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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科6巻4号

1978年04月発行

雑誌目次

偶感

著者: 松井将

ページ範囲:P.311 - P.312

 脳神経外科領域の診断法も頭蓋レントゲン撮影に初まって,気脳写,気室写,脳血管写,脳波,さらにRIスキャナー,CTスキャナー等ととどまる所を知らない発見開発によって,飛躍的な進歩発展を遂げてきた.その発展ぶりに我々は驚嘆させられると同時に,敏速で的確な診療への多大な貢献に唯だ感謝するのみである.特にCTスキャナーの出現は脳神経外科診断にとって脳血管撮影法と共に一大革命をもたらしたものといえよう.現在では高価な機械ではあるが,それも奇跡的な高度成長を遂げた日本経済にとっては問題視される程の事でもないかの如く,全く目を見張るばかりの普及であって,誠に御同慶の至りといえよう,然し補助診断機械の提供する情報は,その機械の個性的特性を通じてのみ具象化する事のできる,1つの"像"であって,映像の存立基盤となっている生体内の病変そのものを示してはいない.機械が持つ宿命である.従って機械の提供する情報から病変診断を確定するに当っては,次の2つの条件が満足されねば正確とはいえない.機械から提供される情報は個々の機械の特性によって色づけられた情報であるから,これを使用者が補正する,即ち機械の機構特性への豊富な知識の習得によって初めて補正が可能となるものである.他の1つは複雑多様な病変の如何なる状態が検査時点において機械を通して映像化されたかを判断する,即ち解剖,病理など各分野の過去現在の幾多の研究集積への充分な知識の裏付けによってのみ正確な判断決定がなされ得るものである.

総説

Brain Stimulation for the Suppression of the Intractable Pain

著者: ,  

ページ範囲:P.313 - P.319

 The suppression of the intractable pain in human by electrical stimulation of the septal area was reported by Heath and Mickel in 196011). Other subcortical areas were subsequently explored, such as the median forebrain bundle5), and the caudate nucleus6), but little attention was paid to these sporatic clinical efforts. It would appear probable that the suppression of pain or analgesia resulting from stimulation in these areas of the brain is related to the rewarding properties of the stimulation.

Case Study

脳内出血を繰返した症例

著者: 喜多村孝一 ,   神保実

ページ範囲:P.321 - P.326

症例
 53歳の男性である.
 家族歴に特記すべきものはない.

Current Topics

脳波のコンピュータ処理

著者: 間中信也

ページ範囲:P.327 - P.329

 脳波の分析は従来の用手法あるいはアナログフィルターを用いた方法から,1965年ごろを境にデジタル計算機を用いた分析方法へと移っていった.1970年ごろからは関連学会でコンピュータによる脳波の分析の演題発表がとくに盛んになった.本稿の目的は現在の本邦における脳波のコンピュータ処理の現状を紹介することにある.1966年までの脳波分析の実情は,脳波の電気現象の分析法とその応用(藤森ら編,医学書院)に詳しい.1973年までの欧米の仕事に関してはAutomatic of Clinical Electroencephalography(KellawayとPetersen編,Raven Press,1973)によくまとまっている,脳波計量診断の最近の動向については斉藤の論文(医川電子と生体工学,13:105-108,1975)がよくまとまっている.
 多方面にわたる脳波分析の仕事を便宜上脳波分析の基本的方法,脳波の自動解析(診断),脳波の分析の結果の表示法の3項に分けて述べる.

研究

定量的脊椎・脊髄損傷の一実験法

著者: 池田公行 ,   山形省吾 ,   中埜賢 ,   谷栄一

ページ範囲:P.331 - P.339

Ⅰ.緒言
 1911年にAllen2)が定量的な脊髄損傷の実験方法を報告して以来,この方法が現在にいたるまで広く用いられている1,9,34,36).同時に脊髄損傷を多面的に研究するために多数の実験方法が考案されている7,14,15,20,21,25,26,30,31,33,43,44,47,48).また特殊な治療法3,19,45,46)に脊髄の損傷が合併して発生する場合もあると報告されている.最近Allenのweight-dropping techniqueの欠点が指摘され10,23,34,41,44),いわゆるAllenの方法を用いている研究者の実験結果の不一致の原因が検討されている18,29)
 重症の脊髄損傷の発症のmechanismとしては,頸椎においてはflexion injuryまたはhyperextension injuryに伴うluxation,dislocationまたはfracture-dislocationが重要視されており,腰椎においても類似の損傷および椎体の圧迫骨折などが指摘されている.胸椎は,胸郭の一部を形成しているという解剖学的な関係のため,過剰な屈曲や伸展運動が起こりにくく,胸椎の損傷は,脊柱の長軸方向に加わる外力によるか,または個々の胸椎に直接作用する外力によって起こる.

