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Case Study
非活動性神経膠腫
著者: 竹内一夫1 原充弘1 横田仁1
所属機関: 1杏林大学脳神経外科
ページ範囲:P.911 - P.919
文献購入ページに移動CTの導入以来,各種の頭蓋内疾患の診断は著しく進歩した.特に非侵襲的検査法としてのCTは,外来レベルでのスクリーニングにも有用性は高い.一方,成人の脳腫瘍では初発症状として,いわゆる"高年初発てんかん"間が重視されている.われわれはこの高年初発てんかんで発症し,高血圧を合併する成人男子において,当初は脳血管障害を疑い,抗てんかん剤と降圧剤を投与しつつ経過を観察中に,発症後1年以上経過して,ようやく神経膠腫と診断された,いわゆる"非活動性神経膠腫inactive glioma"6)の1症例を経験した.
CTが普及するにつれて,CT診断における種々のpitfallsが指摘されているが9),なかでも同様に低吸収域として出現する脳梗塞病巣と神経膠腫との鑑別はしばしば困難であるといわれている.そのため腫瘍性病変を疑って開頭し,はじめて梗塞性病変を確認したような症例も珍しくない.しかし本症例のように逆に初めは脳血管障害を疑い内科的治療を続け,のちに神経膠腫として治療されるような症例についても注目を要する.
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