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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科6巻11号

1978年11月発行

雑誌目次

医師と教師

著者: 米増祐吉

ページ範囲:P.1037 - P.1038

 医学教育に関する論議が世上を賑わして久しいが,医学界以外の周辺の論議が,とくに医の倫理にからんで盛んであるが,医師の側は問題の本質を捉えていないのか,苦々しい思いで傍観しているのが実情のように見受けられる.
 医学部,医科大学の新設も各方面からの論議の多い中で一段落し,ここ数年の間に医学部卒業生は倍増しようとしているが,医学教育の改革といえる程の変化は起こっていないようである.私も新設医科大学で,医学教育の責任を負う立場になり,その重大さと,難しさを痛感している.

総説

Neurosurgical Anesthesia

著者: ,  

ページ範囲:P.1039 - P.1047

 Over the past several decades, advances in our understanding of neurosurgical anesthesia have taken place at an unprecedented rate. One of the major reasons for this is the emphasis placed on the clinical application of the basic physiologic and pharmacologic principles relevant to neurosurgical anesthesia.
 The physiologic changes and pharmacologic manipulations which occur in patients undergoing general anesthesia can have profound effects upon cerebral bleed flow and cerebral metabolism.

Case Study

小児第3脳室皮様嚢腫

著者: 青木秀夫 ,   阿美古征生

ページ範囲:P.1049 - P.1053

I.はじめに
 きわめて稀な幼児第3脳室皮様嚢腫の症例であるが,診療初期の治療方針が不適当であったために根治手術が遅れた.更に術後は感染との戦いで,1年9カ月の経過で不幸の転帰をとった症例である.結果ははなはだ不本意なこととなったが,われわれにとっては実に教訓の多い症例と思うので,紙面の許す限り詳細な経過を述べてみたい.

海外だより

伝記映画"Harvey Cushing and His Times"

著者: 星野孝夫

ページ範囲:P.1054 - P.1055

 つい最近"Harvey Cushing and His Times"という映画を見る機会を得た.むろん白黒で無声映画で,スナップショットをまぜた30分ぐらいの映画というよりは活動と呼んだ方がふさわしい.この映画はHe-berden Medical Historical Societyに登録されたもので,CushingのResidentであったBronson S.Rayによって昨年3月31日に公開されたものだそうである.
 Cushingは非常にPrideの高いしかも完全主義者であり,常に自分を意識していたという.自分の伝記が出版されるなら後世の医学生の興味をそそるか,また何かのたしになるかもしれないからと,彼の遺言の中にもそのために必要な費用の一部を補うため,彼の遺産の一部をそれにあてるように指示していたのだそうである、その遺言は,後にJohnFultonによって実行され,1946年に最も完全な形で出版された事は皆周知のことかと思う.

研究

動脈硬化により発生したと考えられる脳動脈瘤11症例の臨床検討—Sclerotic cerebral aneurysms

著者: 大原宏夫 ,   坂本哲也 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.1057 - P.1064

Ⅰ.はじめに
 動脈硬化が原因で発生する脳動脈瘤(以下,動脈硬化性脳動脈瘤sclerotic cerebral aneurysmと称する)には脳底動脈等の主幹動脈自体が紡錘形に拡張して形成されるもの(fusiform aneurysm)と,形態的には嚢状を呈するが動脈分岐部とは関係なくかつ親動脈と共に動脈瘤自体も著明な動脈硬化に陥っているものがある2).後者の型の場合は外科的治療の対象となる.そこで自験例をもとに動脈硬化性脳動脈瘤の症状,診断,治療および予後を中心に臨床的面から検討した.

