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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科6巻3号

1978年03月発行

雑誌目次

外保連

著者: 森安信雄

ページ範囲:P.209 - P.210

 「扉」で保険点数のことを述べるのは,あるいは当をえないかもしれないが,学会の評議員会,総会などで保険点数がたびたび問題となるので,敢えてここで取り上げることにする.
 保険点数,ことに外科sideにおいて,手術,処置などに対する評価が適正を欠いていることは,すでに久しい以前から唱えられていた.かつて外科学会においてもこれが問題となり,厚生省に要望書を提出したが大して反響がなく,それではと翌年整形外科学会と連合で陳情に及んだが,それもなんら効果はえられなかった.そこで,外科系全体が足並みを揃え,十分な根拠をもって抜本的に取り組もうという機運が高まり,外科(一般外科,脳神経外科,胸部外科,小児外科),整形外科,産婦人科,眼科,耳鼻科,泌尿器科,口腔外科,形成外科の各学会から代表を出し,外科系保険委員会連合(外保連)を結成することになった.8年前のことである.

総説

脳浮腫—脳の微細病理形態からみた解説

著者: 平野朝雄 ,   松井孝嘉

ページ範囲:P.211 - P.219

まえがき
 脳浮腫は,ほとんどすべての脳神経疾患に,多少の差はあっても,附随して起こるため,臨床的には,最も関心のあるテーマであるが,そのメカニズムについては,従来より幾多の学説が発表されており,その中には,根本的に書き改められた部分も多い2,4-6).脳浮腫は,その原因によって,また,時間的経過によっても,その様相を異にし,浮腫液の貯留する場所も異なってくる.そのため,複雑で,大変理解しにくいテーマとなっている.
 脳浮腫で重要な役割を演ずるのは,水分の異常な増加,および,その移動であり,脳浮腫の大部分をしめるvasogenic edemaでは,その源泉は,血管に由来する4,5)

Case Study

頸部頸動脈閉塞症に対する外科的治療—伏在静脈を用いたBypass Graft

著者: 半田肇 ,   米川泰弘 ,   滝和郎 ,   松田功 ,   山崎俊樹

ページ範囲:P.221 - P.227

Ⅰ.はじめに
 頭蓋外血管の閉塞性疾患は,日本人は欧米人に比し,比較的少ないと言われている5,18,20,21,24).われわれは最近,本疾患を持つ症例に伏在静脈を用いて,左の鎖骨下動脈(subclavian artery)と,左の内頚動脈(internal carotid artery)とのbypassを行った.この症例をもとに本疾患の病歴,pathophysiology,さらには手術適応,手術の実際について述べる.

Current Topics

脳血管攣縮寛解物質

著者: 大本堯史

ページ範囲:P.229 - P.234

Ⅰ.血管収縮の機序
 血管平滑筋の収縮機序はなお完全に明らかにされたとはいえないが,まとめるとFig.1,2のごとくなる.αレセプターの興奮は細胞膜に結合しているguanyl cyclaseを介して,また,βレセプターの興奮はadenyl cyclaseを介して平滑筋の反応を引き起こすというのが一般的な考えである.平滑筋の収縮は,Mg,ATPの存在下に収縮蛋白であるmyosinとactinの結合によってもたらされるが,この収縮系を活性化する最も重要な因子はCaイオンである6,8,37).平滑筋細胞はα受容体が刺激されると,収縮に先だち細胞膜の脱分極を起こし,細胞膜透過性の亢進によりCaイオンが細胞内に流入し,一方ではguanyl cyclaseを介してguanosine triphosphate(GTP)が分解され,cyclic guanosine monophosphate(cyclic GMP)が増える.このcyclic G MPが細胞膜やミトコンドリアに結合型として存在するCaイオンを遊離するほか,細胞膜のCaイオン透過性を高める.こうして,細胞内に十分なCaイオンが貯留することによって,1つには収縮蛋白の活性を促進し,また一方,Caイオンはphosphorylaseの活性を高め,その結果glycogenを分解して,できたATPが筋収縮のエネルギーとして供給される8,37)(Fig.2).このさいATPaseはCaイオンによって活性化される(Fig.1).

