
 我々は,更に生命・機能予後を良くする方法として昭和48年以来,外側型出血に対して、発作後6-7時間以内の超早期手術を提唱実施してきたが7),これまでの無選択群42例において術後6カ月までの死亡率9%で,家庭復帰(杖歩行以上)約87%と良好な機能予後を得ることができた.最近の沓沢の詳細な内科的治療の報告は,これまでのものに比し生命予後・機能予後とも優れているが9),これを対照群として比較した場合,意識障害の軽い群に対しても手術群が明らかに機能予後で優れていることが注目される.今や外側型出血は早期に収容できれば,だいたいうまく治療できると我々は自負しているが,中には稀ながら,発作後数時間で大血腫を作り激症経過をとるものがある.これらは数時間目に収容しても,すでに深昏睡で除脳硬直を示すことがしばしばで,手術をする間もなく死亡するものもあり,また,手術できても重篤な機能障害を残すことが多い.この群は下記の普通の外側型出血の経過と明らかに異なる.

C.T.による被殼出血の分類と外線状体動脈の動き

著者: 神野哲夫 ,   香川泰生 ,   片田和広 ,   シャーM. ,   佐野公俊 ,   藤本和男 ,   戸田孝

ページ範囲:P.567 - P.572

Ⅰ.緒言
 高血圧性脳出血,特にその被殻出血の分類と診断についての報告は数多い2,4,5).しかし最近のC.T.(computed tolnography)による分類およびそれと脳血写所見との対比,および片麻痺の予後との相関を見た報告を著者はいまだ見ていない.
 一方,C.T.は高額のためいずれの施設でも備えるわけにはいかず,その意味で脳血写所見との相関々係を確立することは意味あることと老える.著者らは被殻出血では,これを外線状体動脈の変化に求め検討した結果,以下のごとき若干の知見を得たので報告し,諸賢の御批判をいただきたい.

脳腫瘍の細小血管可視性における直接拡大連続脳血管撮影法の臨床的価値

著者: 宮崎雄二

ページ範囲:P.573 - P.583

いとぐち
 焦点の大きさが100μ内外の微小焦点X線管球を用い,しかも被写体をX線管球の方へ接近させて脳血管撮影を連続的に行う直接拡大連続脳血管撮影法は近年,ようやく本邦においても価値が認識され,普及されてきている.
 著者は脳血管の直接拡大撮影法について基礎的研究を行い,その結果に基づいて昭和47年4月以来,直接拡大連続脳血管撮影法の臨床応用を行い,本法の実施手技とともに各種脳神経外科疾病における本法の利点と価値を先に報告した12).本論文においてはその後に経験した症例を含め,直接拡大連続脳血管撮影法が行われた脳腫瘍例について検討を加え,本法によって脳腫瘍の細小血管の造影がどの程度まで可能であるかについて報告するとともに,脳腫瘍の細小血管造影の臨床的価値について報告する.

中枢神経系の類表皮腫,類皮腫—興味ある症例を中心に

著者: 大橋威雄 ,   島村裕 ,   三宅幾男 ,   原田泰弘 ,   難波真平 ,   西本詮

ページ範囲:P.585 - P.592

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内類上皮腫は全脳腫瘍の約1%6,8,12,16,33)であり,類皮腫はさらに稀で0.1-0.4%12,33)と報告されている.中枢神経系の全類上皮腫および類皮腫の約1/4は脊椎管内にみられ,この類皮腫には先天性皮膚洞に伴うものが高頻度に認められている24)
 我々の教室では最近の10年間に頭蓋内類上皮腫4例(全脳腫瘍手術例の0.57%)と類皮腫1例(0.14%),および洋椎管内類上皮腫1例が手術されている(Table 1).これら6例のうち,嚢種内結石のみられた後頭蓋窩類上皮腫例,先天性皮膚洞に伴った脊推管内類上皮腫例および本邦ではいまだ報告されていない第4脳室内類皮腫例など興味ある症例を中心に報告し,また類上皮腫と類皮腫との病理発生の違いについても考察する.

