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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科8巻3号

1980年03月発行

雑誌目次

Total system化とLiaison

著者: 岩田金治郎

ページ範囲:P.209 - P.210

 近頃,total system化とかtotal displayなる言葉がよく使われる.情報量がこれだけ殖え,しかもcomputer処理されたもの——CT scanもその1つである——が急増すると,これを全体として見直さなければ収拾がつかない.
 神経学的診断もbed sideすなわち臨床診察に始まり,この原点にもどって結論をつける鉄則は不変であるが,われわれ脳神経外科医のように積極的立場をとるものにとっては臨床診断の裏付けとなり,更により具象的,客観的な根拠すなわちdataやimageが望まれるのは当然である.

総説

脳神経外科領域のgeneticカウンセリング

著者: 竹下研三

ページ範囲:P.211 - P.219

はじめに
 遺伝相談とはある家庭に遺伝性疾患の発症する可能性が生じた場合,これに専門的な立場から的確なアドバイスを行うことをさす.今日,遺伝相談で相談される遺伝性疾患は内科疾患に多く,脳神経外科領域では中枢神経系の奇形などごく一部の疾患に限られている.ここでは遺伝相談の基本作業について概説し,脳神経外科領域と関係の深い奇形,腫瘍性疾患の遺伝の問題,最後に治療における奇形の問題について述べてみたい.

Case Study

第3脳室epidermoid

著者: 角家暁 ,   郭隆燦 ,   江守巧

ページ範囲:P.221 - P.227

Ⅰ.はじめに
 第3脳室腫瘍は比較的稀であるが,その発生部位と腫瘍の性質を手術前に正確に診断することは必ずしも容易ではない.またこれまでの手術成績も悪く,手術方法についても議論の多いところである.
 私どもは最近経験した第3脳室epidermoidの症例について,補助検査所見より腫瘍の発生部位と種類を術前にいかに診断し,次にいかなる理由で側脳室前角経由の手術法を選択したかについて述べ,諸賢の御批判を仰ぎたいと思う.

Current Topics

経蝶形骨下垂体手術の新しいapproach—Sublabial Rhinoseptoplastic Technique

著者: 福島孝徳 ,   佐野圭司

ページ範囲:P.229 - P.235

Ⅰ.はじめに
 経蝶形骨下垂体手術は非常に古いprocedureであるが2,6,14,17),1960年代にGerard Guiot4,5),Jules Hardyら7,8)により手術用顕微鏡とX線テレビの導入をもって華々しく復活した.特に近年の内分泌診断,神経放射線学の進歩は下垂体微小腺腫の早期発見に貢献し,経蝶形骨手術の普及に拍車をかけた.更に,手術テクニックの進歩とともにmicroadenoraやhypophysectomyのみならず,最近は鞍上部伸展を示す大きな腺腫や頭蓋咽頭腫,粘液嚢腫,コルドーマなどに対しても安全に確実な手術ができるようになり,脳外科におけるroutine sur-gical procedureとして重要な位置を占めるようになってきた.手術法としては,従来Hardy法9,10)が一般的であり本邦でもそれを踏襲する施設が多い13,16).しかし,最近endonasal method12)の変法3)やTindallらのuni-lateral technique19),Lawsのtransseptal法15)など種種の改良法が試みられている.われわれは,それらup-to-dateな進歩を基に,鼻中隔や前鼻棘を全く取らない新しい"鼻中隔形成的手術"を開発し,種々の器具を考案したのでその詳細を紹介したい.

