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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科7巻9号

1979年09月発行

雑誌目次

患者への話し方について

著者: 角家暁

ページ範囲:P.825 - P.826

 さき頃,「週刊朝日」に"私の文章修業"という題目で,文筆で名をなしている人人の文章に対するいろいろな考え方,文章作法といったことが連載されていた.この中で特に印象にのこったのは,音楽評論家の吉田秀和氏の話であった.
 臨床の悩みを洗い流し,新しい活力を注ぎこんでくれる素晴しい演奏に感動しても,一瞬の間に空間から空間へと過ぎ去ってゆくが,氏の文章により,この感動が更に深く押し広げられ,明確な分析のもとに,絵を見るような解り易い言葉で描写されるのをみると,このような表現力はどのようにして会得されるのかといつも不思議に思い,手の届かぬもののように考えてきた.この疑問に答えるごとく,氏は評論家を志した時,聴いたものを正確に文章にする力を養うために,極めて短時間に経過する相撲の勝負をなるべく詳しく,ポイントをおさえて正確に記述する練習をくり返し,勝負のなかにある感動の手応えを適確に言いあてるよう努力してきたと書いておられる.

総説

小脳の生理学

著者: 伊藤正男

ページ範囲:P.827 - P.833

はじめに
 近年における小脳の生理学の進歩には著しいものがあるが,その知見を臨床的ないろいろの問題に結びつけようとするとなかなか簡単には行かないことが多い.その大きな理由として,生理と臨床の両者が小脳を見る時の観点の違いをあげることができる.生理学では小脳を大よそ次の3つの観点から考えるが,これらの各観点が臨床の問題に対してもつ意味は同じではない.

Case Study

特異な頭蓋変形と一側眼球突出を伴ったvon Recklinghausen病の1例

著者: 堀浩 ,   宮本誠司 ,   京井喜久男 ,   角田茂 ,   内海庄三郎

ページ範囲:P.835 - P.840

Ⅰ.はじめに
 von Recklinghausen病(以下R病と略す)は臨床上,しばしば経験する疾患であるが,時に骨にも変化をきたすことが古くから知られている.こうした骨変化は頭蓋骨にも起こってくるが,比較的まれであるとされている.そのうちでも特異型というべき一側の眼窩壁の欠損を伴って出現する拍動性眼球突出と前頭側頭部の骨欠損による同部膨隆については,欧米では従来かなりの報告がみられるが,本邦での報告はきわめてまれである.私共は特異な頭蓋変形を伴い,同側非拍動性眼球突出を呈したR病の1例を示し,その特徴的なレ線像,手術所見とともに,文献的老察を加えて検討する.

Current Topics

CTスキャナの解像力—最近の進歩と問題点

著者: 松井孝嘉

ページ範囲:P.841 - P.846

はじめに 1970年初頭の実用的CTスキャナの開発以来,CTスキャナの進歩は日進月歩であり,筆者も,初期のCTスキャナ開発を行っていたが,当時を振り返ってみるとわずか6,7年の間に,隔世の感がある.CTの画像は見違えるほど良くなり,初期の頃,驚異の目で見られていたCTスキャナは,すでに過去のものとなり,製造中止となったスキャナの数も多い.
 それでは,CTスキャナのどの部分が,どのように変わったのか.たとえば,コンピューターをフルに使って即座に而積を求めたり,ある部分の平均X線吸収度値を求めたり,という使い易さの面での改良や,検査時間が約4分であったものが,今では数秒,最も早いものでは1秒まで,さらに,米国では1/20秒のスキャナさえ開発されている.その他,画像の精度も,見違えるばかりに良くなっている.

研究

内頸動脈瘤にみられる動眼神経麻痺の推移について

著者: 山崎駿 ,   玉木紀彦 ,   松本悟

ページ範囲:P.847 - P.851

Ⅰ.はじめに
 内頸動脈瘤において出現頻度の高い局所症状の1つに動眼神経麻痺がある.脳動脈瘤に対してmicrosurgeryの技術が導入されて以来,その手術成績は飛躍的に向上しつつあるが,動眼神経麻痺の術前・術後の推移について観察した報告は意外に少ない.今回は自験例の検討を若干の文献的考察と合せて報告する.

