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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科7巻3号

1979年03月発行

雑誌目次

医学教育について

著者: 中沢省三

ページ範囲:P.201 - P.202

 医学教育というのは,はなはだむずかしいものだとつくづく思うことがある.これは私のみならず,医学教育にたずさわる者の誰もが痛切に感じていることではなかろうか.
 医学教育といっても,学生教育から卒後教育,専門医教育,更には看護婦,技術者の教育等数多くのレベルのものが含まれることになるが,これらの中で最も頭を悩ますのが医学部学生の教育である.

総説

脳動脈瘤手術のpitfalls

著者: 鈴木二郎 ,   児玉南海雄

ページ範囲:P.203 - P.210

はじめに
 われわれは,1961年6月より1975年9月の間に1,116例の各種脳動脈瘤を経験し,そのうち嚢状脳動脈瘤は1,080例であり,その1,000例について動脈瘤の直接手術を行ない,すでに各方面より検討し発表してきた1-8,11,12,14)
 しかし,嚢状動脈瘤といっても,年齢,部位,発育方向,大きさ,流入流出動脈,動脈硬化,癒着の程度,動脈瘤壁自身の問題,手術時期,くも膜下出血,および脳内出血の部位ならびに量,手術接近法,術後管理などが症例あるいは術者によってそれぞれ異なっており,総論的に脳動脈瘤の直接手術について述べることは極めて困難である.今回は,著者の経験した約1,400例に近い動脈瘤の直接手術の経験から,その失敗例を思いおこし,手術の順序に従って脳動脈瘤手術のpitfallsについて述べるが,他山の石となれば望外の喜びである.

Case Study

松果体部奇形腫の1例

著者: 谷栄一 ,   森村達夫 ,   飴谷敏男

ページ範囲:P.211 - P.218

 患者:3歳男児
 主訴:半昏睡

Current Topics

133Xe inhalation cerebrography

著者: 加川瑞夫 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.219 - P.226

Ⅰ.緒言
 近年ヒト局所脳血流量(rCBF)は,主として拡散性同位元素を用い,脳血管,脳組織からの洗い出し曲線(クリアランスカーブ)を測定することにより求める方式が一般化している.
 放射性同位元素の被験者への投与の方法としては1)内頸動脈注入(intracarotid injection)法,2)静脈注入(intravenous injection)法,3)吸入(inhalation)法がある.

研究

老年者嚢状脳動脈瘤の手術

著者: 畑中光昭 ,   児玉南海雄 ,   桜井芳明 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.229 - P.232

Ⅰ.はじめに
 老年者の脳動脈瘤手術に関する報告1,2,4)は散見されるが,特に手術手技上の問題につき詳述している報告は見当らない.本稿では,われわれがこれまで経験した70歳以上の手術症例につき検討し,老人における脳動脈瘤の手術手技の要点について報告する.

Carotid-Ophthalmic Aneurysmsの手術

著者: 峯浦一喜 ,   児玉南海雄 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.233 - P.237

Ⅰ.はじめに
 内頸動脈眼動脈分岐部動脈瘤(以下OPH-AN)に対する直接手術は,その解剖学的位置関係から困難なものが多く,これまでの報告1,2,3,8,13,14,16)をみても満足すべき成績を得るには至っていない.われわれは,これまで6例のこの部動脈瘤直接手術症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

脳腫瘍嚢胞液の免疫化学的検討

著者: 鬼頭健一 ,   清水隆 ,   窪田惺 ,   山崎直美 ,   高橋研二 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.239 - P.247

Ⅰ.はじめに
 脳腫瘍は周知のようにしばしば嚢胞(cyst)を形成するが,これは他臓器の腫瘍と異なった脳腫瘍の1つの特徴である.しかしながら嚢胞形成の機序についてはまだ一定の見解がなく,嚢胞液(cyst fluid)の免疫化学的な分析もほとんど行なわれていない.
 今回著者らは,嚢胞を形成した脳腫瘍患者の術前血清と手術時に得られた嚢胞液について,それぞれ免疫電気泳動,免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM),β1c/1Aglobuiin,haptoglobinの定量を行ない,また患者自己血清と嚢胞液を用いて免疫粘着反応(immune adherence)を施行したので,その結果を報告するとともに,特にgliomaの嚢胞形成および嚢胞液のいわゆる Froin徴候の機序について著者らの推論を述べてみたい.

正常圧水頭症に対するシャント手術—とくに手術適応とanti-siphon valve使用について

著者: 久間祥多 ,   増田肇 ,   朴信史 ,   藤野英世 ,   山口和郎 ,   桑原武夫

ページ範囲:P.249 - P.255

Ⅰ.はじめに
 1965年にHakim and Adams1)により報告された正常圧水頭症の症状は,健忘,自発性低下および歩行不安定を特徴とする進行性の痴呆である.病態が進行すれば,無言無動症,両側の錐体路,錐体外路症状が出現する.髄液圧は200mmH2O以下で,気脳写では脳室の拡大があり,空気が脳表のくも膜下腔を上行しない.上記の症候はシャント手術を施行して髄液を頭蓋外へ導くことによりいちじるしく改善されるのが特徴的である.神奈川県総合リハビリテーションセンター(以後,センターと略す)を中心に,最近4年間に正常圧水頭症と診断された17例に18回のシャント手術を行なった,このうちの12例にはanti-siphon valve(ASV)を使用した.全例の手術成績についてのべ,その中の改善例のうちの2例の経過を詳細に報告し,本症に対する手術適応について考察したい.

