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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科7巻2号

1979年02月発行

雑誌目次

Validityについて

著者: 牧野博安

ページ範囲:P.103 - P.104

 このちょっと変った英語の単語をはじめて,聞いたのは,約3年前故順天堂大学の医学教育学の教授であった吉岡昭正先生からである.教育学者の間ではこの言葉を妥当性と訳している.このValidityという言葉は考えれば考える程英語らしくない何か東洋的な含みを持つ言葉でもある.
 この単語が最も教育学において使用されるのは,評価のときであって,例えば先に施行された日本脳神経外科学会の認定医試験の多肢選択問題について,その問題の一題一題について,その各々が妥当であったかどうかを考えるようなときにこのValidityという言葉を良く使用する.また自分が学生を教育しているときに,その教育の方法,そしてその評価の仕方を反省するときに,このValidityという言葉がでてくるのである.

総説

脳循環

著者: 永井肇

ページ範囲:P.105 - P.118

Ⅰ.はじめに
 古くから脳の血のめぐりと脳の働きとが,かなり関係が深いことが知られているが,どの程度血のめぐりが悪くなると働きに影響をおよぼすようになるかといった点については,最近になってもまだわからないことが多い.それは局所における脳血流を定量的にとらえて,脳機能と関連づける方法がなかったからである.以下脳血流測定法の発展のあらましを述べ,最近の主流をなす拡散性不活性放射性同位元素を用いた局所脳血流測定法について理論と実際を述べる.

Case Study

下垂体上皮性嚢腫の1例

著者: 斎藤義一 ,   中家康博 ,   高見政美

ページ範囲:P.119 - P.124

Ⅰ.はじめに
 下垂体嚢腫はGoldzicher10)(1913)の1剖検例報告にはじまり,Frazier9)(1934)の手術成功例も報じられ,以来その臨床的あるいは剖検的報告例も増加したが,なお稀なものである.即ち本邦報告例は最近まで皆無でありたが,昨年とさらに本年は本誌6巻5号にYoshidaら19),小林ら20)は本邦第1例としての本症1例の外科治療を報じ,われわれの症例は本邦第2例に当たるものであろう.
 さていわゆる鞍傍嚢腫性疾患の大部分は下垂体腺腫に合併する変性嚢腫で,一部頭蓋咽頭腫もみられるが,何れもそれぞれの腫瘍として診断,処置され特に問題はないが,本症即ち下垂体上皮嚢腫は稀であり,発生異常的なものか,腫瘍か否かなど,臨床的,病理学的問題をもつ,最近われわれも本症の1例を経験し,頭蓋咽頭腫の疑いで外科的治療を行なったので,報告すると共に考察をこころみる.

Current Topics

バイオレオロジーからみた血栓形成

著者: 新見英幸 ,   半田肇

ページ範囲:P.125 - P.130

Ⅰ.はじめに
 周知のように,血栓症は血管内腔を狭めたり,完全に閉塞したりして,脳や心などの主要臓器の機能を障害したりする.また,血栓症は,近年,臓器や代用血管の移植や体外循環の際に随伴する病変として重要視されている.
 血栓症の研究は古く,Virchow(1848年)まで溯ることができる.Virchowは血栓形成の因子として,(1)血管壁の状態,(2)血流の状態,(3)血液成分,をあげているが,これらは現在でも血栓形成の基本因子と考えられている1)

研究

内頸動脈後交通動脈分岐部動脈瘤の手術—213例の経験から

著者: 児玉南海雄 ,   甲州啓二 ,   峯浦一喜 ,   藤原悟 ,   鮱名勉 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.131 - P.138

Ⅰ.はじめに
 われわれは1975年9月までの14年間に嚢状脳動脈瘤直接手術1,000症例を経験した.就中,いわゆる内頸動脈後交通分岐部動脈瘤(以下ICPC-AN)は213例であり,これら症例の外科的治療に関し検討を試み,この部動脈瘤の手術要点につき考察を加え報告する.

脳動脈瘤直接手術後陰影残存例の検討

著者: 片倉隆一 ,   郭隆璫 ,   畑中光昭 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.139 - P.148

はじめに
 1961年より1975年9月までに東北大学脳神経外科では,嚢状脳動脈瘤直接手術1,000例を経験し,入院中死亡率は6.1%であった.この直接手術1,000例のうち多発性脳動脈瘤162例を除き,術後脳血管写を施行し,判定に耐えうる脳血管写の得られた症例は578例であった.この578例中動脈瘤陰影が多少とも残存していた41例について検討し若干の文献的考察を行ったので報告する.

脳疾患に対するβ-methasoneの大量療法

著者: 神保実 ,   川崎嶺夫 ,   杉森忠貫 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.149 - P.157

Ⅰ.はじめに
 脳浮腫の治療法の1つとしてのステロイドホルモンは脳神経外科の臨床に定着しており,その有効性を支持する報告は枚挙にいとまがない.しかしながら,一方では,ステロイドが無効であったとする実験的,臨床的報告も少なからずみられる.脳神経外科的な種々の病態のなかには,ステロイドが著効を示すものと余り効かないものとがあることは日常経験するところである11,19).また,ステロイドはvasogenic edemaには有効であるが,cytotoxic edemaには効かないとも云われる15,16)
 しかし,日常臨床で遭遇する脳浮腫はほとんどvasogenicであり,主た脳浮腫は本来脳の非特異的な反応でほとんど大部分の脳神経外科疾患にみられるから,もしステロイドが脳浮腫に有効であるなら,ほとんどの脳神経外科的疾患に対して,程度の差はあれ有効なはずである.しかるに,各疾患によってステロイドの有効性に差があるということには何らかの原因があると考えられる.

