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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科7巻1号

1979年01月発行

雑誌目次

若い頭脳

著者: 矢田賢三

ページ範囲:P.5 - P.6

 一説によると,敗戦の廃墟の中から,日本の産業が不死鳥の如くよみがえり,今日の経済大国を作りあげた原因の1つはマッカーサーによる公職追放令だという.当時,日本のほとんどすべての分野で指導的な立場にいた政財界の大物(すなわち高齢者)はこの占領軍の命令によってその指導的立場から追放され,一瞬にして指導者層の年齢的な若返りがなされ,これらの活力にみちた若い,新しい頭脳が指導権を握ったために今日の産業界の隆盛が導かれたのであるという.もちろん,これだけが唯一無二の原因だとは誰も思わないであろうが,過去にとらわれない若い頭脳の集団によるリードが1つの大きな要因となっていただろうことは容易に想像出来る.
 北米合衆国が独立宣言を行ったとき,Thomas Jeffersonは33歳,James Madisonはわずか25歳であったという.

総説

Cervical Spondylosisと椎間孔開放術

著者: 長島親男 ,   坂口新

ページ範囲:P.7 - P.23

Ⅰ.はじめに
 わが国におけるcervical spondylosisの概念には現在なお多少の混乱があるように思われる.この名称は,Brain,Northfield,Clark,Robinson,Wilkinsonらを初めとするイギリス学派によって使われ概念の確立をみたもので,以下に原文のまま,この疾患の定義を引用しておく.
 We use the term "cervical spondylosis" to denote only the bony and cartilagenous deformity, as shown in radiographs at operation, or at necropsy.(Hughs, J. T. & Brownnell, B. Radcliffe Infirmary, Oxford)24)

Case Study

両側視力・視野障害と汎下垂体前葉機能低下を来たした巨大内頸動脈瘤直達手術例

著者: 魚住徹 ,   島健 ,   森信太郎

ページ範囲:P.25 - P.31

Ⅰ.はじめに
 通常の脳動脈瘤がくも膜下出血で発症するのに対し,巨大脳動脈瘤は出血をきたす事は比較的少なく,頭蓋内占拠物体として周囲の脳組織神経を圧迫して次第に症状を塁してくる事が多い,われわれも最近,両側視力,視野障害で発症した巨大内頸動脈瘤を経験し,最終的には直達手術を行い,一側視力を温存する事が出来た1症例を経験したので臨床経過を追いその問題点をあげ,診断と治療について考察を加える.

Current Topics

Sheroid

著者: 野村和弘

ページ範囲:P.33 - P.36

 脳腫瘍に限らず固形腫瘍の生長には血管の増生が1つの重要な因子となっている8).即ち血管に近接する部分にある腫瘍細胞は酸素や栄養を充分与えられて増殖も旺盛であろうと考えられるし、逆に血管から遠位の部位にある腫瘍細胞は酸素も栄養も充分受け取れないでいる可能性が高い.従って一口に腫瘍といってもその環境の違いから壊死状態の部分は別にしても最低2つの部位にわけられる.血管から遠位にある細胞はhypoxicな状態にあり,栄養状態も充分でなく,生長解析からみると,いわゆるG0(resting)cellが大きい割合を占めていると考えられる細胞群である.一方血管に近接する部分にある細胞群は,prolife-ating cellが大きな割合を占めていると考えられる.前者のanoxicな細胞群は放射線治療に対して抵抗性が強い,化学療法の側からみると,血管から遠位に存在するということで,薬剤の到達度は低くなり治療が困難である.その上一般的にはG0細胞は薬剤耐性が強いと考えられている治療に抵抗する細胞群なのである.星野の報告によると悪性脳腫瘍のviable portionを選沢してさえもこの様なG0細胞が60-70%存在するというのである3).従って単層培養による研究dataのみからin vivoの治療を考えることは随分と大きい飛躍がある,事実in vivoとin vitroつの効果が一致しないということはよく指摘されることである.