症例

前交通動脈瘤を併う内頸動脈欠損症の1治験例

著者: 内藤喬皓 ,   三上吉則 ,   信岡淳 ,   吉本一三 ,   大島英雄

ページ範囲:P.593 - P.596

Ⅰ.はじめに
 内頸動脈の欠損あるいは形成不全の報告は比較的稀なものであり,これに脳動脈瘤が合併したものは文献的にも約12例1-3)の報告を数えるのみである.最近我々は脳血管写にて前交通動脈瘤の他に左内頸動脈の欠損等Willis動脈輪の奇形を認め,手術により確認し,動脈瘤を治癒せしめるとともに臨床症状の著明なる改善をみた症例を経験したので報告する.

フロントガラス片による高位頸髄損傷の1症例

著者: 井須豊彦 ,   高村春雄 ,   上山博康 ,   越前谷幸平 ,   後藤聡 ,   上野一義 ,   岩隈勉

ページ範囲:P.597 - P.601

Ⅰ.はじめに
 脊髄が直接損傷された報告例は銃弾によるものが多く見られる2,3,4,8,9).ガラス片による脊髄損傷に関しては,文献上我々が知りえた範囲ではBuczynskiら1)と宮崎ら5)の2症例の報告があるのみである.最近我々は,フロントガラス片による高位頸髄損傷により,後索症状の欠如した不完全Brown-Séquard症候群を呈した稀な1症例を経験したので報告する.

Cryptococcal meningitisの1例

著者: 生塩之敬 ,   堀正泊 ,   無留井宏昌 ,   金井信博 ,   滝本昇 ,   渡部優 ,   最上平太郎 ,   森信太郎 ,   魚住徹 ,   松本圭史

ページ範囲:P.603 - P.609

Ⅰ.緒言
 cryptococcusは中枢神経系に強い親和性を有し,難治性の致命的な髄膜炎を惹き起こす真菌として恐れられてきた,amphoterlcin Bあるいは5-fluorocytosineによりて治癒したという報告もしだいに増加してはいるが1),きわめて激症で治療効果なく死亡したという報告も決して少なくはない.
 我々が経験した1例も脳腫瘍の疑いで脳神経外科を受診し,脳腫瘍としての診断学的検査および頭蓋内圧亢進に対する対症療法を受け,cryptococcusが発見,同定され,診断が確定した時点においては既に病勢が進行し治療により救命できなかった.本例は頭蓋内圧亢進を常に頭蓋内の粗大な占拠物に帰して考える傾向のある我々脳神経外科医の1つの盲点を突かれた症例であって,診療上の反省と問題点を明らかにする意味から報告する.

家族内発生を示した多発性Hemangioblastoma

著者: 北野郁夫 ,   木下和夫 ,   福村昭信 ,   松角康彦

ページ範囲:P.611 - P.617

Ⅰ.はじめに
 脳のhemangioblastomaは,頭蓋内腫瘍の約2%4,16),後頭蓋窩種瘍の7-10%8,10,16)にみられる.好発部位は小脳であるが,他の中枢神経系に多発することも10%程度8)にある.また,家族発生例も稀でなく,10-20%4)の頻度といわれている.われわれは,濃厚な家族発生をみ,多彩な神経症状を呈した,多発性hemangioblastomaを経験したので報告する.

継時的に観察しえた外傷性脳動脈瘤の治験例

著者: 船橋利理 ,   三島隆生 ,   林靖二 ,   岸政次 ,   岡益尚

ページ範囲:P.619 - P.625

Ⅰ.はじめに
 外傷性脳動脈瘤は比較的まれであり,その発生過程を継時的に観察しえた報告は非常に少ない12,13).ここに脳血管写上,動脈瘤発生過程を継時的に追跡観察しえた治験例を報告し,あわせてその発生機序につき文献的考察を加える.

非開放性頸部外傷による総頸動脈および椎骨動脈閉塞症の1例

著者: 中尾哲 ,   佐藤慎一 ,   伴貞彦 ,   犬塚楢夫 ,   山本豊城 ,   尾形誠宏 ,   平島尚武 ,   千種弘章 ,   龍野嘉紹

ページ範囲:P.627 - P.632

Ⅰ.はじめに
 頭・頸部外傷によりひきおこされる血管性病変には,a)Pseudoaneurysm,b)Arteriovenous fistula,c)Thrombosisの3種類があることはよく知られている.このうち,頸動脈・椎骨動脈血栓症は,開放性外傷によって血管が直接損傷された時ばかりでなく,非開放性外傷の場合にも生じうる.むしろ臨床上興味があるのは,非開放性頭部・頸部外傷により血栓形成をみる場合である.
 われわれは,非開放性頸部外傷の結果,総頸動脈と椎骨動脈が血栓形成によって同時に閉塞した,きわめて稀な症例を経験したので報告し,あわせて文献的考察を行う.

