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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科6巻7号

1978年07月発行

雑誌目次

青空之交,Pionierの外遊日記より

著者: 駒井則彦

ページ範囲:P.611 - P.612

 先日,竹林弘先生の「欧米の外科」(大阪医事新誌刊,昭和16年)を再読する機会があった.この本は竹林先生が1937年頃,欧米の主要外科教室を歴訪されたときのメモや写真をまとめられたものである.当時の日本の脳神経外科先覚者達の情熱と努力がうかがわれると共に,欧米の一流脳神経外科医とそのKlinikの様子もよくあらわれている.
 ドイツでは第一次大戦後でナチス全盛の頃である.年頃の女性が多く,よくコーヒーやチョコレートをねだられたと話されていた.

総説

脳腫瘍と染色体

著者: 新井紀元

ページ範囲:P.613 - P.622

Ⅰ.はじめに
 脳腫瘍と染色体といっても,脳腫瘍が他腫瘍と比べ特別異った染色体を有するわけではなく,腫瘍一般の染色体という知識なしには脳腫瘍の染色体を論ずることはできない.従って腫瘍と染色体という問題に重点を置いてこのテーマをまとめてみたい.
 Boveri(1914)以来,初期の多くの染色体研究者は,腫瘍細胞における分裂の異常性,すなわち,不等分裂・多極分裂・多核分裂・巨細胞の出現などを腫瘍の特異性と考えた.

Case Study

比較的急速な経過をとってneuraxisに沿って増大発育したmalignant pontine gliomaの1例

著者: 朝倉哲彦 ,   上津原甲一 ,   浜田博文

ページ範囲:P.623 - P.630

はじめに
 P(教授):昭和50年9月1日に診療を開始してから,ずいぶんいろんな症例を経験したようだが,印象としては疾病そのものが稀有なものというより,臨床経過に問題のあったものが多かったようだな.GPというのはどうして、神経症状を解析しないで診断をつけてしまうのか,視神経萎縮とか自家中毒とかの診断名で対症療法に終始している例が多い.それより困るのは,歴然とした神経徴候が存在するのに,通り一遍の検査を行って異常なしと診断する自称専門家のいることだ.これからの医学教育においては,すべからく……
 L(講師・外来医長):また始まりましたね.ただ今の御話に関係あるかどうかは別として.急いで入院させないといけないと思う例があるのですが.
 P:それを早くいい給え.で患者は?

Current Topics

CTの将来

著者: 梅垣洋一郎

ページ範囲:P.631 - P.634

 今年の1月23-25日の間,東京で「CTの物理技術的諸問題に関するシンポジウム」が脳神経CT研究会に引続いて開催された.その内容から興味が深いと思われるトピックスを紹介したい.
 CTが出現してからまだ数年にしかならないのに,その進歩の速さはおどろくほど早かった.最新のCTは第4世代といわれるが,解像力では0.5mm,X線吸収係数の分解能は0.5%,撮像時間は2秒というラインに到達している.もちろん性能がよくなるほど価格も高くなり,最高の性能の装置では3億円を超えるというからこれもおどろくばかりである.撮像時間が短かくなっても,CT像を再構成して見られるようにするのに時間がかかり,そのため1日に数入しか検査できないといわれているが,これも像処理時間を短かくしてスキャンが終るとすぐに像が出るCT(例を挙げるとシーメンスSOMATOM)が出現している.高速でしかもよい画質のCTを得るためには,1)大容散で安定にパルス状のX線を発生する装置,2)多素子で安定に働らき,ムラの少ない検出器,3)計算を高速化するコンピュータシステム特にハード化された像処理計算専用プロセッサーの開発等が必要で,各社それぞれ特自の工夫がなされている.表1は最近の全身用CTの仕様を示している.

研究

高血圧性脳内出血に関する研究(第2報)—血腫の経時的追跡およびCT分類について

著者: 三浦直久 ,   中原明 ,   加川瑞夫 ,   喜多村孝一 ,   小林直紀

ページ範囲:P.635 - P.645

Ⅰ.はじめに
 高血圧性脳内出血の診断にCTが導人されてから日は浅いが,もはやその診断的価値を疑う者はいない.従来,高血圧性脳内出血のCTに関しては詳述されたものが必ずしも多くなく,Scott14),New12,13),Muller10)らが挙げられるのみである.
 著者らは前回の報告に加え,過去2年半にわたりCTにより追跡し得た症例から新たな知見を得ることができた.本稿では特に高血圧性脳内出血をCTにより追跡し,病態面からみた臨床分類を試み,さらにその応用面について述べてみたい.