前交通動脈瘤症例のWillis動脈輪前半部血流動態—脳血管写による検討

著者: 郭隆璫 ,   大井隆嗣 ,   新妻博 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.1065 - P.1069

I.緒言
 脳動脈瘤の大半はWillis動脈輪に発生する.しかもそれらの症例においてはWillis動脈輪の奇形や血流動態異常を伴うものが多いことが指摘されている2,6,7,11)
 われわれはすでに前交通動脈瘤症例におけるWillis動脈輪前半部の奇形または血流動態異常が約80%に認められ,またその前大脳動脈A1部の形成不全は約80%が右側にあることを報告8)した.これらの事実はWillis動脈輪前半部の血流動態異常がこの部の動脈瘤の発生に重大な役割を果たしており,一方この事実は前交通動脈瘤の脳血管撮影からの診断,および外科的接近の操作上において有用であることをも指摘した.その後,1975年9月までにわれわれの直接手術症例は1,000例に達したのでそれらの症例の脳血管写像を詳細に検討したところ,Willis動脈輪前半部の血流動態異常は前交通動脈瘤症例に特異的に多いことが更に明らかになったので報告する.

破裂脳動脈瘤症例に対する第3脳室造瘻術

著者: 坂本哲也 ,   児玉南海雄 ,   鮱名勉 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.1071 - P.1075

はじめに
 破裂脳動脈瘤患者の外科的治療の予後を左右する因子の中で,いわゆる急性水頭症11),あるいは慢性期に出現する正常圧水頭症1)に対しては,持続脳室ドレナージあるいは脳室腹腔連絡術などの減圧術を時期を失せずに病態に応じて施行すれば有効である.
 これらの病態像の原因である,くも膜下出血後の髄液循環の異常はくも膜下出血により頭蓋内の髄液循環経路を種々の段階でblockされることにより発生する5,12)

Cineradiographyによる脊椎異常運動の診断

著者: 元持雅男 ,   牧田泰正 ,   上條純成 ,   鍋島祥男 ,   増田彰夫 ,   青山育弘 ,   樋野啓一

ページ範囲:P.1077 - P.1082

Ⅰ.はじめに
 レントゲン映画を脊椎運動の様相を検討する目的で報告した論文は,その重要性にも拘らず,海外でも散見される程度であり,わが国での報告は見当らない.われわれは,過去約1年間,脊椎のレントゲン映画を撮影し,これが脊椎運動の診断に,極めて有用であったので紹介したい.

CT scan上における大脳鎌陰影の検討

著者: 秋本宏 ,   牧豊 ,   小野幸雄 ,   久野恒一

ページ範囲:P.1083 - P.1087

Ⅰ.はじめに
 大脳鎌陰影は,通常はCT scan上では判別できず,脳萎縮のある場合3)とか,石灰化している場合4)に,大脳正中部矢状方向に線状の高吸収帯として認められると報告されている.しかしわれわれは若年者においても大脳鎌陰影が認められる症例や大脳鎌附近に広範な低吸収領域を伴った症例に,大脳鎌陰影が認められるのを経験しており,必ずしも大脳鎌陰影陽性=石灰化=加齢現象という考え方には疑問をもつに至った.そこで著者らはその出現頻度を,性別,年代別,各断層レベルにおいて検討し,更に松果体および手綱,また側脳室三角部脈絡叢の出現度合いとの比較検討を行なった.

症例

Superior facet syndrome—3例の報告と文献的考察

著者: 小山素麿 ,   岩城和男 ,   石川純一郎 ,   近藤明悳

ページ範囲:P.1089 - P.1096

Ⅰ.はじめに
 腰部脊椎管狭窄症を臨床的にみると2つに大別出来る,第1は脊椎管の前後径が短縮し管腔が狭小化し,cauda equina全体が圧迫されるもの(major type of lumbar canal stonosis)11)でもう1つは1〜数本のrootがlateral recessusの狭小化のために絞扼されるものである3)
 後者については1933年Ghormley6)は"the facet syndrome"という名称を用いposterior facetのosteo-arthritisによる根性坐骨神経痛を報告しているが,Epsteinら4)はこれと異なった原因でnerve root entrap-mentがおこる症候群を記載し"superior facet syn-drome"と命名した.わが国においても最近伊藤ら7)の報告がある.

