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症例
乳幼児頸部内頸動脈走行異常と大脳萎縮—その3手術例
著者: 田中悟1 児玉南海雄1 高久晃1 鈴木二郎1
所属機関: 1東北大学脳疾患研究施設脳神経外科
ページ範囲:P.803 - P.810
文献購入ページに移動頸部内頸動脈走行異常は,成人においては動脈硬化が主な原因とされており,脳障害の一因として,現在,その病的意義も認められている.一方,この走行異常は数少ないながらも小児,特に乳幼児にも見られる.この走行異常は,胎生期における血管形成過程に生じる奇形的要素が強いといわれているが,果して成人におけると同様に,乳幼児の場合にも,この走行異常が病的意義を持つのかどうかは,未だ大いに問題のあるところであろう.しかし,われわれは知能発育遅延児,および脳姓麻痺児において,この走行異常が対照例に比べて高い頻度で発見された事より,この走行異常が未熟脳に血流障害を惹起し,脳障害の原因となる場合もあるのではないかと推定してきた14).
今回は,いわゆる急性小児片麻痺症状で発症した症例に,脳血管撮影を施行したところ,頸部内頸動脈走行異常を認めた3症例を経験し,これら3例に対し試みに該部走行矯正術を施行した,その結果,中にはこの部の血管走行異常が,乳幼児脳障害の原因たり得る事を示唆するごとく,明らかな改善を認めた症例も経験したので報告し,若干の文献的考察を加える.
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