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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科6巻1号

1978年01月発行

雑誌目次

Dr.PobleteとDr.Pilinora

著者: 鈴木二郎

ページ範囲:P.5 - P.6

 Pinealomaの摘出成功3症例を引っ提げて,チリの主都サンチャゴの第8回ラテンアメリカ脳神経外科学会に桂先生の名代として出席させて頂いたのは34歳,1959年の4月,秋も愈々酣になった頃であった.森安教授も御出席の予定と聞いてはいたが,結局,ちんぴら一人の日本代表という事で,純真な筆者はテンション民族代表の資格十分というところであったようだ.
 Prof.Alfonso Asenjoは若くして南米の脳神経外科の開拓に情熱を燃やし,当時,既に脳神経外科を中軸に,脳神経に関する基礎,および臨床の十数人の教授達を従え,ロックフェラー財団の援助によって堂々たる研究所を建設し,そのactivityは若く多感な筆者にとって憧憬でもあり,驚きでさえもあった.

総説

神経系における興奮と抑制

著者: 内薗耕二

ページ範囲:P.7 - P.16

Ⅰ.はじめに
 神経系の興奮と抑制の現象を理解するためには,臨床的に見られるテタヌス現象や,実験的につくり出すことのできる除脳硬直を想起するのが便利であろう.テタヌスは運動ニューロンの興奮によっておこり,運動ニューロンに対する抑制性の入力が断たれたためにおこると考えられる.
 また除脳硬直では上位の中枢からの抑制性の入力が断たれ,下位の運動ニューロンの興奮性のみが露出された状態と考えられる.臨床的に見られるテタヌスや実験的につくられる除脳硬直はいずれも体性神経系で見られる現象である.

Case Study

長期にわたる頭痛,複視と最近現われてきた右片麻痺

著者: 北村勝俊 ,   澤田浩次 ,   沼口雄治 ,   小牧専一郎

ページ範囲:P.17 - P.22

Ⅰ.症例
 1946年生れの男性.家族歴,既往歴,生活歴に特記事項はない.現在までに3回入院している.

Current Topics

脊髄性間歇性跛行—特にCauda equina claudicationについて

著者: 角家暁 ,   冨子達史

ページ範囲:P.23 - P.27

Ⅰ.はじめに
 間歇性跛は,(1)動脈性間欲性跛行:Charcotが1858年始めて記載したもので,aorta-iliac artery及び末梢動脈の閉塞性病変によって起こる有痛性のmuscle contractionに起因するものと,(2)脊髄性1間歇性跛行:脊髄,馬尾神経の病変によるものの二型に大別される.脊髄間歌性跛行は1900年Dejerineの報告した脊髄の梅毒性血管炎に起因する症例が最初で,その後腰髄を灌流するAdamkiewicz動脈分岐部の腹部大動脈硬化性病変25),脊髄動静脈奇形にもみられることが知られており2,13),その本態は歩行時の一過性脊髄灌流障害と考えられる.しかしこの型のものは,一般に稀であり,むしろ最近は"lumbar spinal stenosis"により間歇性跛行を呈する症例の多いことが注目されている.今回脊髄間歇性跛行をJellinger and Neumayer16)に従って,A) intermittent spinal claudication:上述のDejerine syndromeとも呼ばれるものと,B)cauda equina claudicationに分け,特に後者の最近の知見を紹介する.

研究

悪性腫瘍の頭蓋内転移—Parenchymal type,Leptomeningeal type,Diffuse typeの分類とその臨床的意義(第1報)Clinical Manifestations

著者: 大井静雄 ,  

ページ範囲:P.29 - P.37

Ⅰ.緒言
 悪性腫瘍の頭蓋内転移は全剖検例の0.29-17.6%34)にみられ,頭蓋内腫瘍の4.0-23.8%9)を占めており,また頭蓋外悪性腫瘍の17%前後1,11)は中枢神経系へ転移する,悪性腫瘍の頭蓋内転移はそれ自体が予後の決定因子の1つとなりその生存年月を著しく短縮するが,近年脳実質内の転移巣に対して限られた範囲内ではあるが積極的治療が試みられ多少なりとも延命効果がみられるようになってきた10,20,33,39,40)
 一方同じく頭蓋内転移ではあるが脳実質内転移ときわめて異なる臨床症状,経過そして予後を有するいわゆるmeningeal carcinomatosisあるいはcarcinomatous meningitisについては,1870年のEberthの報告以来稀なものとされてきたがOlsonらの報告32)をはじめ最近になり急速にその認識が高まってきた.急速に進行し予後の不良なこの種の頭蓋内転移,あるいは脳実質内病巣と髄膜浸潤の合併した例などをいかに診断し治療すべきか.悪性腫瘍の頭蓋内転移に対してその延命効果を期待し可能な限りの治療に取り組む上で,これらの相異なった頭蓋内転移の病態を把握しおのおのの適切な治療方針を打ち立てることはきわめて重要なことと思われる.我我はこの観点から頭蓋内転移の病態を3型に分類し,第1報としてその臨床像を文献的考察を加えて比較検討した.

