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雑誌目次

雑誌文献

Neurological Surgery 脳神経外科9巻13号

1981年12月発行

雑誌目次

遠く離れて思うこと

著者: 千ケ崎裕夫

ページ範囲:P.1451 - P.1452

 国際学会に出席することは,学術的意義も大きいと思うが,平生は年に1度のクリスマスカードを交換する程度の消息しかわからない遠い国の旧友に偶然あえて,旧交を暖めあうという喜びもまた格別楽しいものである.先にミュンヘンで行われた国際脳神経外科学会でも,15年ぶりに昔,私がOxfordにいた頃,家族ぐるみのつき合いをしていた同僚の1人が休暇をかねて奥さんや子供さんと一緒にみえており,懐しい昔話に話がはずんだ.
 彼はその頃,卒後数年で一般外科の試験もパスし,いよいよ脳神経外科医としての一歩を歩み始めたばかりであり,私も初めて外国にでて言葉の不自由もあり,習慣の違いもあり,四苦八苦していた頃のことで,お互いに励ましあったり助けあったり,あるいは将来を論じあったりして,所謂同じ窯の飯を食ったという同僚意識が今でもわれわれの友情を強く結びつけている.もちろん,彼も今は立派な一人前の脳神経外科医として成長して,イギリス南西部の大都市Bristolの脳外科クリニークのconsultant(部長)として,イギリスの脳外科の中の若手のホープと期待されている1人である.その他の当時の同僚の消息をきいてみると,それぞれLiverpool,Birmingham,Manchester,Londonなど,大都市の有数の脳外科のクリニークでconsultantとして元気に活躍しているとのこと.

総説

小児脳腫瘍—治療法の選択とその遠隔

著者: 高久晃 ,   遠藤俊郎 ,   岡伸夫

ページ範囲:P.1453 - P.1468

I.はじめに
 小児における悪性腫瘍の中で,脳腫瘍は白血病に次いで第2位(Koos 197155),癌の子供を守る会1973130))に位置しており,15歳以下では悪性腫瘍の約12%を占めるとされている.すなわち,いわゆる小児がんの克服という見地からも極めて重要な位置にある疾患である.
 諸家の統計からも(Koos 197155),三輪197782))明らかなように,これら小児期の脳腫瘍は,生命の危険なく安全に摘出できるような良性腫瘍は比較的少なく,組織学的には良性腫瘍でも,その発生部位からみて全摘出が不可能な腫瘍も多い.また臨床的に全摘出できたと思った症例でも,局所再発が多く,また髄腔内転移を来たす悪性腫瘍も多い.いずれにしても,手術のみの治療では不充分で,放射線療法,化学療法などの補助的療法を必要とするものが多いのが事実である.

解剖を中心とした脳神経手術手技

脳底動脈分岐部動脈瘤の手術

著者: 喜多村孝一 ,   加川瑞夫 ,   馬場元毅

ページ範囲:P.1471 - P.1475

I.はじめに
 脳底動脈分岐部動脈瘤の根治手術で,何とか満足できる成績が得られるようになったのは近年であり,1959年,Drakeの報告がその幕あけである.以来,多くの手技が創案されたが,批判に耐えるものは少なく,この部位の動脈瘤への到達法として現在用いられるものは割合に少ない.
 脳底動脈末梢1/3の部に到達する方法は,①subtemporal approach(Drake),②pterional approach(Yasargil),③combined approachなどがある.

研究

脳組織比重測定法の基本的問題と改良

著者: 茂野卓 ,   茂野淑 ,   ,  

ページ範囲:P.1477 - P.1484

I.緒言
 近年,脳浮腫の定量評価法として,その方法の簡便さおよび微量組織を用いた測定が可能のことから,脳組織比重測定法(以下,比重法と略す)が隆盛となってきた1,2,4,5,7-12).しかし,脳組織比重(以下,比重と略す)は,単に脳組織水分含有量のみならず,血液成分あるいは脂質成分などによっても変化を受けるものである.すなわち,比重変化をそのまま水分含有量変化としてとらえるわけにはいかない.周知のように,血液比重は脳組織比重より大きい.したがって脳血液量の変化は,脳組織比重に少なからぬ影響を及ぼすと考えられる.この間題を中心に,当教室で新たに開発された高精度自動化比重勾配溶液作製法を用いて,比重測定法の諸問題および改良法を検討した.

悪性脳腫瘍に対する新しい治療法の試み—1.Bleomycin局所注入療法について

著者: 中沢省三 ,   大脇潔 ,   志村俊郎 ,   伊藤保博 ,   矢嶋浩三

ページ範囲:P.1487 - P.1493

I.はじめに
 脳腫瘍の治療の原則は手術療法である.しかし悪性脳腫瘍は通常極めて浸潤性であり,その発生母地である脳の解剖学的特殊性から考えると,いかに早期発見が可能となり,手術手技の進歩発展があっても,手術療法のみで根治せしめうる症例は極めて限られている.そのため,残存脳腫瘍に対する後療法として,従来の放射線療法に化学療法や免疫療法に期待が寄せられ,これらを中心に多くの研究が積み重ねられている.しかし現在までのところ,化法療法をいかに駆使しても,悪性脳腫瘍の完全治癒を期待することは極めて困難である.これは化学療法剤そのものに種々の制約があるというだけでなく,その投与法にも改良すべき点が多々あるからである.
 化学療法剤の投与法には,従来より用いられている全身投与法1)や脳灌流法15),頸動脈内3)・髄液腔内11)・嚢胞内投与法17)などが,それぞれの特徴を生かしながら行われている。しかし,そのいずれにも限界があり,目下のところ余り期待のかけられない補助療法としての域を脱することができず,せいぜい対症的効果や,わずかな延命効果が得られているに過ぎない.

