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症例
Primary Interhemispheric Subdural Abscessの1例—脳血管撮影所見を中心に
著者: 和田伸一1 松角康彦1 岸田克明2
所属機関: 1熊本大学脳神経外科 2宮崎県立延岡病院脳神経外科
ページ範囲:P.91 - P.96
文献購入ページに移動頭蓋内化膿性疾患である脳膿瘍,硬膜下膿瘍は,適切な診断と治療がなされるならば,抗生物質に恵まれた現代では,完全に治癒せしめ得る疾患であるにもかかわらず,必ずしも良好な成績を収めているといいいがたい8).頭蓋内の膿瘍として,種々の報告が記載され,ことに脳膿瘍については,継続的な関心をたかめているのに反し硬膜下膿瘍についての記載は少なく,中でも大脳縦裂間に発生するinterhemispheric subdural abscessの診断と治療に関しては,その報告もまれであり,本邦では半田ら4)の1例と,中村ら15)の剖検例など,数例をみるに過ぎない.本疾患はしばしば急性の経過をとり,膿瘍の局在が特異なため,著しく臨床像を異にする経過と,脳腫瘍症候あるいは頭蓋内感染症の所見を呈し,interhemispheric subdural abscessの術前診断は容易でない.診断困難なまま脊髄疾患として処理され,不幸の転帰を辿るものも少なくなく,報告例の多くは手術または剖検により,初めて確診に至っていることからみても明らかである.本疾患の存在に考慮を払いつつ,痙攣,対麻痺などのfalx syndromeに加えて,感染症の病歴を示すものでは,脳血管撮影所見の読影に当り,その特徴的所見を見落さぬよう留意するならば,術前診断も可能と考えられる.
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