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総説
中枢けいれんの生化学的機構—とくに神経伝達物質に関係して
著者: 森昭胤1
所属機関: 1岡山大学脳代謝研究施設機能生化学
ページ範囲:P.923 - P.931
文献購入ページに移動けいれんの中枢神経系における発現機構の生化学的研究は,最初脳神経外科医とその共同研究者らによって緒についたように思われる.20-30年前,てんかんの外科的療法として,皮質焦点切除術が推奨された時期があったが,Canadaの Penfield博士によって,てんかん治療のために剔出された患者脳皮質焦点組織は,彼の共同研究者ら1,2)により分析され,焦点組織においてはacetylcholineや,Na+,K+の代謝異常が存在することを示唆するような重要な知見がえられていた.
わが国においても,陣内門下のわれわれにより,同様な研究が開始され,てんかん焦点組織にはChE活性の低下やアミノ酸含有量の異常があることが明らかにされた3,4,5).しかし,その後,焦点組織切除後の瘢痕が再び焦点となる例のあることや,定位脳手術によるけいれん伝導路の破壊術などが発達したことなどの理由により,特殊な場合を除いて,このような手術がほとんど行われなくなったけれども,種々の実験的けいれんモデル動物を使用して,けいれん発現機構に関する生化学的検索が精力的に続けられてきた.そのさい,これらの研究の原動力となったものは,最近における化学分析技術の進歩と,脳内代謝過程などの生化学的知見の集積であった.
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