icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科8巻5号

1980年05月発行

雑誌目次

友への手紙

著者: 木下和夫

ページ範囲:P.407 - P.408

 拝啓 寒さも和らぎ春の気配が身近に感ぜられる頃となりました.
 お元気で御活躍の様子は学会や雑誌上などで存じあげており,その成果には常に敬服申し上げております.

総説

虚血脳

著者: 中川翼

ページ範囲:P.409 - P.422

Ⅰ.はじめに
 「虚血脳」の病態生理,治療の問題は,現在もなお多方面より検討されている.それはこの問題が究極的には「脳組織の可逆性」の問題に通じうるからであろう.その上,血管吻合の技術導入,CTスキャン,各種脳血流量測定法の普及31,43,54,55,62),Positron emission tomographyの臨床応用等39,62-64)により,近年「虚血脳」の研究は動物実験のみならず臨床研究の分野でも飛躍的に発展している.ここで大切なことは,これら基礎ならびに臨床研究間の無理のない融合であると思われる.したがって,本稿では「虚血脳」に関する基礎ならびに臨床研究を整理し,基礎研究の臨床上の位置づけ,臨床研究の基礎的裏づけについて考えてみた.

Case Study

著しい呼吸困難と嚥下障害を伴った—Arnold-Chiari奇形

著者: 久間祥多 ,   桑原武夫

ページ範囲:P.423 - P.427

Ⅰ.緒言
 脊髄髄膜瘤を伴ったArnold-Chiari奇形は日常しばしば経験するところであり,近年,脊髄髄膜瘤そのものに対する手術適応,手術時期など種々の観点から議論され,今日一応の規準が出来上っているといえよう.一方,Arnold-Chiari奇形に基づく水頭症に対しては無造作にシャント手術が行われ,それなりの成果はあげているものの,この奇形に伴うことがある脳幹障害に関しては比較的等閑視されているようである.そこで,筆者らのArnold-Chiari奇形の症例のうち,著しい呼吸障害と嚥下障害を伴った代表例2例をあげ,本奇形における呼吸障害と嚥下障害,およびそれらの治療法に関して論ずることにする.

Current Topics

Kindling Effect

著者: 佐藤光源

ページ範囲:P.429 - P.432

Ⅰ.燃えあがり現象と転移現象
 一定の脳部位をある刺激強度と刺激間隔で繰返し電気刺激していると,はじめは行動と脳波上ごくわずかなてんかん様反応にすぎなかったものが,次第に反応の増強をきたし,やがて全身けいれんに発展する.これが"燃えあがり現象"3)である(Fig.1).いったんこの現象が形成されると,反復刺激を中止した後にも,1)それまでに形成された発作性放電(Fig.2)が少なくとも1年間持続すること,2)自発全身けいれんが起こりうること,3)その発作型が"燃えあがり現象"で形成された二次性全汎化けいれんと同じか,その鏡像であることが知られている10)
 更にあらかじめある脳部位でこの現象を形成しておくと,そうでない場合に比べ他の脳部位における"燃えあがり現象"の形成が有意に促進され,容易に全身けいれんに発展する.これが"転移現象"である3).この現象も永続性であり,反復刺激を加えた一次焦点部位を別除してもなお存在する.このため"転移現象"は,一次焦点部位の反復刺激中に生じた広汎な,二次脳部位への経シナプス性変化によるものと考えられている.

研究

急性外傷性気脳症

著者: 有賀徹 ,   小林士郎 ,   大塚敏文 ,   西邑信男 ,   本多一義

ページ範囲:P.433 - P.441

Ⅰ.はじめに
 CT scanが頭部外傷の診断に絶大な威力を発揮することは衆目の一致するところである.このことは外傷性気脳症の診断に際しても同様であり,最近かかる症例の報告も散見される14,16).そこで著者らは,当施設にて経験した頭部外傷例のうち,外傷性気脳症について,その頻度ならびに空気の進入機序と,その予後を検討したので報告する.