くも膜下出血後の脳波

著者: 山本豊城 ,   長澤史朗 ,   佐藤慎一 ,   伴貞彦 ,   長久雅博 ,   犬塚楢夫 ,   尾形誠宏

ページ範囲:P.341 - P.346

Ⅰ.はじめに
 近年わが国においても,くも膜下出血の主原因の1つである脳動脈瘤に対する手術件数は,飛躍的に増加しているが,くも膜下出血後の慢性期における脳波による追跡調査は少なく,くも膜下出血の続発症としての症候性てんかんに関する報告も意外にまれである.そこでわれわれは,くも膜下出血症例,とくに今回は破裂脳動脈瘤症例について,脳波を用いた追跡調査を実施したところ,くも膜下出血後の脳波異常が予想外に多く,また実際にてんかんが発症することを知った,そこで追跡調査結果を報告し,症候性てんかんの診断における脳波の役割についても検討を加えた.

Transpetrosal-transtentorial appraochによる小脳橋角部腫瘍摘出術

著者: 白馬明

ページ範囲:P.347 - P.354

Ⅰ.はじめに
 近年,耳鼻科的検査法と神経放射線学の進歩にともない,聴神経鞘腫の診断が早期になされるようになって来たが,今日でも腫瘍がかなりの大きさになっている症例に遭遇することが少なくない.直径2cmまでの聴神経鞘腫の手術成績は,近年translabyrinthine approachにより非常に良好となった3).しかし直径4cm以上の大きな腫瘍の手術では,unilateral suboccipital approach with meatal dissectionが一般に行われているが.morbidityおよびmortalityは比較的高いのが現状1,2,7)である.著者ら4)は1975年まで大きな聴神経鞘腫に対してこの方法のmodificationを用いて手術を行って来たが,死亡例もなくまた著しいmorbidityも認められなかった.しかし本術式による大きな腫瘍の摘出に当っては,その最もrostroventralの部分の露出と切除がきわめて困難である.この部分の切除は,subtemporal approachによりテントを切開し上外側より進入する方がより容易であると思われる8)が,長時間の圧排による側頭葉の損傷が問題となる.

実験的脳梗塞(第1報)—視床梗塞モデル犬の作製

著者: 吉本高志 ,   坂本哲也 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.355 - P.359

Ⅰ.はじめに
 脳梗塞については従来よりさまざまな研究が行われてきたが,近年,脳卒中に対する外科的治療のめざましい発展により多くの脳血管性障害が外科治療の対象とされ,それに伴い,脳梗塞に関する新たな問題が提起されてきている.
 すなわち,脳動脈瘤の根治手術などにおける脳主幹動脈の一時的遮断の許容時間,さらには,脳血管閉塞疾患における血管再建術の施行時期などである.

頭部CT-Scanの画像間処理—CT-Subtraction, CT-Reconstructionの臨床応用

著者: 上田裕一 ,   永井政勝 ,   木村一元

ページ範囲:P.361 - P.372

はじめに
 頭部CT-Scanは,原理的にはX線横断断層法であるが,従来の断層撮影法では出し得なかった脳室—くも膜下腔や脳実質など.頭蓋内軟部組織をcomputorを使用することにより表出可能とした.その表出方法は,断層面を仮想絵素(voxel)に割り.各絵素のX線吸収値を計算し,その値を白黒指標をもってテレビモニター上に画像として映像するものである.安全でしかも簡便に行い得るのみならず、その診断情報の豊さにより頭蓋内疾患の診断には欠かせない検査法1,9)となつた.
 頭部CT-Scanにより得られた診断情報は,主に画像として表出している,しかしながら,画像間での処理については未だどの機種においても不充分である.幸いわれわれは,1976年9月以来Sicmens社製のSIRETOMI型を使用する機会を得た.この機種はwater-bagを使用するいわゆる第一世代のCT-ScanでX線吸収係数値の計算もほぼ全面的にsoftwareにて行っている.その為computorの容量は大きく,register転送速度も高速である.

症例

慢性硬膜下血腫を合併した脳表仮性動脈瘤

著者: 木矢克造 ,   原田廉 ,   川西秀樹 ,   西山英行 ,   満田浩二 ,   久保田茂夫 ,   石川進 ,   魚住徹

ページ範囲:P.373 - P.378

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内動脈瘤が硬膜下血腫を合併することは比較的稀である.例えば破裂動脈瘤に起因する硬膜下血腫の発生頻度は臨床例で0.5-7.9%2,18),剖検例で1.9-17%17,21)と報告されている.血腫の成因は必ずしも動脈瘤の破裂ばかりではないが,これ以外の場合を考慮しても特に動脈瘤が慢性硬膜下血腫を伴うことは稀である.我々は慢性硬膜下血腫を合併した中大脳動脈皮質枝の仮性動脈瘤を経験したので,動脈瘤と血腫の成因について考察を加え報告する.

