icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科7巻4号

1979年04月発行

雑誌目次

手術到達法の選択

著者: 佐藤修

ページ範囲:P.297 - P.298

 1957年8月,KurzeがHouse(耳鼻科医)と共に,内耳道内の聴神経鞘腫をmicrosurgeryで初めて摘出してからもう21年が経過した.また,わが国で,脳神経外科医によるmicrosurgeryが行なわれるようになって,今年は10年目を迎える,この間に,microsurgeryを利用した新しい手術方法,手術到達法がいろいろ開発され,脳神経外科の手術の進歩の面で果してきたmicrosurgeryの重要性は今さらあらためて述べる必要もないであろう.
 しかし反面,microsurgeryが普及して,いろいろの手術到達法が開発されたために,若い脳神経外科医にとって,手術到達法を選択するに当たり,いささかの迷いを抱くことがあるのではないかという懸念もある.春を迎え,これから自分が術者として十分腕を振えることに張切っている若い脳神経外科医に,手術到達法の選択という点で,若輩ながら,助言を述べたい.

総説

Functioning Pituitary Adenoma

著者: 米増祐吉

ページ範囲:P.299 - P.309

はじめに
 下垂体腺腫とホルモン過剰分泌症状の関連は1887年Minkowskiが末端肥大症について報告したのが最初で,下垂体腺腫の手術の最初の試みも1893年に末端肥大症の治療を目的としてCatonとPaulにより行われたということから分かるように63),下垂体腺腫にホルモン分泌機能があることは古くから知られていたことである.
 Cushingは1930年代にすでに360例の下垂体腺腫を経験し,内分泌症状にも注目した.とくに塩基好性腺腫による副腎皮質ホルモン過剰状態を報告し8),現在でもCushing病と呼ばれている.

Case Study

反復する転移性脳腫瘍の外科治療—Alveolar soft-part sarcomaの1例

著者: 池田卓也 ,   最上平太郎

ページ範囲:P.311 - P.318

Ⅰ.症例
 患者:21歳 女 外国語大学4年生
 主訴:頭痛,嘔気,嘔吐,視野障害

Current Topics

脳腫瘍ウイルスの具象と抽象

著者: 日沼頼夫

ページ範囲:P.319 - P.320

 かつて脳腫瘍の病因にウイルスを擬することは幻想としかいいようがなかった.ひそかに,しかしおびただしい脳腫瘍切片が電子顕微鏡下で観察されたにちがいない.しかしそれは幻滅のはずであった.何故ならば,現代ウイルス学は,ウイルス感染によって正常細胞が腫瘍化することを実証したあげく,その腫瘍化細胞内にはウイルス粒子の形態は認識し得ないことを証明したからである.そして存在するものはそのウイルスの遺伝子とそれによってコードされた一部のウイルス蛋白のみであるという原則を示した.そしてヒトを含めた動物の腫瘍の少くとも一部は,腫瘍ウイルスによって発生することが明らかにされている.
 われわれは新しい鋭敏な生化学的,免疫学的方法を手にしている.そしてこれらの武器をもってする狩猟の対象には当然ヒト脳腫瘍が含まれてくる.

研究

椎骨脳底動脈瘤の手術

著者: 児玉南海雄 ,   神山和世 ,   峯浦一喜 ,   藤原悟 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.321 - P.329

Ⅰ.はじめに
 最も難かしいといわれている椎骨脳底動脈瘤の直接手術は,その歴史も約30年と比較的新しく,この間諸家により麻酔方法,手術適応およびその拡大法,接近方法,手術手技等,種々論議され,手術成績も向上しつつある.われわれは,これまでこの部の単発性動脈瘤23例を経験しているが,本稿ではこれら症例の外科的治療に関し検討を試み,特に手術の要点につき報告する.

CT再構成法による前額,矢状面像の有用性—下垂体部病変の診断

著者: 塚本泰 ,   永宗明仁 ,   近藤達也 ,   吉益倫夫 ,   吉岡真澄 ,   藤井恭一

ページ範囲:P.331 - P.337

Ⅰ.はじめに
 コンピュータ処理によるX線軸位横断々層装置(以下CT scan)は1972年イギリスで開発されて以来頭蓋内疾患,特に脳腫瘍の診断に画期的な進歩をもたらし,またこの検査の侵襲の少なさを考えると患者にとって大きな恩恵をもたらしたことは言を待たない.
 しかし多くのCTスキャン装置は主として脳横断面撮影法(transverse tomography)を中心に開発されたため,頭蓋骨その他の構造の入りくんでいる頭蓋底部の診断には不向きであった11),この短所を克服するため,頭位を変えて前額面像を得る方法9,10,13,15),髄液腔に陽性造影剤を注入する方法4)等が試みられている。われわれは横断面像の再構成により前額面,矢状面像を得,診断の助けとしておりこの方法による頭蓋底部とくに鞍近傍腫瘍の描出能につき検討する.