海外だより

第3回悪性脳腫瘍治療Conference—於 カリフォルニア,Asilomar

著者: 星野孝夫

ページ範囲:P.238 - P.240

 また脳腫瘍の話題で恐縮であるが,1979年の10月末に,Asilomarにて第3回の悪性脳腫瘍の治療に対する会議が開かれたので(TheThird Conference on Brain TumorTherapy.at Asilomar, California)そのことを中心に報告させていただく
 以前にも,度たびこの会のことについては紹介させていただいているので,ここでまた始めからむしかえす必要はないのであるが,第1回は1975年に,今回と同じAsilomarで開かれた.その後このような会を2年ごとに持つということになり,2回目がKalamazooであった.40−50人の小人数の会で,発表よりは討論に重点がおかれており,これからどういうふうに研究なり治療を開発していくのかをお互いに忌憚なく話し合って探りだそうという趣旨である.

研究

再発乳癌に対する定位的下垂体破壊の経験—特に除痛効果について

著者: 杉浦和朗 ,   遠藤実 ,   知識鉄郎 ,   庄司佑

ページ範囲:P.241 - P.246

Ⅰ.はじめに
 脳下垂体破壊術は,乳房や前立腺等に原発したhor-mone dependentな癌の退縮を目的として,欧米においてはかなり積極的に行われ1,6,27),40-50%の症例において腫瘤を縮小しうること,また,それ以上の率で鎮痛効果をあげうることなどが明らかにされてきた18,20,28).われわれも再発乳癌の9症例に対し,計10回の定位的下垂体破壊術を行い,除痛効果に関して興味ある結果を得たので報告する.

長期クリッピング,結紮による頭蓋内血管壁の経時的,組織学的変化—第1報 実験的研究

著者: 蛯名国彦

ページ範囲:P.247 - P.261

Ⅰ.緒言
 その破裂がくも膜下出血の主因となる21)脳動脈瘤の治療としては,頭蓋内直接手術による脳動脈瘤柄部のクリッピング,ないしは結紮が最も安全かつ確実な方法と考えられ6,25,29,34,35)広く用いられている.しかし,perma-nent clipping,または結紮の行われた部位の動脈瘤柄部血管壁の変化に関しては,従来ほとんど検索がなされていないようである.完全な血流遮断を必要とする動脈瘤柄部のクリッピングまたは結紮では当然,同部血管壁の栄養障害もきたすはずであり,特に,近年数多く考案実用化されている締挾力の強いspring typeのクリップを使用した場合には,より強い機械的非停止性圧迫が加わり,更には,剪断作用も加わることから血管壁の壊死,断裂の可能性も考えられる.更にまた,異物としてのクリップおよび,結紮糸周囲の組織反応の問題もあり,材質による相違も検討の必要がある.以上の点を明らかにする目的で,本研究ではイヌの脳血管に種々の条件下でクリッピンゲまたは結紮を行い,最長2年6カ月間にわたる経時的,組織学的検索を行った.

症例

頭蓋内Osteochondroma—1手術例と本邦26文献例の検討

著者: 池田幸穂 ,   志村俊郎 ,   樋口晧史 ,   中沢省三 ,   杉崎祐一

ページ範囲:P.263 - P.269

Ⅰ.緒言
 頭蓋内に発生するchondromaまたはosteochondro-maは比較的稀な腫瘍である.本邦においては,現在まで調べえた範囲では文献上26例の報告をみるにすぎない1,3,6-10,12-16,20-27)
 われわれは最近右外転神経麻痺で発症した右中頭蓋窩osteochondromaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

脳内原発性細網肉腫の長期生存例

著者: 松浦浩 ,   樋口晧史 ,   志村俊郎 ,   中沢省三

ページ範囲:P.271 - P.274

Ⅰ.はじめに
 悪性腫瘍患者が丹毒やその他の感染症に罹患した場合,腫瘍が縮小または消失したという報告は古くから散見される1,4).われわれは極めて予後不良とみなされている脳原発性細網肉腫症例に亜全剔出術を施行後,重篤な化膿性髄膜炎を併発し,髄膜炎の治癒後3年10カ月間,全く再発の症状なしに経過した症例を経験した.この症例は頭蓋形成術の際に腫瘍床を組織学的に検索したが,腫瘍細胞は全く発見されなかった.本症例を文献的考察を加えて報告する.