研究

高血圧性脳内出血に関する研究(第4報)—大脳基底核部出血の急性期Gradingと手術適応

著者: 中原明 ,   西村敏彦 ,   三浦直久 ,   加川瑞夫 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.37 - P.48

Ⅰ.はじめに
 高血圧性脳内出血の中には,手術的に血腫をとりのぞくのが望ましいものがあることは事実である.しかしながら,どのような状態のものに手術を行なうべきかについては,未だに不明瞭な点を残している.それはこの疾患を扱う内科医,脳神経外科医の両者を抵抗なく首肯させる手術適応の基準が確立されていないためである.
 われわれは前に報告したごとく8,10,11,12),手術適応を決める上で重要な因子を詳細に検討し,意識度と神経学的所見より成る急性期の重篤度Stage,血腫量,CT所見に基づく形態学的病型分類(PT分類)などと転帰との相関が高いことを述べてきた.ここでは,さらに症例を増し,これら各々の因子と転帰との関係をSpearmanの順位相関係数を求め,推計学的に処理し検討した.そして,相関係数の高い因子を基に高血圧性脳内出血の急性期重症度分類を定め,手術適応を検討したので詳述したい.

頭蓋底部腫瘍におけるMetrizamide CT cisternographyの検討

著者: 露無松平 ,   藤原敬悟 ,   山口武兼 ,   平塚秀雄 ,   稲葉穰

ページ範囲:P.49 - P.54

Ⅰ.はじめに
 GreitzとHindmarsh9)が1974年に水溶性非イオン性造影剤のMetrizamideをCT-cisternography(以下CTCと略す)に応用して以来,本検査法が髄液循環動態異常や頭蓋底部腫瘍の検出に有効であることが報告されてきた.
 われわれは頭蓋底部腫瘍を疑った23例にMetrizamideによるCTCを施行し,その診断的価値を検討し若干の問題点について考察を加えた.

小児の急性硬膜下血腫(水腫)—その成因についての考察

著者: 山田博是 ,   景山直樹 ,   中島正光 ,   中村茂俊

ページ範囲:P.55 - P.62

Ⅰ.はじめに
 小児の硬膜下血腫のうち慢性硬膜下血腫は討論される機会が多い.しかし急性硬膜下血腫は乳児期ではどの年代よりも多数を占め,成人と非常に異なった病態を示すにもかかわらず,文献的にも多くはなく,あまり深く検討されていないようである.またその成因についてもbridging veinsの破綻による是,のと一般に認められているが16,17),小児の急性硬膜下血腫は水腫または髄液成分の多い血腫の方がむしろ多いようであり1,7,8),静脈からの出血のみからは必ずしも充分説明出来ない.またその病態についてもまだ不明の点が多いようである.
 最近CT scanが導入され乳幼児の頭部外傷にも利用される機会が多くなってきている24).2歳以下の急性外傷例ではくも膜下腔に脳脊髄液(CSF)が貯溜した症例も少なからずみられる25).この状態の臨床的意義,硬膜下血腫(水腫を含む)との関係を検討し,それぞれの成因に対して考察を加えてみた.

CT像よりみた後縦靱帯骨化症の検討

著者: 角家暁 ,   中村勉 ,   大橋雅広 ,   広瀬源二郎 ,   多田明

ページ範囲:P.63 - P.70

Ⅰ.緒言
 後縦靱帯骨化症は,従来単純X線像,特にその側面像に加えて,断層撮影を行って言参断をくだし,脊髄の圧迫の有無はmyelographyによってみて来た.しかし骨化巣の形態,またその拡がりをX線上で正確に診断することは必ずしも容易でなく,特にspondylosisを合併した場合,また骨化巣が下位頸椎,胸椎にある場合などには,その程度を明確に読影することは甚だ難かしかった.私共は後縦靱帯骨化症による脊椎管狭窄の詳細を知るために,従来回転断層を併用してきたが,像の鮮鋭度は必ずしも十分でなく,満足のいく情報を得ているとは言えなかった11)
 最近全身用のCT scanが導入され脊椎,脊髄の診断にも試みられている8,10,15).私共は後縦靱帯骨化症のCT scanを検討したところ,脊椎管内の骨化巣の部位,大きさ,連続性が正確に描出されるばかりでなく,CT scan上の骨化巣.脊椎管の面積測定より狭窄率が計算出来るため,骨化巣と神経症状の相関,更には手術々式を考慮する際に,従来のX線診断のみでは得られない重要な情報を得ることが判って来た.今回,後縦靱帯骨化症のCT像の検討より骨化巣の形態,狭窄率と神経症状,spondylosisとの関連などについて報告する.