悪性腫瘍の髄膜浸潤に対する脳室内化学療法

著者: 山田和雄 ,   生塩之敬 ,   早川徹 ,   最上平太郎 ,   ,  

ページ範囲:P.443 - P.447

Ⅰ.はじめに
 近年白血病に対する多剤併用化学療法は飛躍的に進歩し,寛解率の増加と寛解期間の延長をもたらしている.特に小児の急性白血病においてこの傾向が顕著である8).しかしながら患者の生存日数が延長するに伴い,髄膜白血病の発生頻度は増加しつつある.最近のEvansら3)の報告によると小児急性白血病患者の51%に髄膜浸潤が発生している.この髄膜白血病の治療には従来全脳と全脊髄への放射線照射2,13,15)や腰椎穿刺による制癌剤の髄腔内投与1,6,13-15)(以後髄注と略す)が行われてきた.しかし全脳と全脊髄への放射線照射は骨髄抑制が問題となり,また制癌剤の髄注はくも膜下腔全般に十分な制癌剤濃度が得られない等の問題点が指摘されてきた11).最近Shapiroら12)やBleyer1)はOmmaya reservoirを介した脳室内制癌剤投与(以後intra-Ommayachemotherapyと略す)が髄注よりも髄膜白血病に対して有効であることを報告している.われわれも髄膜白血病または髄膜リンパ腫患者,および髄膜浸潤を起こす可能性が高い小児急性白血病患者に対し,治療または予防を日的としてOmmaya reservoirを設置し脳室内制癌剤投与を行ってきた.ここではこの治療法の効果および合併症について報告する.

症例

白血病細胞浸潤による小児視神経腫瘍の1例

著者: 蕎麦田英治 ,   豊田恭徳 ,   田中輝彦

ページ範囲:P.449 - P.455

I.はじめに
 眼窩腫瘍のなかでも眼球外腫瘍の場合には,頭蓋内との関係が深く,診断,治療の両面にわたり脳神経外科医の手に委ねられる機会が多い17)
 最近著者らは,急性リンパ性白血病(A.L.L.)完全寛解後の小児で,白血病細胞が頭蓋内くも膜,左視神経への浸潤に止まらず,左視神経周囲に頭蓋内から眼窩内へおよぶ腫瘤を形成し,手術に至った症例を経験した.
 本症例は非常に稀なものであるが,眼窩腫瘍の鑑別診断の際には常に念頭に置かねばならぬものであるため,若干の考察とともに報告する.

特異な体型(鼻根部陥凹,三尖手,四肢短小)を有したdevelopmental stenosis of the cervical spinal canalの1症例

著者: 井須豊彦 ,   伊藤輝史 ,   岩崎喜信 ,   都留美都雄 ,   佐々木信一

ページ範囲:P.457 - P.461

Ⅰ.はじめに
 1956年Wolf15)により初めてcervical spondylosisにおける脊髄症状発現には,脊椎管腔前後径の大きさが重要な因子として関与することが指摘され,1964年Hinck3)はdevelopmental stenosis of the cervical spinal canalの概念を提唱した.最近われわれは,50歳男性で,鼻根部陥凹,三尖手,四肢短小等の特異な体型を有し,その脊髄症状発現の主要因が著明な頸椎脊椎管腔前後径の狭小であると老えられたdevelopmental stenosis ofthe cervical spinal canalの1症例を経験したので,文献的考察を加えてここに報告する.

CB−154投与によりCT scan上腫瘍陰影の消失したForbes-Albright症候群の1例

著者: 小林士郎 ,   志村俊郎 ,   中沢省三

ページ範囲:P.463 - P.467

Ⅰ.緒言
 CB-154(Bromocriptine,2-Br-αergocryptine,Par-lodel®)は,スイスSandoz社により最近開発された合成tripeptide ergot alkaloidでergotoxineに属する.CB-154は,乳汁分泌抑制作用を有することよりLutterbeckら11)が1971年に最初に臨床応用に成功して以来,種々の原因による乳漏症や,高Prolactin(以下,PRLと略)血症の治療に用いられてきた.われわれもこれまでPRL産生下垂体腫瘍の術後に存続する高PRL血症の治療に,CB-154の投与を行い有効な結果を得ているが,今回は,microadenomaにより引き起こされた乳汁分泌,無,月経を呈するForbes-Albright症候群の1例に対し,手術的療法を行わず,CB-154を投与し,興味ある知見が得られたので報告する.