右側脳室モンロー孔近傍に発生したsubependymomaの1例

著者: 曾我部紘一郎 ,   本藤秀樹 ,   日下和昌 ,   松本圭蔵

ページ範囲:P.1097 - P.1101

Ⅰ.はじめに
 脳室上衣細胞層直下には緻密な線維網にうもれて,小さな核と原形質に乏しいglia細胞の集団が細胞床をなして存在する.そして,おそらくこれを発生母地としたものと思われる1つの腫瘍が存在することが知られている.この種の腫瘍は表在性で脳室内につきでた形となることが多く,その組織像はastrocytomaともependy-momaとも言い難く,結局,subependymoma12)という新しいentityを作ってこれに入れざるをえないとする考え方が支配的である.さらに,このsubependymomaはその予後が良好である点からもgliomaの中で特殊なものとして位置づけられ,良性腫瘍のarrested stageのものとか,一種のhamartomaと考える人さえある。また,脳神経学的には全摘出により完治可能なものとしてはなはだ興味がある.しかし,文献上からみると,剖検により偶然発見されたものをのぞけば,側脳室内にあって,しかも単発的で,手術により全摘出され,組織像からsubependymomaと診断された例はきわめて稀である.

パーキンソニズムを呈した中頭蓋窩類上皮腫の1例

著者: 貝嶋光信 ,   福井仁士 ,   島史雄 ,   北村勝俊 ,   池田純 ,   沼口雄治 ,   小牧専一郎

ページ範囲:P.1103 - P.1108

Ⅰ.はじめに
 脳腫瘍に伴うパーキンソニズムの報告は,これまで散発的に認められるのみである.われわれは今回,左中頭蓋窩類上皮腫に伴う,一側性パーキンソニズムを経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

脳橋膠腫,多発性硬化症を思わせた特発性脳橋血腫の1例

著者: 外山孚 ,   本多拓 ,   植木幸明

ページ範囲:P.1109 - P.1112

Ⅰ.はじめに
 特発性橋血腫のなかに比較的若年者にみられ,急性または亜急性に発症し,進行性の経過をたどるが症状の動揺,緩解をくり返すために脳橋膠腫,多発性硬化症と誤診される例のあることは良く知られている.われわれも同様の症例を経験したので,それらの鑑別診断について考察し,あわせてCTの有用性について報告する.

外傷性中硬膜動脈偽動脈瘤,硬膜動静脈瘻,同側慢性硬膜下血腫,対側硬膜下水腫,および非外傷性椎骨後頭動脈吻合の1合併例

著者: 森山隆志 ,   田中輝彦

ページ範囲:P.1113 - P.1118

Ⅰ.はじめに
 頭蓋骨々折を伴う硬膜外血腫例では,脳血管撮影で造影剤の血管外漏出,硬膜動脈偽動脈瘤,硬膜動静脈瘻などのみられることがあると言われてきたが,実際には意外に稀なものである.
 われわれは,頭部外傷による頭蓋頭皮下破砕骨折を有する慢性期の患者に,脳血管撮影を行ったところ,中硬膜動脈偽動脈瘤および硬膜動静脈瘻を認め,更にその上患側の硬膜下血腫,対側の硬膜下水腫ならびに椎骨動脈—後頭動脈吻合をも合併した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

外傷性後頭蓋窩血腫の2例

著者: 坂本学 ,   日下和昌 ,   松本圭蔵

ページ範囲:P.1119 - P.1125

Ⅰ.はじめに
 外傷による後頭蓋窩血腫は,テント上の血腫に比べてかなり数は少なく,その診断も比較的難しいと言われてきた.諸家の報告よりその頻度をみてみると,外傷性頭蓋内血腫の中の2-6%程度を占めるようであり,従来はSchneider24)の指摘するように,その存在を念頭に置くことにより発見率は高まると考えられてきた.著者らが,外傷性後頭蓋窩血腫に関し集めえた本邦例における文献によると,硬膜外血腫36例,硬膜下血腫11例,小脳内血腫2例,計49例であるが,CTによって診断すれば,きわめて容易で,かつ確実であることは論を侯たない.最近われわれは,外傷性後頭蓋窩血腫を椎骨動脈写とCTにより診断し,血腫除去術を行い,良好な経過をみた硬膜外血腫,硬膜下血腫それぞれ1例の2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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