中大脳動脈瘤の手術—174例の経験から

著者: 児玉南海雄 ,   鮱名勉 ,   藤原悟 ,   峯浦一喜 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.71 - P.78

Ⅰ.はじめに
 われわれは,1975年9月までの14年間に嚢状脳動脈瘤直接手術1,000症例を経験したが,うち中大脳動脈瘤(以下MCA-AN)は174例であり,これら症例の外科的治療に関し検討を試み,特にこの部動脈瘤手術の要点について報告する.

症例

巨大脳動脈瘤に椎骨動脈窓形成を合併した1症例

著者: 宍戸豊史 ,   渡辺光夫 ,   倉本進賢

ページ範囲:P.79 - P.83

Ⅰ.はじめに
 近年,脳血管撮影の普及ならびに進歩により臨床例における脳の血管性奇形に関する報告がなされるようになり,頭蓋内巨大動脈瘤,脳血管の窓形成,外頸・椎骨動脈吻合,先天性遺残動脈などが報告されている.しかしながら,これらの数種の脳血管奇形が同一症例に合併する報告は稀である.
 最近われわれは,巨大内頸動脈瘤に椎骨動脈窓形成を合併した1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

Von Recklinghausen病に合併した両側聴神経腫瘍の1家系

著者: 外山孚 ,   山崎悦功 ,   栗田勇 ,   伊藤寿介 ,   植木幸明

ページ範囲:P.85 - P.89

Ⅰ.はじめに
 当教室において,昭和51年9月までにvon Recklinghausen病と診断された症例は18例あった.それらはすべて脳または脊髄に多発性の腫瘍を合併していた.そのうち両側聴神経腫瘍を合併していたものが12例あり,その中に明らかに遺伝的関係を見出せた1家系があったので報告する.

Primary Interhemispheric Subdural Abscessの1例—脳血管撮影所見を中心に

著者: 和田伸一 ,   松角康彦 ,   岸田克明

ページ範囲:P.91 - P.96

I.緒言
 頭蓋内化膿性疾患である脳膿瘍,硬膜下膿瘍は,適切な診断と治療がなされるならば,抗生物質に恵まれた現代では,完全に治癒せしめ得る疾患であるにもかかわらず,必ずしも良好な成績を収めているといいいがたい8).頭蓋内の膿瘍として,種々の報告が記載され,ことに脳膿瘍については,継続的な関心をたかめているのに反し硬膜下膿瘍についての記載は少なく,中でも大脳縦裂間に発生するinterhemispheric subdural abscessの診断と治療に関しては,その報告もまれであり,本邦では半田ら4)の1例と,中村ら15)の剖検例など,数例をみるに過ぎない.本疾患はしばしば急性の経過をとり,膿瘍の局在が特異なため,著しく臨床像を異にする経過と,脳腫瘍症候あるいは頭蓋内感染症の所見を呈し,interhemispheric subdural abscessの術前診断は容易でない.診断困難なまま脊髄疾患として処理され,不幸の転帰を辿るものも少なくなく,報告例の多くは手術または剖検により,初めて確診に至っていることからみても明らかである.本疾患の存在に考慮を払いつつ,痙攣,対麻痺などのfalx syndromeに加えて,感染症の病歴を示すものでは,脳血管撮影所見の読影に当り,その特徴的所見を見落さぬよう留意するならば,術前診断も可能と考えられる.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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