Moyamoya病に合併した多発性脳動脈瘤

著者: 長嶺義秀 ,   園部真 ,   高橋慎一郎

ページ範囲:P.275 - P.282

Ⅰ.はじめに
 脳血管Moyamoya病に合併する脳動脈瘤の報告は,比較的稀なものとされてきたが,近年Moyamoya病の症例増加とともに,その合併例の報告は意外に多い.
 厚生省特定疾患ウイリス動脈輪閉塞調査研究班のMoyamoya病診断基準13)に則り,内外の文献を渉猟した結果,1967年牧ら16)の記載以来,1979年Adamsら1)の自験例4例の報告まで計25例の多きにのぼる.

頭蓋内多発性石灰化を伴った小脳石灰化結核腫の1例

著者: 長田裕 ,   佐藤慎一 ,   田中清明 ,   伴貞彦 ,   長久雅博 ,   山本豊城 ,   尾形誠宏

ページ範囲:P.283 - P.288

Ⅰ.はじめに
 近年,頭蓋内占拠性病変としての脳結核腫は,化学療法の進歩により著明に減少した.更に,石灰化をきたす脳結核腫となると一層みる機会は少ない.さてCT scan導入後の頭蓋内結核腫の記載は,いくつかなされているが3,9,11,12,14,17),石灰化結核種のCT所見に関する報告はいまだなされていない.
 今回われわれは,頭蓋内に多発性の石灰化を存し,結核の発病の既往がなく経過し,小脳失調症状で初発した小脳石灰化結核腫を持つ63歳男子の1治験例を経験したので,そのCT所見を中心に若干の文献的考察を加えて報告する.

頭蓋内に進展した篩骨洞蝶形骨洞粘液嚢腫の2例

著者: 中川善雄 ,   小竹源也 ,   鈴木憲三 ,   矢野一郎 ,   照林宏文 ,   平川公義

ページ範囲:P.289 - P.293

Ⅰ.はじめに
 後部篩骨洞および蝶形骨洞の粘液嚢腫は耳鼻科疾患であるが,しばしば神経学的症状で発症するために,1889年J.Berg1)により最初の報告がなされて以来,境界領域の疾患として興味を持たれてきた.また,その解剖学的な位置関係より,トルコ鞍内およびトルコ鞍周囲腫瘍との鑑別が必要である.今回CTスキャンにより,術前にその鑑別診断がなされた2症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

脳室穿破を伴う外傷性脳内血腫の3症例

著者: 原充弘 ,   塩貝敏之 ,   玉川輝明 ,   横田仁 ,   岡田純一郎 ,   竹内一夫

ページ範囲:P.295 - P.299

Ⅰ.はじめに
 頭部外傷による脳内血腫の発生頻度は少ない.しかし最近CTの導入により,これら血腫の有無,部位が正確に診断され,更に脳室穿破についての情報も容易に得られるようになった.
 われわれは最近,大酒家で飲酒後階段より転落し脳内血腫の発生をきたし,しかもこれらが脳室内へ穿破した3例を経験した.このうち2例はCT上高血圧性脳出血の部位と一致しており,これらの血腫発生の機序および予後について若干の文献的考察を加え報告したい.

Orbitosphenoidal Encephalocele(Neurofibromatosisの一型)の修復に伴って起こった脳血管攣縮の1例

著者: 小竹源也 ,   上田聖 ,   井上節

ページ範囲:P.301 - P.305

Ⅰ.はじめに
 Von Recklinghausen病は神経外胚葉性組織の発育異常による先天性疾患であるが,ときに中胚葉性組織の形成不全の1つとして頭蓋骨の変形,欠損を伴うことがある7,14,20,23,25).われわれは拍動性の眼球突出を主訴とした頭蓋骨の変形欠損患者に眼窩後壁形成術を施行したが,術後強度な脳血管攣縮に遭遇したので,この症例を報告し,本疾患の脳血管の特殊性について若干の考察を加えた.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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