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総説
髄液腔内脳腫瘍転移
著者: 松角康彦1 植村正三郎1 倉津純一1
所属機関: 1熊本大学医学部脳神経外科
ページ範囲:P.1113 - P.1123
文献購入ページに移動脳脊髄液中に見いだされる細胞の種別と意味づけについては,既に今世紀の初めからWidal46)やQuincke33)の研究があり,各種髄膜炎や神経疾患の診断に右用な情報を提供するものとなった.一方,脳脊髄液中に見いだされた腫瘍性細胞の検索についても,1960年以降,数多くの研究があり,脳腫瘍診断に役立てる試みがなされたが,髄液中の腫瘍細胞の1剣目率は報告者により著しく異なるものであって,髄液中細胞の採集方法や,異形細胞の同定にはいまだ未解決の問題を残している.しかしながら髄液腔内に腫瘍細胞が検出されたということは,単に腫瘍の診断が可能となったということに留まらず,腫瘍細胞が髄液中に浮遊し,くも膜下腔に伝播・播種を起こしていることを意味し,脳腫瘍の発育・伸展の度合いが既に原発巣に限局したものでないことを示すものとして,多くの場合,治療対策に著しい困難を伴うことになる.脊髄くも膜下腔への脳腫瘍細胞転移が尿閉や下肢の弛緩性対麻痺の発症により確実となっても,適切な治療対策を持たないというのが現状であり,再照射療法をはじめ,髄液腔内への抗癌剤注人も必ずしも所期の効果を挙げるに至っていない.脳腫瘍治療という課題の中で,原発巣の治療と同様に,髄液腔内転移の予防と処置は極めて重要な問題といえる.
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