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脳保護物質
著者: 浅野孝雄1 佐野圭司1
所属機関: 1東京大学脳神経外科
ページ範囲:P.549 - P.554
文献購入ページに移動Ⅰ.はじめに
脳乏血(cerebral ischemia)は,脳虚血発作(TIAs),脳梗塞等に限らず脳出血,脳外傷,腫瘍等の占拠性病変による頭蓋内圧亢進など,多くの脳組織障害において重要な役割りを果たすと考えられている.従って脳乏血は脳神経外科で治療するほとんどすべての疾患において極めて普遍的な病態であり,それによる組織障害の発生機序を解明することは,有効な治療法を開発する上できわめて大きな意義を有する.現在脳乏血に対して,外科的な血行再建術,脳循環改善を目的とした各種の薬剤の投与などが行なわれている.しかしそのいずれをとってみても,十分な成果を上げていないことは衆知の事実であり,さらに脳乏血急性期における急激な血行再開が技術的に可能であったとしても,それが果して期待された治療効果をもつか否かは,現在もなお疑問視されている.このような脳乏血に対する治療法の現状に対応して,脳乏血による組織障害の発生機序の解明を目的とする基礎的な研究が広汎な分野で積み重ねられてきた.この小論文では,最近注目されつつあるBarbituratesの脳保護作用(cerebral protection)に焦点をしぼり,その作用機序,臨床応用の可能性,また類似の効果をもつ他の薬剤との比較等について以下に論じたい.
脳乏血(cerebral ischemia)は,脳虚血発作(TIAs),脳梗塞等に限らず脳出血,脳外傷,腫瘍等の占拠性病変による頭蓋内圧亢進など,多くの脳組織障害において重要な役割りを果たすと考えられている.従って脳乏血は脳神経外科で治療するほとんどすべての疾患において極めて普遍的な病態であり,それによる組織障害の発生機序を解明することは,有効な治療法を開発する上できわめて大きな意義を有する.現在脳乏血に対して,外科的な血行再建術,脳循環改善を目的とした各種の薬剤の投与などが行なわれている.しかしそのいずれをとってみても,十分な成果を上げていないことは衆知の事実であり,さらに脳乏血急性期における急激な血行再開が技術的に可能であったとしても,それが果して期待された治療効果をもつか否かは,現在もなお疑問視されている.このような脳乏血に対する治療法の現状に対応して,脳乏血による組織障害の発生機序の解明を目的とする基礎的な研究が広汎な分野で積み重ねられてきた.この小論文では,最近注目されつつあるBarbituratesの脳保護作用(cerebral protection)に焦点をしぼり,その作用機序,臨床応用の可能性,また類似の効果をもつ他の薬剤との比較等について以下に論じたい.
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