著明な頭蓋外進展を伴ったTrigeminal Neurinomaの1例

著者: 山田弘 ,   坂井昇 ,   安藤隆 ,   西村康明 ,   岸本恭 ,   下川邦泰

ページ範囲:P.469 - P.473

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内腫瘍としてのtrigeminal neurinomaは比較的稀な腫瘍に属する.本症は,一般に従来の報告からみてもその発育がごく緩徐な進行をなすため診断は遅れがちになる.最近われわれは,頭蓋内のみならず著明に頭蓋外に進展をなした本症の1例を経験したので報告し,併せてCTによる検索,特に冠状断層によるCTが腫瘍の進展程度を知る上に有用であることを強調した.

脳梁欠損を伴った脳梁脂肪腫の1手術例

著者: 高橋慎一郎 ,   園部真 ,   長嶺義秀

ページ範囲:P.475 - P.479

Ⅰ.はじめに
 頭蓋内脂肪腫は,1818年Meckelが視束交叉部の脂肪腫を記載して以来3),数々の報告があるが,一般に稀なものとされ,頭蓋内腫瘍の約O.03%といわれる10).ちなみにわが国の脳腫瘍全国統計委員会でまとめた6,204例の原発性脳腫瘍中,脂肪腫はわずか1例にすぎない11).われわれは最近,脳梁欠損を伴った頭蓋内脂肪腫の1手術例を経験し,CT所見を中心に検討したので,若干の文献的考察を加え,ここに報告する.

脳性肺水腫の1例

著者: 小林一夫 ,   平井秀幸 ,   松下紀彦 ,   前中由巳

ページ範囲:P.481 - P.487

Ⅰ.はじめに
 脳性肺水腫(神経原性肺水腫)は,心・腎・肺に原疾患はなく,中枢神経系の障害から二次的に続発する急性肺水腫である.比較的稀な疾患であるといわれているが,頭部外傷,頭蓋内出血,脳腫瘍,脳梗塞,てんかん発作等に伴って発生した脳性肺水腫の報告1-3,7,8,11,13.16)は必ずしも少なくはない.
 脳性肺水腫は,発症が急激で,病態の変動が著しいため,臨床検査と平行して治療を進めなければならない場合が多く,その発生機序や病態の解明に,十分な検査成績を得ることは困難である.われわれは,最近,頭部外傷に基づく脳性肺水腫の1例を経験し,CTを含めた諸検査により若干の知見を得たので,文献的考察を加え検討したい.

Dystopic os odontoideumの1例

著者: 江頭泰平 ,   能勢忠男 ,   小野幸雄 ,   牧豊

ページ範囲:P.489 - P.493

I.はじめに
 頭蓋・頸椎移行部の比較的稀な異常の1つに軸椎の歯状突起の遊離奇形os odontoideumがある.Torklusら10)はos odontoideumをorthotopic osとdystopicosの二型に分類している.すなわちorthotopic osはレ線上,正常の軸椎歯突起の位置にあり,dystopic osは,レ線上,斜台の近くに位置し,ときには斜台に癒合している.
 また,os odontoideumを有する例の神経症状発現の機構としては,atlanto-axial dislocationが重視されている4,5),その手術法に関しては,長島5)が述べるように1)immobilization,2)fusion,3)decompression,4)decompressionおよびfusion,の4種類のいずれかが症例により選択されている.

くも膜下出血で発症した第3脳室内頭蓋咽頭腫の1例

著者: 久保田紀彦 ,   藤井博之 ,   池田清延 ,   伊藤治英 ,   山本信二郎 ,   中西功夫

ページ範囲:P.495 - P.501

Ⅰ.はじめに
 頭蓋咽頭腫は稀に第3脳室内に限局して発育し4-6,15),その臨床症状はもっぱら頭蓋内圧亢進の症状を呈し,視神経障害や下垂体一視床下部系のホルモン欠損症状を全く示さない.われわれはくも膜下出血で発症した頭蓋咽頭腫の剖検脳を検索したところ,腫瘍は第3脳室内に限局して発育しており,視床下部の脳組織内に腫瘍の発生母地を思わせる所見を見出したので,この稀な症例を若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?