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総説
中枢神経系の転移性疾患
著者: 生塩之敬1 早川徹1 最上平太郎1
所属機関: 1大阪大学脳神経外科
ページ範囲:P.947 - P.956
文献購入ページに移動癌患者のおよそ15-20%は,その疾患の経過中に何らかの中枢神経系の合併症を伴うことが報告されているが,そのほとんどのものが癌の転移によるものである.この様な癌の中枢神経系への転移は,頭痛,痙攣,四肢麻痺,尿失禁などの重篤な症状を惹起し,癌患者にされた短い余命をさらに悲惨なものにしているが,その発生頻度は最近の癌治療の進歩によりもたらされた患者の延命により,さらに上昇する傾向にある.またこれらの中には原発巣はよく治療されていながら,中枢神経系に発生した転移性疾患のために失われる例も少なくない,一方,最近一般に採用され始めたCT scanは.これら転移性疾患を容易にしかも早期に診断することを可能にした.これらのことは,今後臨床で扱われる中枢神経系の転移性疾患が確実に増加してくることを示している.この様な傾向に対処するため,すでに多くの施設で,これら疾患の病態を明らかにし,治療の体系を確立することに努力が払われている.
ここでは,中枢神経系の転移性疾患の実態を総括するとともに,現在これらの疾患に関する研究がどこまで進み,どの様な治療成績が得られているかに視点をおき,文献的考察を加えたいと思う.これらを総合的に把握し,問題点を明らかにすることが,つぎの段階への研究の足がかりになると思われる.
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