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研究
くも膜下出血後の脳室拡大と髄液循環障害
著者: 東健一郎1 波多野光紀1 岡村知實1 山下哲男1
所属機関: 1山口大学脳神経外科
ページ範囲:P.1145 - P.1154
文献購入ページに移動くも膜下腔における出血が無菌性髄膜炎をひき起こし,その結果髄膜の肥厚・癒着を来すことは,Bagley2,3)によって1928年に初めて実験的,臨床的に認められたが,このような髄膜の反応は,当然くも膜下腔における髄液の循環を妨げ,交通性水頭症の原因となるもので,Krayenbuhl & Luthy19)によって1948年に初めてくも膜下出血(SAH)後の水頭症の発生が臨床的および病理学的に示されて以来,数多くの報告がなされている.一方Hakimら12),Adamsら1)によって正常髄液圧水頭症の概念が導入されて以来,SAH後の髄液循環障害の発生機序について,次第に関心が高まって来た.とくに最近になって,RI-cisternographyやinfusion manometric testによって髄液循環動態が形態的,機能的に把握できるようになり,さらにCTの開現によって,脳の形態をも含めて,髄液腔の検索が可能となったため,この方面の研究は長足の進歩を遂げた.このような新しい方法を駆使しての,髄液循環の病態生理の研究も数多くなされているが,SAHに続発する水頭症の診断と治療に際しては,実際上脳室の拡大と臨床症状の不一致や,検査所見と治療成績が一致しない場合も多い.
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