高血圧性脳内出血に関する研究(第3報)—大脳基底核部出血の手術適応決定上の因子について

著者: 中原明 ,   西村敏彦 ,   三浦直久 ,   加川瑞夫 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.647 - P.655

Ⅰ.はじめに
 わが国における死因第1位の座を中枢神経系血管障害が占めるようになって久しい.その中で高血圧性脳内出血死が重要な位置にあることは周知の事実である.この高血圧性脳内出血に対し外科的治療が行われるようになって,本邦では30年余を経るが,外科的治療,保存的治療法のいずれを選ぶかの境界線はいまだに明確でない4,6).そして,その手術適応に関する報告は近年いたずらに多くみられるが,統一的な見解はまだみられていない.
 われわれは,昭和50年8月末のCT(EMI scanner)導入以来,高血圧性脳内出血の診断における有用性を利用し,形態学的病型分類7)を試み,診断,治療,予後推定に役立たせてきた.CTによる新情報を含め,高血圧性脳内出血の治療上,どのような病態の折に手術に踏み切るべきか,またどのような時に外科的治療が優るのかについて病態を形成する要因別に少しく検討を加えてみた.

腰部椎間板ヘルニア症に対する顕微鏡手術法

著者: ,   岩肇

ページ範囲:P.657 - P.662

Ⅰ.はじめに
 腰部椎間板ヘルニア症は成人にしばしば起こる疾患のひとつである.西ドイツの神経外科各施設では年間全手術件数の約20%を本症の手術で占めている.
 さて,腰部椎間板ヘルニアの外科的療法後にしばしば強い,しかも時には半永久的な腰部の愁訴を経験する.このことは本症の手術例数が多いことと共に,社会・経済的にも重大な影響をおよぼしている.著者らは,手術によって生ずる組織の損傷がこの愁訴の主たる要因であり,これを出来る限り軽減させなければならないと考えている.

脳動脈微細構造変化と脳血管攣縮—実験的研究

著者: 田辺祐介 ,   香川泰生 ,   高田光昭 ,   山田弘 ,   坂田一記

ページ範囲:P.663 - P.672

Ⅰ.緒言
 くも膜下出血(SAH)後に発生する脳血管攣縮は患者の生命的,機能的予後に重大な影響を与える現象であり,その発生機構解明の努力が諸家により鋭意なされているが,いまだその本態が十分に解明されたとはいえない現況である.SAH後に発生する脳血管攣縮は実験的に二相性を示すことが明らかにされているが7),SAH直後より発現し1時間以内に消退するものはacute phaseあるいはearly spasm(ES),SAH 4-24時間後より発現するものはchronic phaseあるいはlate spasm(LS)と呼称されている.
 ESとLSには病態生理学的に種々の相違がみられ,両者の病因の違いが指摘されている11,22)近年.セロトニンがESの病因の主役をなしているという説が有力となっており7,19),学者の関心はLSの病因となるべき化学物質の解明に向けられている3,4,5,12,13,27,28,29)

脳動脈瘤症例における脳血管撮影の合併症について

著者: 新妻博 ,   郭隆璫 ,   大井隆嗣 ,   片倉隆一 ,   溝井和夫 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.673 - P.679

Ⅰ.はじめに
 脳血管撮影は脳動脈瘤の診断に不可欠であるばかりでなく,その外科的治療を行うにあたって,術前に動脈瘤およびその周辺の情報を得る最も有効な補助的診断法である,特に最近は安全な造影剤の開発・技術的進歩に伴って,比較的容易に行い得る検査法の1つとなっているが,脳血管撮影における合併症はなお重大な問題である.
 著者らは,1961年6月から1975年9月までの約14年間に,1,080例の嚢状脳動脈瘤を経験し,うち1,000例に対して直接手術を施行し得たが,一方これらの症例に対して頻回の脳血管撮影を行い,種々の合併症に遭遇している.従来より脳血管障害例では脳血管撮影による合併症の発生率が高いとされ,また脳動脈瘤では,血管撮影中の動脈瘤破裂が起こり得ること等の問題が指摘されているが,本論文では頻回の脳血管撮影を余儀なくされるこれら脳動脈瘤の脳血管撮影による合併症についてまとめ,若干の考察を加える.

症例

Hemophilus aphrophilusによる脳膿瘍の1例

著者: 菅沼康雄 ,   大家一夫 ,   谷川公一 ,   松島善治 ,   稲葉穰

ページ範囲:P.681 - P.685

1.緒言
 Hemophilus aphrophilusは1940年Khairat9)によって,心内膜炎患者の血液から分離されたグラム陰性の小球桿菌である.1961年Fager4)は脳膿瘍から得た膿性物質の培養によって,同菌を同定した.Hemophilusaphrophilusによる脳膿瘍は,現在までに文献上19例1,3,4,5,6,7,11,13,14,15)報告されているが,17例が米国からで,他の国からは少なく,本邦には報告が見あたらない.この細菌は報告例の50%が心内膜炎,25%が脳膿瘍,25%が耳,咽頭,肺,骨などの感染症から分離されており,脳膿瘍を起こしやすいと考えられる.
 われわれは最近,脳塞栓様症状によって発症し,脳室穿破を来し,重篤な経過をたどったHemophilus aphrophilusによる脳膿瘍の1例を経験したので報告する.