症例

硬膜動静脈奇形—完全摘出を行った1例と文献的考察

著者: 清水恵司 ,   奥謙 ,   呉淳東 ,   早川徹 ,   生塩之敬

ページ範囲:P.257 - P.263

Ⅰ.はじめに
 硬膜動静脈奇形は,Newton(1968)15)が16例の症例をまとめてdural arteriovenous malformation of the posterior fossaとして報告したごとく,後頭蓋窩に生じることが多く,内頸動脈天幕枝および硬膜枝,外頸動脈の分枝である後頭動脈,ascending Pharyngeal arteryの硬膜枝および中硬膜動脈のPosterior branch,そして椎骨動脈の硬膜枝等を流入動脈とし,横静脈洞あるいはS字状静脈洞等に流出する一連の動静脈奇形である.この様なdural arteriovenous malformation(以下dural AVMと略す)は,症状,治療,血流動態の面で脳実質内動静脈奇形とは明らかに区別すべき疾患である.
 近年,このdural AVMに対して色々な手術が行なわれ,多数の報告がみられる様になったが再発することが多かった.最近著者らは両側横静脈洞,直静脈洞および上矢状静脈洞を閉塞するdural AVMを経験し,閉塞された静脈洞交会および両側横静脈洞を含めてdural AVMを全摘しえたので報告する.

縊死未遂による頸部内頸動脈閉塞症の1例

著者: 大西俊輝 ,   滝本昇 ,   尾藤昭二

ページ範囲:P.265 - P.269

Ⅰ.はじめに
 鈍的外力による内頸動脈閉塞症は,1872年Verneuil29)が報告した鉄道事故による症例以来,現在まで200例近い症例が報告されている.多くは交通外傷を代表とする様々な不慮の事故によるものである.今回著者らが経験した症例は,縊死を企て未遂に終った後に出現した例で,頸部索条痕(縊痕)に一致する頸部内頸動脈閉塞症である.縊死に際し頸動脈閉塞を認められた報告例は極めて少なく,1944年のNorthcroft20)の報告からでもわずか数例にすぎない4,22).本症例は未遂に終ったがため,神経学的異常所見を呈し,このため内頸動脈壁の損傷を発見された極めて特殊な例である.一般に縊死に際しては,窒息現象が主に観察されており,頸動脈閉塞による脳循環障害のもたらす影響は軽視されている5,6,28).この点,本症例は多くの示唆を与えるため,若干の文献的考察を加え,ここに報告する.

斜台軟骨腫の1手術例

著者: 菊地顕次 ,   古和田正悦 ,   門間文行 ,   力丸庄蔵 ,   玉川芳春

ページ範囲:P.271 - P.276

Ⅰ.はじめに
 通常,軟骨腫は長管骨,特に四肢末端の指趾骨に多発性に発生するが,稀ながらその部分症として頭蓋内にも発生し,その頻度は全頭蓋内腫瘍の0.1-0.2%5,11,43)といわれる.わが国では,所41)(1959年)の報告を初めとして現在まで24例3,15,20,21,23,29,30,31)が報告されている.
 最近,多発性軟骨腫の部分症として発症した斜台軟骨腫の手術例を経験したので,若干の文献的考察を行ない報告する.

頭蓋内cavernous hemangioma—脳室内発育の1症例を中心として

著者: 難波真平 ,   石光宏 ,   仲宗根進

ページ範囲:P.277 - P.283

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内cavernous hemangioma(CH)は臨床上比較的稀な疾患であるが,その多くは脳実質内あるいは中頭蓋窩の脳外に発生し,脳室内発生はきわめて稀である9,13,18,20,24,30,33,34).また本症は,血管腫(本症は真の腫瘍ではないが,動静脈奇形と区別するため,血管奇形という言葉を用いず,本論文では血管腫と称する)でありながら,脳血管撮影上,それ自体のいわゆる"vascularstain"を呈することは稀であり,avascular areaを有するspace taking massとしての所見を呈することが特徴であると報告されている9,13,18,22,24,30,34)
 最近われわれは,くも膜下出血の発作で発症し,脳神経外科的検査および手術の結果,右側脳室体部を中心とする4×3×3cm程度の大きなCHであることが判明した1症例を経験したので,この症例を中心として頭蓋内CH,ことに脳室内に発育した本症の臨床的特徴などについて検討を加えた.

広汎な頭蓋骨欠損のみられたvon Recklinghausen病の1例

著者: 藤井徹 ,   前川潔 ,   栗山剛 ,   西口孝 ,   石井享

ページ範囲:P.285 - P.290

Ⅰ.緒言
 von Recklinghausen病にみられる骨異常は珍しくない.しかし頭蓋骨の異常は比較的稀である.頭蓋骨の異常としては主として蝶形骨の欠損であり,次いで後頭部頭蓋縫合に一致してみられる骨欠損である.その他の部位についての欠損は非常に稀である.われわれは頭蓋骨の種々な部位に骨欠損があり,しかも部分的に広範な骨欠損のみられた興味あるvon Recklinghausen病の1例を経験した.さらに経時的に4年間にわたって観察し,骨欠損の拡大進行している部位を確認しえた.最近CTscanによりこの拡大部位に一致してhigh density areaがみとめられ,手術を施行,組織学的にも同部位のneurofibromaを証明した,本症例では,一次性と二次性の骨変化が考えられた.ここに本症例を報告し,文献的に考察をおこなう.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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