研究

植物状態患者の脳脊髄液中アミン代謝産物の変動とL-Dopaの投与効果

著者: 鮄川哲二 ,   梶川博 ,   石川進 ,   魚住徹

ページ範囲:P.235 - P.243

Ⅰ.緒言
 近年,脳神経外科領域において重症脳損傷に対する患者管理の進歩とともに,急性期死亡を免れながらもその後の高度意識障害のため外界との意志の疎通,感情の発動を欠き,いわゆる植物状態とも呼称される症例は増加の一途をたどり,社会的にも深刻な問題を投げかけている.このような患者の病態生理は脳循環,脳代謝,脳波などの面より研究され,治療法として脳代謝賦活剤の血管内および髄腔内投与,自家血頸動脈内注入療法などが試みられているが,その効果は悲観的である.一方,L-3,4-dihydroxyphenylalanine(L-Dopa)は今日まで主としてParkinsonismの治療薬として使用されてきたが,Parkes25),Fischerら5)は肝性昏睡に,福島ら6)は脳神経外科的疾患の意識障害,精神症状に対して覚醒効果のあることを報告し,著者ら10)も遷延性意識障害患者にL-Dopa投与を試み,一部の症例に臨床効果のあることを明らかにした.今回は植物状態患者に対するL-Dopaの投与効果について述べるとともに,脳脊髄液中のhomovanillic acid(HVA),5-hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)値を分析し,脳内アミン代謝の面より検討したので報告する.

脳神経外科領域における術中輸液と術後意識状態

著者: 田口薫 ,   井奥匡彦 ,   滝本洋司 ,   堀部邦夫 ,   金城孝 ,   赤木功人

ページ範囲:P.245 - P.252

Ⅰ.はじめに
 脳神経外科領域において,開頭手術をうけた患者がよい経過をとるか否かを決定する大きな因子の1つに,輸液管理の問題がある.しかもこれは手術侵襲の大きいもの程術後の覚醒に大きく関係するものである.またあるときには術後に発生する脳浮腫という事態にも関係することがあるであろう.その事実は,正しい手術適応と最良のapproachで手術がなされたにもかかわらず,それらの症例のなかには意識の回復が予想外に遅れる例や,術後の脳浮腫が重篤かつ長期にわたる例があること,これとは反対に止むを得ず大きな侵襲を加え長時間を要した手術であったにもかかわらず意識の回復が速く,しかも術後の脳浮腫がほとんど発生していない症例があること,などを考えると輸液を検討することは重要である.本研究はかかる見地から臨床的になされたものであり,脳神経外科領域における術中術後の輸液が患者の意識回復にいかに大きな影響を及ぼすかを観察検討したものである.

カメレオン・プリント®を利用した新しい髄液短絡管の機能判定法

著者: 山崎駿 ,   苧坂邦彦 ,   平山昭彦 ,   藤田勝三 ,   松本悟

ページ範囲:P.253 - P.257

I.はじめに
 水頭症患者において髄液短絡管の機能を把握することは長期予後の面からみて重要な問題である.もちろん,本来は臨床症状によって判定されるべきであるが,極めて緩徐に進行する慢性水頭症の場合,その判定は必ずしも容易ではない.私どもは髄液短絡術にはPudenz氏flushing deviceのついた短絡管を使用しているが,短絡管の開閉判定の手段として頭皮を介してのflushing deviceの圧縮方法の信頼性に限界を感じることがある11).短絡管の開存を確認するその他の与法としては,アイソトープ8,14)や造影剤1,3)をflushing deviceの中に直接注入する方法やinfusion testによる方法2,15)などが試みられている,前者は判定が比較的確実であるが,注射針によりflushing deviceが損傷する恐れや,感染をひきおこす可能性があり,頻回の検査を行なえない.後者は間接的な判定法なので,その判定があいまいになることもある.新しい方法として超音波ドプラ法を応用した方法が報告されている5),flushing deviceを押して髄液の流れをみるので短絡管の開存は確認できるが,平常の状態で短絡管内を髄液が流れているか否かを検査しているのではない点に問題があり,また呼吸や血流などによるartifactが入りこむ可能性もあり,まだ実用化の域に達していない.