頸部脊椎管にまで伸展した嚢腫性頭蓋咽頭腫の1例

著者: 馬場元毅 ,   岩山繁木 ,   神保実 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.687 - P.693

Ⅰ.はじめに
 頭蓋咽頭腫は発育伸展方向の多彩さの故に,さまざまの神経症状,内分泌異常を呈する,一般には,その発育伸展方向は鞍上型と鞍内型に分けられるが,稀に舌咽腔や後頭蓋窩にまで伸展するものもある(basisphenoid型)6,7).著者らは14歳の女児で腫瘍がclivusから大孔を経て,第3頸椎のレベルにまで伸展した嚢腫性頭蓋咽頭腫の症例を経験した.文献的にも,頸椎レベルにまで発育仲展した頭蓋咽頭腫は著者らが調べ得た限りでは認められなかったので,若干の文献的考察を加えて報告する.

馬尾部Hemangioblastomaの1例

著者: 佐々木亮 ,   早川勲 ,   土田富穂 ,   柳橋萬之 ,   藤原一枝 ,   平田輝昭 ,   安藤晋也

ページ範囲:P.695 - P.700

Ⅰ.はじめに
 脊髄病変の診断は1967年,Djinjian,Di Chiroらによつて開発された選択的脊髄血管撮影により飛躍的進歩を遂げた3,5).しかし脊髄の血管芽腫は弓吝生頻度が低いこともあって,血管撮影で術前に診断できたものは少なく,しかも大部分は頸,胸髄髄内腫瘍であり,馬尾部血管芽腫はまれで,わが国では報告例を見ない.
 このたびわれわれは血管撮影で診断し,全摘により令治した馬尾部血管芽腫の1症例を経験したので報告し,主として血管撮影所見について文献的考察を加えたい.

椎骨動脈閉塞を伴った頸部硬膜外神経鞘腫の1例

著者: 岩崎喜信 ,   中川端午 ,   小岩光行

ページ範囲:P.701 - P.705

Ⅰ.はじめに
 頸部神経鞘腫は脊髄腫瘍において決して稀なものではないが,椎骨動脈の閉塞を伴った症例の報告はきわめて少ない.今回,われわれは長期間の経過をもった巨大な頸部硬膜外神経鞘腫を経験したので,レ線上の所見とあわせて報告する.

急性小脳梗塞について

著者: 三木一仁 ,   栗本匡久 ,   谷定泰 ,   池田裕 ,   河村悌夫 ,   染田邦哲 ,   松村浩

ページ範囲:P.707 - P.713

Ⅰ.はじめに
 一般に小脳は,その豊富な側副循環2,23)のため,小脳に限局する梗塞の発生は稀であり,また梗塞が発生しても、その機能代償性の高さゆえに明らかな症状を呈さず.剖検時偶然に発児される例も多い1,35)
 しかしながら,一方では梗塞に伴う広汎な浮腫,あるいは出血性梗塞によるmass effectのため脳幹圧迫を招来し,急激に致死的経過をとる例の存在が知られている.この様なacute uncomplicated cerebcllar infarction35)に対する早期外科的減圧術の必要性と有効性に関しては,1956年,Fairburn and Oliver6)およびLindgren22)の報告以来しばしば述べられているが,その手術例の報告は極めて少ない,これは,前述した理山から小脳梗塞の発生頻度が少ないことに加えて,臨床診断が必ずしも容易でないこと,経過が急激なため手術時期を逸する例のあることがその理由と考えられる.しかしながら,近来専門的知識の普及や診断技術の進歩により,これらの症例のうちかなりのものは救命しうるものではなかろうか.

第4脳室内pearly tumorの経験—epidermoid 2症例とdermoid 1症例

著者: 近藤勉 ,   坪川孝志 ,   後藤利和 ,   菅原武仁 ,   林成之 ,   森安信雄

ページ範囲:P.715 - P.722

Ⅰ.緒言
 頭蓋内pearly tumorはepidermoidとdermoidが一括されていることがある24).このうち,epidermoidは,令脳腫瘍の約1%(Gendell4)ら1976,Granl & Austin6)1950,桂10)ら1958,Mahoney14)1936,Zülch24)1965)で,dermoidは0.1-0.4%(桂10)ら1958,Zülch1965)とされている.最近Guidetti & Gagliardi7)(1977)は4,296例の脳腫瘍症例中31例のepidermoidと21例のdermoidを認めているが,第4脳室内が好発部位の1つにされているepidermoidでも,第4脳室内epidermoid 2例,dermoidが2例報告されているに過ぎない.
 本邦では小脳虫部を含めて第4脳室内のpearly tunlorつまりepidermoid,dermoidの報告は20例に満たず,第4脳室内epidermoid 9例, dermoid 1例,小脳虫部のepidermoid 4例,dermoid 2例(Table 1)と少ない.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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