文献詳細
文献概要
解剖を中心とした脳神経手術手技
松果体部腫瘍の手術
著者: 秋本大輔1 山本哲哉1
所属機関: 1横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科
ページ範囲:P.647 - P.658
文献購入ページに移動OTA(occipital transtentorial approach)は松果体部近傍への代表的な手術アプローチであり,ほかにinfratentorial supracerebellar approach,transcallosal interforniceal approach,parietal transcortical trans/sub-choroidal approachなどが用いられる.OTAはテント切痕上下および小脳テント直下の手術に対応でき,中脳視蓋,松果体,内大脳静脈(internal cerebral vein:ICV)下面,中間帆槽,モンロー孔直下の第三脳室側壁・後半部までの広い範囲を視野に収め,これらに発生する種々の病変に対処できる汎用性の高い術式である1).OTAを用いた自験例83症例(89手技)では,germ cell tumorが36例で最も頻度が多く(43.4%),続いて松果体実質腫瘍15例(18.1%),毛様細胞性星細胞腫11例(13.3%),その他のグリオーマ8例(9.6%)の順であった(Table 1).
OTAでは,頭尾側方向のcorridorを用いる.Parietooccipital interhemispheric routeを用いることで,中脳水道周囲から第四脳室上部,視蓋およびcerebellomesencephalic fissureの病変に対処する.逆にoccipital interhemispheric/occipitobasal/transtentorial routeでは,視床枕やモンロー孔より後方の第三脳室,脳梁膨大部から上方へ進展する病変,さらに中脳被蓋から視蓋に進展した病変に対処できる.テント下に向けた視軸では,“transtentorial”の名称が示すとおり,テント切開部を経由して視野を確保するというのが教科書的なコンセプトである.しかし,実際の手術では,十分なテント切開によって可動化した大脳鎌を対側後頭葉に向かって圧排偏位させることで,両側のテント縁や迂回槽での視軸を確保し,静脈や腫瘍の剝離操作を行いやすくすることがテント切開のもう1つの意義となっている.
参考文献
掲載誌情報