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研究
悪性脳腫瘍に対する新しい治療法の試み—1.Bleomycin局所注入療法について
著者: 中沢省三1 大脇潔1 志村俊郎1 伊藤保博1 矢嶋浩三1
所属機関: 1日本医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.1487 - P.1493
文献購入ページに移動脳腫瘍の治療の原則は手術療法である.しかし悪性脳腫瘍は通常極めて浸潤性であり,その発生母地である脳の解剖学的特殊性から考えると,いかに早期発見が可能となり,手術手技の進歩発展があっても,手術療法のみで根治せしめうる症例は極めて限られている.そのため,残存脳腫瘍に対する後療法として,従来の放射線療法に化学療法や免疫療法に期待が寄せられ,これらを中心に多くの研究が積み重ねられている.しかし現在までのところ,化法療法をいかに駆使しても,悪性脳腫瘍の完全治癒を期待することは極めて困難である.これは化学療法剤そのものに種々の制約があるというだけでなく,その投与法にも改良すべき点が多々あるからである.
化学療法剤の投与法には,従来より用いられている全身投与法1)や脳灌流法15),頸動脈内3)・髄液腔内11)・嚢胞内投与法17)などが,それぞれの特徴を生かしながら行われている。しかし,そのいずれにも限界があり,目下のところ余り期待のかけられない補助療法としての域を脱することができず,せいぜい対症的効果や,わずかな延命効果が得られているに過ぎない.
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