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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科8巻7号

1980年07月発行

雑誌目次

"叱る"

著者: 最上平太郎

ページ範囲:P.597 - P.598

 叱るということは極めて難しいことである.これは私の恩師岩永先生,久留先生また陣内先生もおっしゃっていたことである,私もまたそう感じている.
 戦前の教育を受けた者にとっては先生が一番偉くてこわかったものである.特に小学校1年生に入学した頃など先生というと絶対的な存在であった.中学に進むとやや生意気になって内心先生に多少軽蔑の念をもったりしたものであるが,それでも理窟ぬきにこわかったものである.高校,大学時代となると先生に対する感じ方もかなり変わってくる.大学を卒業して外科の教室に入局した当初の新入医員時代には,医局長,筆頭助手の先輩ともなると,これまでとは違ったこわさがあり,いわんや教授ともなると推して知るべしである.

総説

中枢神経における転移性腫瘍について—病理学よりみた解説—第2部—

著者: 平野朝雄 ,   北條俊太郎

ページ範囲:P.599 - P.603

Ⅳ.転移した場所について(承前)
 B.軟膜への転移(Fig. 22)
 腫瘍が軟膜に転移した場合は,脳実質内に転移した場合と異なり,くも膜下腔内を拡がり,leptomeningeal carcinomatosisと呼ばれる病変をきたします.この場合に腫瘍細胞はくも膜下腔全般に拡散され,更に脳室内にも侵入します,しかし局所的に腫瘍細胞の集団をつくりplaquesとして認められることもあり,腫瘍細胞の浸潤の程度が軽い場合には肉眼的にはわかりにくいこともあります.くも膜下腔の広い部分,例えば脳底部には強い浸潤がみられ,髄液の経路が阻止されることによりhydrocephalusをきたすことになります.一般にくも膜下腔にあるarachnoid細胞,線維芽細胞,および血管は腫瘍細胞の浸潤に対して強く反応し,その増殖をきたし,膠原線維の増加を伴います.
 くも膜下腔の腫瘍細胞は血管周囲腔にそって脳の表面から侵入します(Fig. 23, 24).また腫瘍細胞はくも膜下腔を貫通する脳神経や脊髄神経根内に浸潤し,神経束間更にときには1本1本の神経線維間にすら侵入します.これに伴い軸索およびSchwann細胞とそのmyelinの崩壊をきたすことになります(Fig. 25).

Case Study

下垂体腺腫の放射線照射後に発生した巨大下垂体肉腫

著者: 荘秀雄 ,   難波宏樹 ,   石毛尚起 ,   大里克信 ,   中村孝雄 ,   山浦晶 ,   牧野博安

ページ範囲:P.605 - P.614

Ⅰ.はじめに
 トルコ鞍内に発生する下垂体腺腫の発育方向は,主として鞍横隔膜を押し上げて上方に向かって進展するタイプが多く,これ以外のトルコ鞍外下方,後方,前方に向かって進展することは比較的稀な現象である.
 最近,われわれは嫌色素性下垂体腺腫が,初回手術とこれに続く放肘線療法の後,11年間の長期経過を経て,急激な悪性化(肉腫化)を示し,短期間に前頭葉,眼窩,口腔内にまで達する巨大な腫瘍となって,悪性化後約8カ月で死亡した症例を経験した.臨床経過,剖検所見について報告し,合わせて下垂体腺腫の鞍外進展extrasellar extensionおよびpostirradiation sarcomaを中心に若干の文献的考察を加えた.

Current Topics

A Microstereotactic Approach to Small CNS Lesions—Part II; Adjuvant Therapy Clinical Potential and Toxicity of Intraventricular Lymph Infusion

著者: ,   ,  

ページ範囲:P.615 - P.622

A technique is described for adjuvant therapy of small central nervous system tumors after their removal. The feasibility of direct application of lymphocytes from the thoracic duct to the ventricular system of cats has been explored. Reduction of the antigenic mass by techniques described in part 1 of this paper is probably crucial.8). Patients with gliomas are known to have circulating tumorspecific lymphocytes which may not have direct access to the CNS. This study demonstrated no toxicity from the chronic intraventricular infusion of thoracic duct lymph in cats.