高血圧性小脳出血—下部脳幹症候を呈した症例の手術

著者: 吉田伸一 ,   佐々木司 ,   岡秀宗 ,   後藤修 ,   山田量三

ページ範囲:P.379 - P.383

Ⅰ.はじめに
 小脳出血は,剖検資料によると脳内出血の5-13%を占め3,7,11,16),まれではない.原因は,高血圧によるものが50-90%3,7,13,16)で一番多く,血管腫,抗血液凝固剤の投与,動静脈奇形がそれに次ぐ.小脳出血は,臨床症候の重症度と,その推移の速さから,①激症型:sudden onset of coma and pontine damage,②重症型:progressive neurological impairment,③軽症型:slow or episodic development of signs of cerebellar or oculomotor dysfunctionの3種の症候群に分けられ5,15),重症型の頻度が最も高い.予後はきわめて悪く,内科的治療では1週間以内に75-80%が死亡し7,11),軽症例の一部に自然治癒が見られるのみである8,13).小脳出血のnatural historyが明らかになるにつれ,外科的治療への関心と期待が高まった.外科的治療は,1906年Ballance2)が外傷性小脳内血腫除去に成功したのが初めとされる.本邦では,佐野ら17)の血管腫に起因する小脳血腫の除去による治癒例の報告を初めとして,現在まで,欧米・本邦合せて,約150例の報告をみる.しかし,それらのほとんどが発症後1週間以上経てから行われた手術で,局在症候に乏しい重症例の早期血腫除去の成功は,報告が少ない.

くも膜下嚢腫と角膜変性症を伴ったorbital dysplasiaの1例

著者: 深田忠次 ,   高見政美

ページ範囲:P.385 - P.391

Ⅰ.はじめに
 Orbital dysplasia1)(以下ODと略す)は一側性の先天的蝶形骨形成異常であるが,この骨異常の他に欠損眼窩内への側頭葉嵌入,拍動性眼球突出,脳形成異常,くも膜下嚢腫,硬膜肥厚,脳血管奇形などを伴うことがある1-3,5-7).この骨異常はまたvon Recklinghausen氏病において,中胚葉形成異常としてその部分所見となることも指摘されている1-3,6,7)
 ODはX線写真上きわめて特徴ある骨変化であるが,これを2次的骨破壊と誤診する危険があり1-3,5-7),注意深い観察が必要である.本稿ではくも膜下嚢腫と先天的角膜変性症を合併したODの1自験例について,その臨床経過,骨X線写真の他に,CAG,PEG,CT scansなどの所見を併せて報告する.

視交叉部くも膜炎による両鼻側四分一盲の1例

著者: 山木垂水 ,   小竹源也 ,   堀川義治

ページ範囲:P.393 - P.396

Ⅰ.はじめに
 両鼻側半盲は視野欠損の中できわめて稀なものである.これは視路における解剖学的特徴より,網膜あるいは非交叉性視神経線維が両側性に障害されることにより生じるわけで,網膜由来のもの以外では,病巣は視交叉の両側に同時に存在せねばならないという特殊な状況が必要となる.その原因となる疾患は諸家によりいろいろ報告されているが3,5,10,12),われわれは最近視交叉部くも膜炎において両鼻側四分一盲をきたした症例を経験したので報告し,若干の文献的考察を加える.

髄膜腫摘出後にみられた硬膜動静脈瘻の1例

著者: 尾藤昭二 ,   大西俊輝 ,   滝本昇 ,   榊三郎 ,   郷間徹 ,   本崎孝彦

ページ範囲:P.397 - P.400

Ⅰ.はじめに
 内外頸動脈の硬膜枝と,横静脈洞またはS状静脈洞間の動静脈瘻については1936年初めてTonnisがtransverse sinus angiomaとして報告したが,近年脳血管撮影の普及に伴い各地で報告されるようになった.本疾患はNewton12)がdural arterio-venous malformationと呼んだごとく,先天的動静脈奇形と考えられている場合が多い.最近著者らは,左前頭部髄膜腫摘出後約2年半経過した後,左横静脈洞を中心とした硬膜動静脈瘻の発現をみた1例を経験したので報告する.

Internal acoustic meatus aneurysmの1治験例

著者: 樋口皓史 ,   矢嶋浩三 ,   中沢省三

ページ範囲:P.401 - P.404

Ⅰ.はじめに
 後頭蓋窩の脳動脈瘤発生頻度は,全脳動脈瘤中約10%前後であり,発生部位は大部分が椎骨動脈又は脳底動脈上やこれらの分岐部に生じる.前下小脳動脈—内耳動脈分岐部附近に発生する動脈瘤はきわめて稀で,現在まで5例の報告がみられるに過ぎない2,3,5,6,7)
 我々は最近耳鳴を主訴としたきわめて稀な前下小脳動脈—内耳動脈分岐部動脈瘤(internal acoustic meatus aneurysm)を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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