頭蓋外髄膜腫Extracalvarial Meningiomaの1例

著者: 浜田博文 ,   門田紘輝 ,   上津原甲一 ,   朝倉哲彦 ,   猪鹿倉武

ページ範囲:P.633 - P.639

Ⅰ.はじめに
 硬膜外に原発する髄膜腫は,一般的にはextracalvarial meningioma3,12,14,18,20)と呼ばれることが多いが,それ以外にもprimary extracranial meningioma15),epidural meningioma2)あるいはectopic meningioma5)などとも呼ばれ諸家により種々の名称があって一定していない.
 一方,その発生頻度はきわめて稀であり,文献的には1904年Winkler19)が"Über Psammome der Haut und des Unterhautgewebs"と1題して報告した症例が世界最初とされ,それ以後散発的にみられるにすぎない1,2,9,11,14,15,21).本邦における報告例も数少なく,文献的に著者らが蒐集しえた限りでは,現在までに7例3,6,8,10,18,20)である.ただし,ここでは眼窩内および背髄硬膜外に発生した髄膜腫は一応除外した.というのは組織発生からすれば,頭部のextracalvarial meningiomaと共通する点もあるが,それぞれ臨床像が特徴的である上に,ひとつのおのおの独立したentityを持って診療対象となる状況が異なっているからである.

両側大脳半球前半部を占拠した新生児脳膿瘍の1治験例

著者: 曾我部紘一郎 ,   岡本頼治 ,   上田伸 ,   松本圭蔵 ,   橋本俊顕 ,   日浦恭一

ページ範囲:P.641 - P.646

Ⅰ.はじめに
 脳膿瘍は決してまれな疾患ではないが,化学療法の進歩とともにしだいに減少し,その予後も明るいものとなってきつつある.しかし新生児にみられるものはきわめてまれであり,かつ文献的にみる限りその予後は非常に重篤である.その診断については適確な方法がなく,穿刺などで偶然に発見される場合が多い.また感染経路についても多くの場合不明である.救命しえた例も文献的にみる限り世界でわずか10例にすぎないようである1,3,4).救命例のほとんどの例でshunt手術を必要としているが,いかなる時点でshunt手術を施行するかについても髄液蛋白量増加の問題もあり,暗中模索されているのが現状である.
 このたび我々は生後6日目に痙攣発作で発症し両側大脳半球前半部を占拠した巨大な脳膿瘍で,しかも救命しえた症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

脊柱管の内外にわたる胸部動静脈奇形の1例—その手術的治療に関する考察

著者: 小林栄喜 ,   粟博志 ,   朝倉哲彦 ,   井手節雄 ,   牧野孝昭 ,   伊東隆碩

ページ範囲:P.647 - P.653

Ⅰ.はじめに
 近年,Di Chiroら(1967)3)によって開発されたselective spinal cord angiographyは,その技術的進歩により脊髄動静脈奇形spinal Cord arteriovenous malformation(以下spinal AVMと略記する)の正確な診断を可能にした.これによりspinal AVMの発見率は著しく向上し,またmicroscopic neurosurgeryの導入15)と相俟って,令摘出術も少なからぬ症例に行いうるようになった5,20,24)
 しかるに,spinal AVMの中には神経脱落症状の代償なしには全摘の困難な一群が存在し,かかる症例に対しては,諸家によって.種々の治療方法が試みられてきている.

動静脈奇形に起因した急性脊髄硬膜外血腫の1例

著者: 宮坂佳男 ,   森井誠二 ,   高木宏 ,   大和田隆 ,   矢田賢三 ,   沢田徹

ページ範囲:P.655 - P.661

Ⅰ.序論
 疼痛発作後,急激にparaplegiaをきたす疾患の1つとして,急性脊髄硬膜外血腫が挙げられる.本疾患はその大部分が,いわゆる"特発性"として報告されている8,22).今同我々は,詳細な病理組織学的検索の結果,血腫の原因として動静脈奇形が最も考えられた症例を経験したので診断および治療上の問題点を中心に報告する.