研究

破裂脳動脈瘤のCT—出血所見の検討

著者: 今永浩寿 ,   山本昌昭 ,   神保実 ,   喜多村孝一 ,   小林直紀 ,   斉藤由子

ページ範囲:P.623 - P.631

Ⅰ.はじめに
 CTが広く普及し,機器の進歩がめざましい今日でも,脳動脈瘤の検索には脳血管撮影が最も重要な検査法であることに変わりない.しかし,患者の状態を大きく左右するのは脳動脈瘤破裂によって生じた頭蓋内血腫,水頭症,脳血管攣縮による脳梗塞等であり,これらの複雑な病態に関してCTは詳しい情報を提供してくれる.また,CTはnon-invasiveでもある所から,現在では急性期のくも膜下出血の患者に対しては脳血管撮影に先立ってまずCTが行われることが多い.
 今回は脳動脈瘤破裂によって生じた出血所見を分析し,CTが出血.部位の推定,治療方針の決定,予後推測にどの程度有用であるかを検討した.

脳梗塞急性期における血流再開の実験的研究—脳腫脹の発来とmannitolおよびglycerolによる抑制

著者: 田中悟 ,   吉本高志 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.633 - P.638

Ⅰ.はじめに
 脳卒中はわれわれ人類にとっての三大死因の一つであり,そのうち脳梗塞の占める割合は50%を越えている.さて脳梗塞において,progressive strokeやcompleted strokeの形をとった場合では,thromboendarterectomyあるいはembolectomyは,その急性期では常識に反して臨床症状を悪化させるだけでなく,死を招来することもあり,急性期でのそれらの外科的処置は,もはや断念すべきであるとするのが多数の意見である.しかしわれわれ脳神経外科医は急性期においても血行を再開させ,脱落の運命にある神経細胞の救出を計る手段を考えなければならない3).しかし,梗塞巣の時間的諸変化や急性期血行再開により惹起される脳の病態生理1,2)はいまだ不明の点が多く,したがってその対策も立てられないというのが現状である.それらの解明には,まず脳血上流遮断によって,一定の程度,大きさの梗塞が,しかも一定部位に高頻度に発生し,それが血流遮断時間の調節によって,その程度を自由に調節ができ,欲をいえば慢性実験にも使える動物モデルの作製が必要である.
 先にわれわれは,イヌの脳底部各血管のそれぞれの組み合わせの遮断によって,上記諸条件にほぼ合致すると思われる各種のモデル犬を作製して既に発表してきたが6),その中でも遮断された脳底部血管の解除後,急速に脳腫脹が発生してくるモデル犬についても報告した7)

頭部CTにおける正常・異常の数値判別

著者: 山本昌昭 ,   今永浩寿 ,   小林直紀 ,   神保実 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.639 - P.644

Ⅰ.はじめに
 著者らは,頭部CTによる自動診断を目的として,いくつかの数値的診断法を試みてきた.今回,許容線形判別分析を用い,正常・異常の数値診断を試みたところ,良好な結果が得られたので報告する.

症例

CT scanにてHigh Densityを示すEpidermoidとその化学組成

著者: 伊藤義広 ,   賀来素之 ,   児玉万典 ,   松角康彦

ページ範囲:P.645 - P.648

Ⅰ.はじめに
 脳腫瘍の約1%にみられる頭蓋内epidermoidは,長期間におよぶ臨床経過などその特異な性質によってしばしば診断が困難なことが多かった.しかしながらcomputed tomographyの導入以降は,極めて特徴的なlowdensityを呈する腫瘍としてその発見は容易となった.すなわち1976年Gendell3)によりlow densityを呈する症例が報告され,その後同様の報告が多くみられるようになった結果,現在ではepidermoidはCT所見上代表的なlow density massとさえ考えられるに至った2,4).一方Braun1)らによって近年そのdensityを異にする症例の報告7)が次第にみられるようになり,われわれもhigh densityを呈したepidermoidの1例を経験した,今回high densityをきたした原因に関して内容物の化学組成を分析し検討したので報告する.