症例

高度脳浮腫を呈した脳梗塞2例—出血性梗塞に関連して

著者: 和田邦雄 ,   南卓男 ,   桂田菊嗣

ページ範囲:P.259 - P.264

Ⅰ.はじめに
 脳梗塞による発作早期の死亡は脳出血にくらべるとはるかに少なく,緩慢な経過をとるのが通常である13),そして脳梗塞による早期死亡は,両側性,広汎な梗塞や脳幹の梗塞によるものであり,脳梗塞に附随した致命的な脳浮腫の合併についてはあまり関心がもたれていない.
 著者らは発症後数日以内に高度の脳浮腫等を招来し,そのためにいずれも死亡の転帰をとった脳梗塞の2症例を経験したので,これらの症例を報告すると共に脳梗塞による高度脳浮腫の成因についての若干の考察を加えた.

新生児硬膜外出血—2症例と文献的考察

著者: 高木卓爾 ,   永井良治 ,   若林繁夫 ,   三沢郁夫 ,   永井肇

ページ範囲:P.265 - P.268

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内出血は周産期死亡の重要な原因の1つであるがasphyxia,atelectasisについで二義的と考えられる傾向にあった.
 最近,新生児の呼吸管理をはじめとする養護が改善され,またエコーグラム,右逆行性腕動脈撮影,CT scan等の検査が積極的に行なわれるようになり血腫の部位的診断も正確となって手術を行う機会が多くなった.

両側外転神経麻痺およびsleep induced dyspneaを伴った椎骨動脈瘤の1例

著者: 榊三郎 ,   善家迪彦 ,   宍戸豊史 ,   尾藤昭二 ,   大西俊彦

ページ範囲:P.269 - P.273

Ⅰ.緒言
 頭蓋内動脈瘤のうちで後頭蓋窩動脈瘤の占める比率は,一般には10-15%であるといわれている.しかしながら,臨床例における後頭蓋窩動脈瘤の頻度は,それよりもはるかに低い13).その理由の1つはWillis輪のanterior circulationの動脈瘤に比べて,後頭蓋窩動脈瘤の場合は,その診断が必ずしも容易でないことがあげられるであろう.すなわち,血管撮影で常に鮮明な血管陰影を描出することがむずかしく,また,血管陰影が後頭蓋窩骨陰影と重なるために,その読影が容易ではないことである1).このため,後頭蓋窩動脈瘤の中には,確定診断がつかず,原因不明のくも膜下出血の範疇に入れられている症例も存在すると考えられる.
 さて,従来より後頭蓋窩動脈瘤破裂によるくも膜下出血(SAHと略す)に特異的な症状は少ないと報告されているが皆無ではない.若し,後頭蓋窩動脈瘤を疑わしめる特徴的な症状が出現すれば,診断上は,きわめて有力なものとなりうるであろう.ここにおいて,後頭蓋窩動脈瘤に対する症候学を個々の症例についてきめ細かく検討することは重要な課題と考える.

血友病Aに併発した急性および亜急性頭蓋内血腫の2治験例

著者: 外山孚 ,   石川尚之 ,   石井鐐二 ,   岡田耕坪 ,   伊藤正一

ページ範囲:P.275 - P.279

Ⅰ.はじめに
 伴性劣性遺伝による家族性疾患の1つである血友病Aは,深部組織出血,凝固時間延長を特徴とし,第Ⅷ因子(抗血友病性グロブリン)欠乏による内因トロンボプラスチン形成障害を基礎的病態とするものである.近年血液凝固に関する研究の著しい進歩により血友病患者の皮下出血,関節内出血,骨折等の処置は安全かつ効果的に行われるようになり,その死亡率も減少の一途を辿っている.しかし血友病患者の3.4-13.8%に合併する頭蓋内出血5,8,17)は,その死亡率がきわめて高いといわれている.われわれは最近,外傷後頭蓋内出血をきたした2例を経験し,1例は血腫除去術により,1例は保存的療法により治癒し得たので若干の考察を加えて報告する.