側脳室腫瘍の症候と臨床的特徴

著者: 久山秀幸 ,   藤本俊一郎 ,   長尾省吾 ,   野坂芳樹 ,   大本堯史 ,   西本詮

ページ範囲:P.39 - P.48

Ⅰ.はじめに
 側脳室腫瘍は脳腫瘍のなかでもまれなものとされ,Dandyによれば全脳腫瘍中0.75%5),Laprasは3.7%11)と報告している.1918年Dandyにより空気脳室撮影が行なわれるようになってからは,比較的容易に診断されるようになったが,側脳室腫瘍は一般に症状が不定で頭蓋内圧亢進症状だけのことが多く,臨床上神経学的検査のみでは診断のつき難いものとされている16)
 今回当教室において昭和23年より昭和50年12月までに(昭和23年から昭和41年3月までは岡山大学第一外科,それ以降岡山大学脳神経外科),手術により腫瘍の存在部位を確認し,腫瘍が側脳室内に限局していたもの,あるいは側脳室近傍より発生し腫瘍の大部分が側脳室内に発育進展していたものを側脳室腫瘍として診断および治療の面から臨床的に検討したところ,好発年齢・発生部位・症状にかなり特徴がみられたのみならず,手術方法,術後合併症などについても留意すべき点が2,3認められた.そこでまず側脳室腫瘍の診断および経過の概略を理解する一助として代表的な2症例を呈示し,次いで側脳室腫瘍について諸家の報告と比較し若干の文献的考察を加えて報告する.

脳血管攣縮治療剤としてのHydrocortisone—(1)動物実験

著者: 端和夫 ,   大川直澄 ,   田中清明 ,   中村徹 ,   西村周郎

ページ範囲:P.49 - P.57

Ⅰ.はじめに
 脳血管攣縮は現在破裂脳動脈瘤急性期におけるもっとも重要な臨床的課題であり,これに対する有効な治療法の開発が急がれている.本報告ではhydrocortisone(以下HCと略す)の脳血管攣縮治療剤としての可能性について検討した.
 Steroidは大量を投与すると,薬理学的作用として細胞膜に対する保護作用11)があり,また交感神経抑制効果8)があることが知られている.脳血管攣縮の発生には交感神経性血管収縮物質が関与するとする説があり1),また,脳血管攣縮に続いて脳循環障害がおこり,脳浮腫や脳硬塞が生ずることが知られている18).したがって,steroidの大量投与は脳血管攣縮の治療法として合理的なものであると考えられる.

外傷性内頸動脈海綿静脈洞瘻—いわゆるタコ上げ法治療における栓子の改良

著者: 蛯名国彦 ,   岩渕隆 ,   太田富雄

ページ範囲:P.59 - P.66

Ⅰ.はじめに
 外傷性内頸動脈海綿静脈洞瘻(以下外傷性CCFと略す)は動脈血が直接海綿静脈洞内に流入する為に拍動性眼球突出,頭蓋内雑音及び時には大量の鼻出血を来たす疾患として古くから知られており35),その自然治癒は殆どないと言われている26,30).また本症の治療方法もTravers(1809年)35)が患側総頸動脈結紮成功例を発表して以来,過去160年間,種々の外科的治療法が試みられて来たが,その多くは患側内頸動脈の血流を犠牲にするのみならず4,5,7,12,13),再発も多く治療効果が不確実なものであった.
 今回我々はPolyurethane foam embolusを用いて所謂"タコ上げ法"24,25,26)により脳血流の完全な温存のもとに,外傷性CCFを一次的に閉鎖し得たが,栓子作成法及び血管縫合法などの点で更に独自の改良を試みたので症例と共にその有用性について報告する.

人工脳脊髄液の作製とその臨床応用—特に脳室炎,脳室内出血に対する持続脳室灌流法について

著者: 伴貞彦 ,   長沢史朗 ,   佐藤慎一 ,   長久雅博 ,   犬塚楢夫 ,   山本豊城 ,   尾形誠宏

ページ範囲:P.67 - P.75

Ⅰ.はじめに
 近年,脳室炎,脳室内出血に対し,脳室洗浄や持続脳室灌流法が試みられ,有効な結果を得ている.しかしこれに使用されている灌流液の多くは,輸液用として調整された液であり,正常脳脊髄液(C.S.F.)とは電解質,特にpHの値に大きな差があり,大量,長期間,脳室や髄液腔内を灌流するには,危惧の念がもたれていた3,15).われわれは,その組成が正常人C.S.F.により近似し,かつpHの安定した人工C.S.F.を作製し,ネコ脳底動脈灌流及び腰椎くも膜下—大槽間持続灌流実験にて,生理食塩水(生食水)のそれと比較し明らかに優れ,かつ安全性が確認され,臨床的にも髄膜炎+脳室炎4例,脳室内出血2例の持続脳室灌流及び硬膜下水腫,くも膜嚢腫,くも膜下出血(S.A.H.),硬膜下血腫等の脳表,脳槽洗浄にも多数例に使用し,良好な結果を得たのでここに報告する.