CT像による頭蓋咽頭腫の治療評価

著者: 久保田紀彦 ,   伊藤治英 ,   四十住伸一 ,   山本信二郎

ページ範囲:P.1495 - P.1501

I.はじめに
 CT scanの導入は,頭蓋内疾患の診断のみならず,その経過,ことに手術後の経過観察を容易にし,またCT scanによるfollow-upは術後の治療評価に必須のものとなった.
 頭蓋咽頭腫は脳底部の脳神経,視床下部や脳幹,Willis環と密接しているため手術的に全摘することが困難な場合が少なくない4,11),このため手術療法に加えて種々な術後の補助療法が行われているが9),いまだ結論的なものはなく,厳重な追跡検査を必要とする.

急性期脳虚血における酸素輸液剤Fluosol-DAの効果

著者: 石川陵一 ,   ,  

ページ範囲:P.1503 - P.1508

I.はじめに
 fluorocarbonが酸素および炭酸ガスの運搬能を持つことは,1966年Clark4)により,その代用血液としてのパイオニア的基礎研究が行われた.以後数多くの基礎実験,特にこれらの物質の精製,および毒性を取り除く種種の研究が主に日本および米国においてなされてきた.
 現在,最も効果的なfluorocarbonとして知られるfluosol-DAは,最近日本で開発されたもので,perfluorodecalinとperfluorotripropyamineを非イオン系の表面活性剤pluronic-F-58を用いて懸濁液化したものであり,イントラリピッド,グリセロールや脂肪酸を用いて等滲透圧にしたものである.

破裂脳動脈瘤における脳血管撮影像上の脳血管攣縮像と局所脳循環の関連—中大脳動脈領域の脳血管攣縮と遅発性片麻痺の関連

著者: 松崎隆幸 ,   水上公宏 ,   河瀬斌 ,   田沢俊明

ページ範囲:P.1511 - P.1516

I.はじめに
 1951年Ecker & Riemenschneider3)が破裂脳動脈瘤における脳血管攣縮像を初めて脳血管撮影でとらえて以来,脳血符攣縮の臨床的意義について幾多の言及1,13,15)がなされてきた.しかし脳血管攣縮が脳虚血症状の原因であるのか,あるいはその存在が予後,手術成績にどの程度影響を及ぼしうるのかという点については必ずしも意見の一致をみていないのが現状である,その理由として,脳血管攣縮が動的に変化するという点が無視されてきたことに原因があると考えられる.
 本報告では,この脳血管攣縮の動的変化を考慮し,いかなる脳血管攣縮が神経症状に影響を与えるかを明らかにするため,脳血管撮影像上の脳血管攣縮の程度ならびにその推移と神経症状および平均局所脳血流量(Mean regional Cerebral Blood Flow;mean rCBF)との関連を検討した.

症例

Pleomorphic xanthoastrocytoma(Kepes)の1例

著者: 酒井英光 ,   川野信之 ,   岡田耕造 ,   田辺貴丸 ,   矢田賢三 ,   柳下三郎

ページ範囲:P.1519 - P.1524

I.はじめに
 脳腫瘍の予後が,一般にその組織学的悪性度と相関することは周知の事実である.ところが1979年Kepesらは若年者に好発するgliomaのうち病理組織学的に腫瘍細胞のpleomorphismが著明で,一見悪性像を呈するが,良性のbiological behaviorを示す腫瘍があることに注目し,新しい腫瘍概念pleomorphic xanthoastrocytomaとして報告した4).本腫瘍の臨床および病理学上の意義は極めて大きいと思われるのにもかかわらず,いまだ本邦において報告されていない,最近われわれは,Kepesらと同様の症例を経験したので報告する.

一側の内頸動脈欠損を伴った対側脳動静脈奇形の1例

著者: 本田英一郎 ,   上垣正己 ,   正島和人 ,   林隆士 ,   重森稔 ,   倉本進賢

ページ範囲:P.1527 - P.1533

I.はじめに
 内頸動脈欠損症例はくも膜下出血や脳虚血発作などの臨床症状にて偶発的に見いだされるものが多い.今回,われわれの経験した症例は,脳内出血にて発症し,その原因は脳動静脈奇形によるものであった.脳動静脈奇形に一側の内頸動脈欠損を合併した例は,渉猟したかぎり1例も報告されておらず,興味ある症例として報告する.

Primary cerebral neuroblastomaの1例

著者: 大槻泰介 ,   高橋慎一郎 ,   園部真 ,   久保川康子 ,   柴崎信吾

ページ範囲:P.1535 - P.1540

I.はじめに
 副腎髄質,後腹膜および縦隔などの交感神経系細胞の分布する領域に発生するneuroblastomaは,代表的な小児悪性腫瘍の1つであるが,脳原発のいわゆるprimary cerebral neuroblastoinaは稀なものとされる.事実1978年,わが国の脳腫瘍全国集計調査報告22)によると,原発性脳腫瘍6,204例中primary cerebral neuroblastomaはわずか9例(0.1%)にすぎない.
 われわれは最近primary cerebral neuroblastomaの1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

Neurological Surgery 脳神経外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1251

印刷版ISSN 0301-2603

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