血友病Bに起因する頭蓋内出血—乳児脳内血腫の1手術治験例と文献的考察

著者: 伴野悠士 ,   中田義隆 ,   小野純一 ,   牧野博安

ページ範囲:P.281 - P.286

 血友病に頭蓋内出血を合併する頻度は,8.7%31),13.8%19),あるいは15.4%18)といわれ,関節内や筋肉内出血の頻度に比し,そう高いものではない.しかしその死亡率は,Silverstein31)によれば71%と高率で,近年の凝固因子補充療法の進歩によりその率が低下したとはいえ,最近の吉田の血友病に関する全国的な実態調査によれば,血友病患者の死亡原因では頭蓋内出血が55%で第1位を占めるという.更に,従来本邦では欧米に比し少ないといわれていた血友病患者が,調査の結果欧米並の頻度であることも判明している.血友病患者にとって,頭蓋内出血は最も恐るべき合併症であることに変りはない.又一方,手術適応の症例でも,まだなかなか手術にふみきれないという場合も多いようである.
 今回われわれは,術前診断されていなかった血友病Bの乳児で,輸血のみで手術を行い,救命しえた脳内血腫例を経験したので,その概略を報告し,血友病に合併した頭蓋内出血の臨床的特徴等につき,文献的検討を加える.

非外傷性偽動脈瘤を続発した硬膜動静脈奇形の全摘治験例

著者: 石井正三 ,   三田礼造 ,   田村弘幸 ,   田中洋

ページ範囲:P.287 - P.294

Ⅰ.はじめに
 動静脈奇形が硬膜に発生することは稀とされており,臨床像から組織所見まで検討・報告された本邦症例は未だ10例に満たない程度である.
 加えて,本症が外傷等の何らの誘因なく特発性に巨大な偽動脈瘤を形成するという事は,極めて稀であって文献的にも類例をみない.

後頭蓋窩硬膜動静脈奇形の1症例

著者: 水川典彦 ,   角南典生 ,   則兼博 ,   鈴木健二 ,   宮本俊彦 ,   西本詮

ページ範囲:P.295 - P.302

Ⅰ.はじめに
 後頭蓋窩硬膜動静脈奇形(AVMと略記)は,最近報告例が増加し,成因や治療法に関する検討がなされているが,いまだ一定した結論は,えられておらず,治療困難な疾患の1つである.
 われわれは最近,脳膿瘍に対して開頭による全摘出術後2年を経過して,後頭蓋窩および後頭部硬膜AVMが発生し,2度にわたり手術を行った症例を経験したので,治療法を中心に,若干の考察を加えて報告する.

海外だより

悪性脳腫瘍の治療に関するBrook Lodge Workshop

著者: 星野孝夫

ページ範囲:P.304 - P.305

 2年前にアメリカで初めて,悪性脳腫瘍の治療の開発に関してのworkshopが,カリフォルニアのアシルモアーで行なわれた.40人ぐらいの実際に第一線で研究している人人が北米より招待され3日間にわたって寝食を共にしながら発表したり意見を交換したりしたわけである.内容は悪性脳腫瘍のbiology,pathology,experimental model,in vitroやin vivoでの化学療法や放射線療法の実験及び実際の化学療法の成果などが熱心に討論された.その時参加した感想を一昨年の(1976年)脳と神経8号に私が書いた総説「脳腫瘍の化学療法」に披露したのを覚えているが,第2回のworkshopがミシガン州のカラマズーのBrook Lodgeでこの10月の下旬に開かれたわけである.
 前回は化学療法及び放射線療法を中心にしたため,免疫関係のトピックスはオミットされ,また,海外からはJulian T.Bloom(英国の放射線治療学者)博士が招かれただけであった.今回は免疫関係のreviewも兼ねてその方面の人々も招待を受けていた他に,海外からも5−6人の参加者があり,PaviaのPaoletti教授や日本からも高倉博士(がんセンター)が招待されて来ておられた.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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