Superior facet syndrome—間歌性跛行を呈した1例

著者: 伊藤昌徳 ,   長谷川毅 ,   島克司 ,   黒沢真 ,   石井昌三

ページ範囲:P.663 - P.668

Ⅰ.はじめに
 椎間板ヘルニアに代表されるいわゆる腰椎疾患に遭遇した場合,これらの類縁疾患の存在をよく認識し,各症例毎に病理形態や発生要因について検討をすることにより,適切な鑑別診断,治療を行うことが可能となることは多言を要しない.現在,腰痛症の多くが,discogenicなものと考えられ,椎間板ヘルニアという診断が安易に下される傾向にあり,歴史的にはむしろ古くから注目されていた脊椎管自体の構築学的異常のもつ臨床的意義は忘れ去られていたといえる.
 Verbiest31),本邦においては若松ら33),円尾ら18)によりlumbar canal stenosisという病態が注目され,認識されるに至ったが,Epsteinら5)はlumbar canal stenosis,の存在なしにsuperior facetによりlateral recessの狭小化を引き起こし神経根が圧迫される病態を"superior facet syndrome"と称し報告した.著者らも最近,この1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

選択的椎骨動脈撮影後に生じた一過性皮質盲(Transient Cerebral Blindness)の1例

著者: 吉田麗己 ,   橋本邦雄 ,   平塚秀雄 ,   稲葉穣 ,   渋谷均 ,   井上善弘

ページ範囲:P.669 - P.672

Ⅰ.はじめに
 Seldinger法による選択的椎骨動脈撮影の合併症のうちで,神経学的合併症の発生頻度は,諸家の報告によれば,1.48-6.5%といわれている8,14,17).これらの神経学的合併症の中には,ごく軽度の一過性のものから,中枢神経系に永久障害を残す重篤なものまで,さまざまである14)
 最近.我々は,このうちでtransient cerebral blindnessをきたした1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

脳室穿破した脳膿瘍の1治癒例—EMIスキャン所見を中心に

著者: 井沢正博 ,   加川瑞夫 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.673 - P.680

Ⅰ.はじめに
 現在においても脳膿瘍の治療成績は必ずしも満足すべき状態ではなく,治療面にもいまだ種々の問題を残している.なかでも膿瘍の脳室穿破は最も忌むべき合併症であるとされている.従来,脳膿瘍の脳室内穿破は脳室上衣炎,pan-meningoencephalitisなどをひき起こし,致命的な経過をとることが多かった2,6,8,13,18).しかしながら最近,治療の進歩によりさらに脳膿瘍の膿にはsterile pusが多くなり,穿破した脳膿瘍のとる病態にも変化がみられている.
 脳膿瘍の脳室内穿破に関する報告は比較的少なく,特に治癒例の報告は著者らの知る限り,本例を含めて8例5,14,15,20)ときわめて少ない.著者らは最近,脳室内に穿破した脳膿瘍を全治せしめた1症例を経験した.この自験例の脳血管撮影所見,conray cistogram,EMIスキャン所見を中心にのべてみた.

動眼神経麻痺を主徴とした脳下垂体卒中の1例

著者: 横山徹夫 ,   古場群己 ,   金子満雄

ページ範囲:P.681 - P.684

Ⅰ.はじめに
 脳下垂体腺腫に伴って突然発症する頭痛,意識障害,視力障害をきたす脳下垂体卒中に関する報告は少なくないが,我々は最近,動眼神経麻痺と髄膜刺激症状で発症し,臨床症状から内頸動脈瘤を疑った1例を経験したので報告する.あわせて下垂体卒中発症のメカニズム、および動眼神経麻痺発現の機序について若干の文献的考察を行った.

5-Fluorocytosine(5-FC)の併用による黒カビ脳膿瘍の外科的治療

著者: 森山忠良 ,   安永暁生 ,   小野博久 ,   森和夫 ,   松本慶蔵 ,   宇塚良夫

ページ範囲:P.685 - P.690

Ⅰ.はじめに
 近年抗生物質の大量投与に伴い,更には副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤の使用なども関係し,真菌による中枢神経系感染症が増加しており,またいったん発症するとその治療はきわめて困難である.最近我々は非常に稀であるとされている黒色分芽菌(黒カビ)による多発性脳膿瘍の1症例を経験し,開頭術により病変部の摘出後,新しい抗真菌剤である5-Fluorocytosine(5-FC)による治療を行い,経口投与後の血中および髄液内濃度を経時的に測定したので,症例を報告し,真菌性脳膿瘍の治療に関して老察を加える.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?