文献詳細
文献概要
総説
膜構造から考えた頭蓋底良性腫瘍の手術摘出術
著者: 渡邉健太郎1 村山雄一1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.681 - P.694
文献購入ページに移動良性腫瘍手術は非常に特殊であり,マクロ,ミクロの視点から膜構造を理解することで,合併症を回避することが非常に重要である.解剖学的に考察し理解を深めることはどんな手術にも不可欠である.基本的な腫瘍から複雑な頭蓋底腫瘍の手術にまで通ずる手技,コンセプトを示す.
・良性腫瘍手術における基本的手技
・腫瘍発生機序と腫瘍の性質についての考察
・腫瘍膜構造の理解と周辺構造との関係
この3つを考え,コンセプトを理解することが手術戦略を立てるために役に立ち,手術合併症を少なくすることができると考えている.
良性腫瘍の手術治療は,腫瘍の占拠性の病変による周囲の脳または神経,血管への影響や,経時的な腫瘍の増大による将来的な影響を考慮して行われる.腫瘍の増大速度は多くの場合ゆっくりであり,決して急いで手術をするべきではないことが多い.また多くの場合無症候,または症状がある場合でもその進行は緩徐であり,生命を脅かす腫瘍ではない.
したがって手術を行う場合,未破裂の脳動脈瘤の手術と同様,決して手術後に新たな症状を起こしてはならないというのが前提であり,機能温存を最優先として手術を行うべきである.しかし,腫瘍の一部が残った場合には再発してくるのも事実であり,腫瘍を可及的に摘出することが重要である.
髄膜腫,神経鞘腫,下垂体腺腫は代表的な頭蓋内発生の良性腫瘍であり,これらの腫瘍はすべて周囲組織との境界がある.もちろん周囲との癒着がある場合があるが,基本的な構造は腫瘍との周囲に明らかな「境界」があり,その隔たりを生み出すための薄い膜の層がある.この膜は,腫瘍が周りと自分との間に細胞を増殖するための境界であり,いわゆる「腫瘍被膜」として捉えることができる.筆者はこの腫瘍被膜の膜構造と周囲の正常組織との関係性から,いかに手術合併症を減らすかを考え手術を行っている.本稿では髄膜腫,神経鞘腫,下垂体腺腫それぞれの腫瘍被膜を組織学的に評価し,その膜構造と実際の手術でみられる構造との比較を行った.
参考文献
掲載誌情報