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脳腫瘍のLysosome酵素
著者: 阿部弘1
所属機関: 1北海道大学脳神経外科
ページ範囲:P.835 - P.843
文献購入ページに移動脳腫瘍組織中の酵素活性の動態を知ることは,腫瘍組織または腫瘍細胞の種々の代謝機構の解明にとって有力な手段の1つである.癌の酵素学的診断は古くから行われてきており,癌組織および血清より各種の酵素活性が測定され早期診断および予後の判定に実用化されてきている.脳腫瘍においても腫瘍組織から各種の酵素活性が測定され,多くの知見がえられてきている.すなわちLactate dehydrogenaseの研究20,22,29,31,48),Aldolaseisozymeの研究36,44),ATPaseの研究37,39),Cytochromeoxidaseの研究7,11)などはすでに報告され腫瘍細胞の代謝機構とのかかわりやそれぞれの意義が認識されている,これらの酵素化学的方面の研究結果を集大成して正常脳組織と異なる腫瘍組織の代謝機構の特色を追究し,制癌剤の作用機序との関係を研究することにより,もっとも有効な化学療法の開発および放射線療法や免疫療法の効果をより増強する方法の開発もやがて可能となってくるであろうと思われる.
脳腫瘍におけるこれらのあらゆる酵素活性の動態について述べることは余りにも広範囲かつ多岐にわたるので,今回はLysosome酵素活性について主として生化学的分析による知見を述べ,今後の研究の闇題点および展望についても若干ふれてみたい.
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