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後に認められる外頸動脈領域の血管収縮

著者: 遠藤俊郎 ,   新海準二 ,   岡田仁 ,   園部真 ,   堀重昭 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.853 - P.857

Ⅰ.はじめに
 脳動脈瘤破裂後頭蓋内脳血管にはしばしば攣縮の出現を認めるが,同様の変化が頭蓋外動脈にも起こるか否かの問題に関しての報告は,著者らの知るかぎりでは認められない.
 最近我々は,内頸動脈後交通動脈分岐部動脈瘤破裂33時間後に頭蓋内根治術を施行,6日後に頭蓋内のみならず外頸動脈領域におよぶ広汎な血管収縮をきたした1例を経験したので,この点に着眼し,類似症例の検討を行った.今回はこの脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後に見られる外頸動脈領域の血管収縮について得られた知見を報告する.

Mannitolの脳梗塞巣発現抑制効果—電顕的研究

著者: 渡辺孝男 ,   吉本高志 ,   小川彰 ,   坂本哲也 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.859 - P.866

Ⅰ.はじめに
 われわれは,独自に開発した,脳梗塞の実験モデルである視床梗塞犬を用いて,mannitolの脳梗塞の発現に対する抑制効果についてすでに報告した12,6,18)
 本論文では,視床梗塞犬を用いて,mannitol投与群,非投与群について,脳乏血後の脳組織の変化を経時的に電顕を用いて観察し,両群の比較対照により,mannitolの投与が,脳梗塞の形成過穆,特に,脳梗塞の初期病変にいかなる影響を与えるかを検討した.

胸椎黄靱帯骨化と脊髄障害

著者: 児玉万典 ,   大久保勝美 ,   松角康彦

ページ範囲:P.867 - P.873

Ⅰ.はじめに
 脊柱の支持組織の肥厚,骨化などにより脊髄や神経根が圧迫され,myelopathyやradiculopathyを現わす症例は頸椎・腰椎レベルでは珍しいことではない.
 1960年,月本11)が頸椎後縦靱帯骨化に起因する脊髄障害をはじめて報告して以来,ことに本邦において本疾患の臨床症状,剖検所見,手術法に関する報告が多数認められる.また同年山口13)が,胸椎黄靱帯骨化により脊髄症状を呈した症例を報告したが,この方はその後散発的な症例報告をみるにすぎず,必ずしも関心が深まったとはいいがたい.

症例

石灰化を来たした側脳室内巨大Epidermoidの1治験例

著者: 小林士郎 ,   志村俊郎 ,   樋口皓史 ,   中沢省三 ,   小宅洋

ページ範囲:P.875 - P.879

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内epidermoidは,全脳腫瘍の約1%10,16,29)とされ,さほど稀な疾患ではない.しかしながら側脳室内epidermoidはきわめて稀で,Kriegら12)の報告以来,本邦例をも含めて19,21)20例を集計するに過ぎない.われわれは最近,頭部外傷時に撮影された頭蓋単純写により偶然石灰化を指摘され,手術により確認別出された右側脳室三角部に発生したと考えられる巨大なepidermoidの1例を経験したので,臨床病理学的検討を加えて報告する.

穿通性小脳外傷の1例

著者: 藤井徹 ,   今井治通 ,   船橋利理 ,   有本平 ,   駒井則彦

ページ範囲:P.881 - P.887

Ⅰ.はじめに
 頭部外傷におけるテント上病変の臨床報告および実験報告は多くなされてきたが,テント下病変のそれははなはだ少ない.中村9)の報告では頭部外傷1,300例中小脳症状のみを呈したものはわずかに5例(0.4%)であった.これは解剖学的に外傷を受けにくいという特殊性に基づいていると思われる.開放性後頭蓋窩損傷はさらに頻度が少ない.しかも生存例の報告はきわめて珍らしく,本邦では未だその報告をみない.われわれはこのような貴重な1例を経験し,Holmes5)の報告以来発現機序が問題となっているskew deviationも観察したので若干の文献的考察を加えて報告する.