末端肥大症例における脳血管径の測定

著者: 蟹江規雄 ,   桑山明夫 ,   高野橋正好 ,   中根藤七 ,   景山直樹

ページ範囲:P.339 - P.343

Ⅰ.緒言
 末端肥大症は成長ホルモンの分泌が過剰になることにより起こる疾患である.本症の病像は古くより記載されて,最近においては下垂体障害調査研究班の二次調査の集計成績1)が発表されている.それによると手足の容積の増大,末端肥大症顔貌,心肥大,巨大舌,その他があげられている.成長ホルモンの大きな特徴は標的器官を有しないことである.成長ホルモンの作用は多岐にわたり,第一にprotein anabolic effectにより細胞容積および細胞数の増加をきたし,筋肉,骨格,内臓の増大発育を促す.
 Warembourgら9)は末端肥大症で両側股動脈の著明な拡大dolichomega動脈を認め,それが下垂体腺腫に起因するものと考えた.Hatam and Greitzら6)は末端肥大症においては脳血管の拡張が認められると報告している.われわれも日常,当教室にて経験する本症例において脳血管径の拡張している印象をもっており,今回個々の症例の血管径を測定し正常例における血管径と比較検討し拡張の有無を調べてみた.またあわせて本症例の血管径と成長ホルモン基礎値,heel-pad thickness,病歴期間等の相関関係を調べ若干の興味ある知見を得たので報告する.

テント下腫瘍におけるTranstentorial Upward Herniationの臨床とレ線所見

著者: 阿部俊昭

ページ範囲:P.345 - P.354

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内に腫瘍,膿瘍,血腫などの占拠性病変が生ずると頭蓋内の内容が増加し,圧が亢進する.そしてテント上下に圧差が生ずると,テント切痕を境として脳嵌頓が発生する.
 脳嵌頓のうち臨床上最も重要なのは,Meyer(1920)15)が報告したtranstentorial downward herniationであり,その臨床的意義およびレ線所見に関しては多くの報告がある2,3,9,10,16,24).一方後頭蓋窩に占拠性病変が生じ後頭蓋窩の圧が高まると,小脳および脳幹が上方に突出する,いわゆるtranstentorial upward herniationを生ずることがあり,さらにこのherniationは減圧を目的とした脳室穿刺にて増強し,患者は急速に重篤な状態に陥ることがある.この様なtranstentorial upward herniationがテント下腫瘍にて発生することは,Cairns(1937)5),Rapoport(1938)3),LeBeau(1938)13)らが指摘し,Ecker(1948)7)はこれを"Inverted Tentorial Pressure Cone"と呼び,大部分のテント下腫瘍に認められると報告している.

Granulocytic sarcomaの電子顕微鏡学的考察

著者: 河本圭司 ,   平野朝雄 ,   ,   鈴木大和

ページ範囲:P.355 - P.361

Ⅰ.はじめに
 白血病に起因して,中枢神経系に種々の病変が認められることはよく知られている13,14,25,27),この白血病に際して合併する異形として,Solidで浸潤性を有する腫瘍,granulocytic sarcomaを形成することがあるが,この腫瘍がmass effectを中枢神経系におよぼすことはまれである.われわれは術前,髄膜腫および硬膜外腫瘍を疑われた2例のgranulocytic sarcomaを経験した.日本における中枢神経系のgranulocytic sarcoma形成の報告は,著者の知る限りみられないので,電顕的検索を加えて報告する.

小児軽症頭部外傷と嘔吐

著者: 山本豊城 ,   長田裕 ,   佐藤慎一 ,   田中清明 ,   伴貞彦 ,   長久雅博 ,   尾形誠宏

ページ範囲:P.363 - P.369

Ⅰ.はじめに
 幼小児の軽症頭部外傷患者で,外傷後早期に,反復性の嘔吐と傾眠がみられることはよく経験するところである.
 頭部外傷後間もなく,患児が傾眠状態となり,顔面蒼白と嘔吐が出現すると,患児の両親は,外傷性頭蓋内血腫を心配し,急患として病院を受診することが少なくない.ところが,これらの症例のうちの大多数は,臨床所見と補助診断法によって外傷性頭蓋内血腫の存在は否定され,輸液をおこなうと,嘔吐は急速に消失し,翌日には患児は元気になり,神経症状を残すことはない.