経過観察中にlow densityからhigh densityに移行した慢性硬膜下血腫

著者: 兵頭明夫 ,   能勢忠男 ,   榎本貴夫 ,   牧豊

ページ範囲:P.649 - P.653

Ⅰ.緒言
 慢性硬膜下血腫のCT所見は最近注日を集めており報告も多い1,4,5,6,8).またCTよりその成因にせまる報告もみられるようになってきた9)
 著者らは,1977年1月から1979年9月までの間に,頭部外傷後のCTスキャン1,824例を経験しているが,そのうち16歳以上の成人例で,CTスキャン上,前頭部脳表に,いわゆるfluid collectionを思わせる低吸収域のみられる症例が40例あった.更に,これらの症例のfollow-up中に,低吸収域が,出血によると思われる高吸収域へとdensityを変え,慢性硬膜下血腫に移行した例を2例経験した.この症例にみられるように,外傷後の脳表のfluid collection中への出血も慢性硬膜下血腫の成因の1つと考えられるので,若干の文献的考察とあわせて報告する.

巨大下垂体腺腫の1手術例

著者: 高橋保博 ,   峯浦一喜 ,   遠藤俊郎 ,   児玉南海雄 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.655 - P.658

Ⅰ.はじめに
 最近,われわれは,鞍外進展の著しい,巨大な下垂体腺腫の摘出成功例を経験したので,手術手技を中心に,若干の考察を加えて報告する.

後脈絡動脈領域に脳動静脈奇形と脳動脈瘤の併存した1例—主に成因に関する考察を加えて

著者: 新納正毅 ,   粟博志 ,   小林栄喜 ,   三原忠紘 ,   朝倉哲彦

ページ範囲:P.659 - P.665

Ⅰ.はじめに
 同一頭蓋内に脳動静脈奇形と脳動脈瘤が併存する症例は文献上散見される1,3-10,12,13,16-22).しかし,われわれが経験した症例のように同一動脈の支配領域に両者が併存し,しかも動脈瘤が動静脈奇形のnidusに極めて隣接した部位に存在していたものは極めて稀であり,調査しえた範囲では本症例を含めてわずか4例にすぎない.
 ところで,動静脈奇形に併存する動脈瘤の成因については諸説があるが,いまだ確定したものはない.そこでわれわれは,文献例を対象として動脈瘤と動静脈奇形の位置的関係を分析し,その成因について血行力学的考察を試みたので併せて報告する.

特異なCT像を呈した外傷性脳室内出血の1例

著者: 池間幸穂 ,   山川和臣 ,   中沢省三

ページ範囲:P.667 - P.671

Ⅰ.はじめに
 CT scanが,極めて緊急性を要求される頭部外傷の診断に有用であることはいまさらいうまでもない.頭部外傷により生じる脳挫傷や脳室内出血,明らかなmass effectを是しない脳内血腫等の診断や,血腫と周囲の脳浮腫との鑑別等は従来の検査法では限界とされていたがCT scanの出現により極めて明確に診断されるようになった.最近われわれは,CT上特異な所見を呈した外傷性脳室内出血の1例を経験し,従来あまり検討がなされなかった外傷性脳室内品血の発生機序につき,本症のCT所見と若干の文献を加えて考察を試みたので報告する.

α−フェトプロテイン異常高値を呈した乳児Ependymoblastomaの1剖検例

著者: 久保長生 ,   天野恵市 ,   岡安勲 ,   田鹿安彦 ,   喜多村孝一

ページ範囲:P.673 - P.677

Ⅰ.はじめに
 1歳以下の乳児脳腫瘍の頻度は比較的稀であるが,最近コンピュータ断層撮影(以下CTと略)の導入により診断が容易となり,その頻度が増加する傾向にある.われわれは生後55日目の乳児で水頭症の診断にて入院し,CTスキャン等の検査にて脳腫瘍と診断され,血中α−フェトプロテイン(以下AFPと略)が異常高値を示し,脳室内出血をきたした1例を剖検したので,その詳細を報告する.

V-P Shunt Tubeが胃に穿通し逆行性髄膜炎を起こした1例

著者: 西嶌美知春 ,   大山秀樹 ,   樋口紘

ページ範囲:P.679 - P.683

Ⅰ.はじめに
 脳室腹腔短絡術(V-P shunt)は脳神経外科手術のうち最も頻度の高い予術の1つであるが,その重大な合併症の1つに腹側チューブによる臓器穿通がある.筆者らは剖検にてチューブが胃内に穿通し,これによる逆行性髄膜炎を併発したと考えられる症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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