小児の巨大悪性脈絡叢乳嘴腫の1手術例

著者: 藤原悟 ,   児玉南海雄 ,   遠藤俊郎 ,   高久晃 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.889 - P.892

Ⅰ.はじめに
 choroid plexus papillomaは小児脳腫瘍中1-3%の発生率とされ3,9,11),比較的稀な腫瘍であるが,本邦においては特に悪性例の報告が少ない8,12,14,23)
 今回われわれは,側脳室三角部を中心に右大脳半球のほぼ半分を占め,組織学的にchoroid plexus carcinomaと診断された1歳4カ月女児の腫瘍亜全剔例を経験したので,若干の考察とともに報告する.

脳幹部膿瘍の1剖検例

著者: 阿部雅光 ,   大神正一郎 ,   北村勝俊 ,   大田典也 ,   沼口雄治

ページ範囲:P.893 - P.898

Ⅰ.はじめに
 脳幹部の孤在性膿瘍は,きわめてまれな疾患であり6,7,10),生前に診断されることも少ない2,12,16).文献的にはWeickhardtらのすぐれた報告16)があるが,これを含めて今までに40数例の報告1,2,9,11-15)があるにすぎない.ここに述べる症例は第3脳室,中脳水道および第4脳室周囲に存在した膿瘍であり,臨床診断が困難であった,ここに臨床と剖検所見を述べ,本症例の特徴と本疾患の問題点について老察を加える.

不妊症治療中に"Peillon-Racadot" syndromeを呈したProlactinomaの1例

著者: 前田行雄 ,   飴谷敏男 ,   谷栄一

ページ範囲:P.899 - P.903

Ⅰ.緒言
 無月経が下垂体嫌色素性腺腫,特にprolactinomaでは唯一の臨床症状である事が比較的多く,これらの患者に,月経周期を誘発する目的でestrogen治療を行うと,頭痛,悪心,視力障害などの下垂体腫瘍の症状が発現する事がある4,15,16,24,25).Peillonらは,こういった症例に着目しはじめて報告を行い24),Landoltはこれを"Peillon-Racadot" syndromeと名付けた15).最近われわれは不妊症婦人に対しgonadotropin治療中,"PeillonRacadot" syndromeを呈したprolactinomaの1例を経験したので報告する.

巨大視神経膠腫の1治験例

著者: 溝井和夫 ,   佐藤智彦 ,   金子宇一 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.905 - P.909

Ⅰ.はじめに
 視神経膠腫は比較的まれな腫瘍である.われわれは,直径10cm,重量170gにもおよぶ巨大な視神経膠腫の症例に遭遇し,その全剔出に成功したので,若干の考察を加え報告する.

外傷性小脳内血腫—自験例および文献的考察

著者: 姉川繁敬 ,   吉村恭幸 ,   河井宏一 ,   倉本進賢 ,   一ノ宮知典

ページ範囲:P.911 - P.915

Ⅰ.緒言
 外傷性後頭蓋窩血腫は外傷性頭蓋内血腫の2-6%といわれており,その大部分を硬膜外および硬膜下血腫が占めている.外傷性小脳内血腫はさらに稀であり,全頭蓋内血腫中0.6%内外といわれており,CTの普及した今日においても報告は少ない.著者らが外傷性小脳内血腫について集め得た文献の症例数は計24例であった.またこれらの症例のうちで生存したものは13例と予後もきわめて悪かった.
 最近,私共は外傷性小脳内血腫の1例を椎骨動脈撮影およびCTスキャンにより診断し手術にて救命せしめた.この症例とともに文献的考察を加え報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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