血管攣縮に続発する脳動脈閉塞

著者: 金弘 ,   水上公宏 ,   河瀬斌 ,   荒木五郎

ページ範囲:P.159 - P.165

Ⅰ.緒言
 脳動脈瘤破裂後急性期ないし亜急性期に行われた連続脳血管撮影像を詳細に検討すると,脳血管攣縮のみならずそれに伴う明らかな脳動脈閉塞所見が認められることがある.従来,この現象について系統的に述べた報告はない.本報告の目的は,この脳動脈閉塞現象の病態と臨床的意義を明らかにすることにある.

症例

Hydranencephalyの1例—その脳血管撮影像とCT像の検討

著者: 門田紘輝 ,   笹平正廣 ,   上津原甲一 ,   朝倉哲彦

ページ範囲:P.167 - P.173

Ⅰ.緒言
 頭囲拡大を呈する乳幼児の水頭症性病態の中で,頭蓋骨・硬膜は存在するが,脳外套部を欠き,髄液の高度に貯留するものは,hydranencephalyと呼ばれている.この病態は1835年Cruveilhierがanencephaly hydrocephaliqueの名称で初めて記載し,その後Kluge(1902年)7)がhydranencephalyと改称し,現在広く認められている名称である.
 従来,本症の剖検例は数多く報告1,6,12)されているが,その生存時の脳血管撮影像についての報告10,14,18)は対象が乳幼児であるためか,あるいは長期生存例の少ないためか,比較的少ない.われわれは,最近hydranencephalyの1例を経験し,その脳血管撮影像を得ることができ,さらに,近年開発されたcomputerized axial tomographyで解析する機会を得た.そこでhydranencephalyの形態的特徴を脳血管撮影像ならびにCTスキャン像の面から検討して報告する.

全脳室壁へ播種したgerminomaの1例

著者: 鬼頭健一 ,   川崎嶺夫 ,   加川瑞夫 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.175 - P.180

Ⅰ.はじめに
 松果体部あるいはトルコ鞍近傍から発生するgerminoma(いわゆるtwo-cell pattern pinealoma)は,第3脳室,脊髄くも膜下腔へしばしば播種転移するが,全脳室系へびまん性に播種することはあまりない.われわれが調べた範囲ではいままでに37例報告されているが,これらのほとんどが剖検により初めて全脳室壁への播種が確認されたものである.今回われわれは,生前,臨床経過および臨床検査によって,鞍上部から発生したと思われるgerminomaの全脳室壁への播種浸潤を診断し得た症例を経験したので報告する.

蝶形骨洞に発生し鼻腔に進展した頭蓋咽頭腫の1例

著者: 藤谷健 ,   白馬明 ,   児島駿 ,   三島泰彦 ,   辻本壮 ,   西村周郎

ページ範囲:P.181 - P.186

Ⅰ.はじめに
 頭蓋咽頭腫は,胎生期にみられる頭蓋咽頭管の扁平上皮の遺残より発生する腫瘍と考えられており,その経路である鼻咽頭後部より第3脳室底部に至るいずれの部位からでも発生しうるものである6).しかし,この腫瘍の大部分はトルコ鞍上部にみられ,時にはトルコ鞍内に発生するが,トルコ鞍下部の蝶形骨洞や鼻咽頭部に発生したり,あるいはトルコ鞍内に発生した腫瘍が下方に進展することは稀である.今回,著者らは蝶形骨洞に発生し,節骨洞を破壊して鼻腔および一側眼窩へと進展した頭蓋咽頭腫の1症例を経験し,sublabial rhinoseptalとtransantral approachの合併法により腫瘍の全摘出を行い治癒せしめたので報告する.

頸動脈海綿静脈洞瘻の自然治癒例

著者: 向後雄大 ,   古和田正悦 ,   門間文行 ,   菊地顕次 ,   玉川芳春

ページ範囲:P.187 - P.190

Ⅰ.はじめに
 頸動脈海綿静脈洞瘻(c-c fistula)の自然治癒率は,従来,臨床症状や剖検所見から,ほぼ10%1,6,8)と推定されているが,脳血管撮影で確認された報告は,意外な程少数であり,筆者らの渉猟した限りでは,10例にも満たない.
 最近,右大脳動脈瘤を伴ったc-c fistulaの自然治癒例を経験し,前後4回の脳血管連続拡大撮影で追跡検討したので,主に脳血管撮影で確認されたc-c fistulaの自然治癒例について,若干の文献的考察を行い報告する.

脳結核腫の1例

著者: 新村富士夫 ,   榊原常録 ,   高安研治 ,   高木偉 ,   里和スミエ

ページ範囲:P.191 - P.195

Ⅰ.はじめに
 近年,脳結核腫は抗結核剤と環境予防衛生との進歩によりきわめて少なくなった.最近,われわれは27歳の女子で急性肋膜炎の治療2カ月後顔面痙攣発作で初発し脳波,頭部CTスキャン,RI脳スキャンなどで脳内腫瘤病変を認め,手術で全摘出したところ脳結核腫と判明し,抗結核剤,ガンマーベニン,ステロイドなどで良好な結果を得たので若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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