症例

脳静脈性血管腫の1例

著者: 菅沼康雄 ,   大家一夫 ,   谷川公一 ,   松島善治 ,   稲葉穰

ページ範囲:P.77 - P.83

Ⅰ.緒言
 静脈性血管腫は脳の血管性奇形の中では,動静脈奇形とならぶ主要なものの一つであるが,臨床的に診断され治療の対象となる例は極めて少ない.1968年,Constansら2)が本疾患2例の脳血管撮影所見を報告して以来,1976年までに8例の症例が報告され,その極めて特異的な脳血管撮影所見が明らかになって来た.しかし本邦にはその報告は見られない.われわれは脳血管撮影で特徴的所見を示し,手術および組織学的検索によって,脳の静脈性血管腫と診断した1例を経験したので報告し文献的考察を加える.

開頭術後に発症した全身性カンジダ症の2例

著者: 中尾哲 ,   佐藤慎一 ,   伴貞彦 ,   犬塚楢夫 ,   山本豊城 ,   尾形誠宏

ページ範囲:P.85 - P.89

Ⅰ.はじめに
 外科的合併症のうち,術後感染症は各種の予防法や治療法の発達した現在でもなお重要な課題の一つである.脳神経外科領域においても,約3-5%の術後感染症が報告されており,感染症の成立に及ぼす各種因子について詳細な検討がなされている2,15,19,20). しかし,これらの報告にみられる感染症は,ほとんどが一般細菌に起因した感染症であり,開頭術後に発生した真菌感染症は外傷例の報告に散見するにすぎない7).今回,私達は開頭術後に全身性カンジダ症が発症し,死に至った2症例をあいついで経験した.この2症例の経験を報告するとともに,本症も含め,脳神経外科領域においても今後増加が予想されるopportunistic infectionについて言及し,あわせて本症の予防と治療について若干の文献的考察を加えたい.

自然消滅をみたSinus pericraniiの1例

著者: 早川勲 ,   佐々木皎 ,   藤原一枝 ,   柳橋万之 ,   佐々木亮 ,   平田輝昭 ,   土田富穂

ページ範囲:P.91 - P.95

Ⅰ.はじめに
 頭蓋骨膜洞Sinus pericranii(Stromeyer,1850)13)は頭部の特異な血管性腫瘤の一つとして知られている.本症は名称に対する考え方の問題もあると思われるが,ヨーロッパ系の文献には比較的よく報告されているが,アングロサクソン系の文献にはあまりとりあげられていないようである.本邦においても,本症の報告は比較的最近のことで,その報告例は尚10指にみたない.報告の少いのは,本邦で実際に本症が少いことなのか,あるいは重大な障害となることが少いためにわれわれ脳神経外科医の目にふれずにすぎ,いつの間にか自然治癒してしまっているものが多いためなのか判断しかねる処である.過去の報告例をみても.確定診断されたのは概ね成人になってからで,新生児期あるいは乳児期に本症を確定診断したものはみあたらない.しかし,本症の病理を考える場合,このものが出生と同時にすでに存在する場合があると考えるのは不自然ではなく,ただ症例によって,その後腫瘤が退縮傾向を示すものと,そうでなく長く残るものとがあると考えられる.
 われわれは出生後間もなく本症と診断し,その後7年余にわたってfollow-upした処,完全に腫瘤の消失をみた1例を経験したので,本症に自然治癒する場合のあることを強調するとともに,とくに新生児期にあっては頭血腫との鑑別診断に留意する必要があると考え報告する.

頭蓋内悪性リンパ腫(リンパ肉腫型)の1例

著者: 浜田博文 ,   泉和夫 ,   平林和明 ,   愛甲隆俊 ,   猪俣賢一郎 ,   時任純孝

ページ範囲:P.97 - P.103

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内に発生する悪性リンパ腫の報告は比較的まれであったが,近年この腫瘍に対する諸家の認識が深まるにつれ,免疫学の観点からの関心も集めて,症例や基礎的研究の報告が増加してきている18,29,32).しかし,その発生,分類あるいは名称などに関してはなお議論が多く3,10,29),今後症例や知見の累積の上に見解の整理が必要である.最近われわれは頭蓋内の悪性リンパ腫(リンパ肉腫型)の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えてその概要を報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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