症例

開心術後に発生したMycotic Aneurysmの1例

著者: 西村敏彦 ,   青木信彦 ,   有賀徹 ,   橋本勲 ,   今永浩寿 ,   久保田勝 ,   谷島健生 ,   水谷弘

ページ範囲:P.371 - P.375

Ⅰ.はじめに
 1885年OslerがBacterial endocarditisに基づく動脈瘤をMycotic aneurysmと命名12)して以来,幾多の報告が見られる.その多くは抗生剤の普及以前のものであり,抗生剤が用いられるようになってからは比較的稀である.Binghamによる集計では英語文献上45例3),本邦でも我々の調べえた範囲では本症例を含め14例の報告5,14,16)をみるに過ぎない.
 最近,われわれは先天性心疾患に対する開心術後,くも膜下出血を来たし,脳血管撮影で,左A1 segmentと左中大脳動脈のascending frontoparietal arteryのinsular portionに細菌性動脈瘤を認めた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

中大脳動脈閉塞を初発症状とした脳腫瘍の1例

著者: 岸川秀実 ,   岩槻清 ,   梅田昭正

ページ範囲:P.377 - P.382

I.はじめに
 診断上,脳血管障害と脳腫瘍とは,しばしば類似の症状を是するため誤診する場合が少なくない.その多くは,急激に発症する脳血管障害,特に脳卒中症状を呈する場合が多いようである.
 大脳動脈の閉塞は,種々の原因によって起ることが知られているが8,12,13),脳腫瘍によって二次的に閉塞をきたす場合は,稀である.

小児原発性橋出血の1生存例

著者: 佐古和廣 ,   森若文雄 ,   岸原隆 ,   中川翼 ,   田代邦雄 ,   阿部弘

ページ範囲:P.383 - P.387

Ⅰ.はじめに
 小児の原発性橋出血は非常にまれなものであり,生前診断は困難とされていた.しかし注意深い神経学的観察とCT scanの導入によりその生前診断が可能となってきた.今回われわれは,14歳女子に発症した原発性橋出血を経験したのでここに報告する.

髄液腔と交通せるpre-sacral epidermoid cyst

著者: 中村三郎 ,   片桐丈之 ,   馬島瑩郷 ,   若松健一 ,   坪川孝志 ,   森安信雄

ページ範囲:P.389 - P.395

Ⅰ.はじめに
 中枢神経系における類上皮腫は全脳腫瘍の0.2-1%を占める6,8,14).本邦においても山村16)の症例以来多くの報告がみられ5,8,10,11,12),現在ではもはや稀れな腫瘍とはいえない.また,中枢神経系における全類上皮腫および類皮腫のおよそ1/4が脊椎管に発生すると報告されている15).この脊椎管に発生する類上皮腫および類皮腫には,先天性皮膚洞やpilonidal sinusを合併するもの主たは脊椎破裂を合併する例7)がしばしば報告されているが,いずれも嚢腫は脊椎管内に在って,脊髄の圧迫障害主たは馬尾の障害による症状を呈するものである.さらに,合併する皮膚洞やpilonidal sinusから感染して髄膜炎が発症した症例も報告されている2)
 われわれは,仙骨の前方に位置した類上皮腫が髄液腔と交通し,髄膜炎の発症によって発児された稀有な症例を経験したので報告する.

フロントガラス片による脳損傷—脳損傷3例の検討

著者: 井須豊彦 ,   阿部弘 ,   会田敏光 ,   岩隈勉

ページ範囲:P.397 - P.401

Ⅰ.はじめに
 国産自動車の大半のフロントガラスに使用されている強化ガラスが,交通事故の際,重篤な顔面外傷を引き起こすことが,近年,形成外科,眼科領域より報告され,その危険性に対し警告がなされている1-4,6-9,11).しかし,強化ガラス片による脳損傷に関しての報告は少ない8,12).今回,われわれは,強化ガラス片による脳損傷3症例を経験したので症例を報告すると共に種々の問題点につき言及したい.
 なお,同じく強化ガラス片による脊髄損傷の1症例をすでに本誌第5巻第6号にて掲載している5)が,今回は,脳損傷について報告する.

小児小脳動静脈奇形よりの出血—その1救命例

著者: 越野兼太郎 ,   大西俊輝 ,   近藤孝 ,   生塩之敬 ,   寒川昌明

ページ範囲:P.403 - P.408

Ⅰ.はじめに
 後頭蓋窩の動静脈奇形は頭蓋内動静脈奇形の5-15%にすぎないと言われており,先天的疾患と考えられているにもかかわらず,10歳以下の小児において発症することは極めて少なく,6歳以下ともなれば稀有である.後頭蓋窩動静脈奇形が出血によって発症した場合,多くは急速に死の道をたどるかまたは比較的長い経過をとって水頭症の症状を示してくる.
 著者らは出血によって発症し,急激な経過をとったにもかかわらず,的確な診断と治療により救命し,何ら神経症状を残すことなく復学し得た6歳の小脳動静脈奇形の1例を経験したので報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら