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Case Study
膵疾患と誤まられた興味ある症例の検討
著者: 忍頂寺紀彰1 泉屋嘉昭1 中島正二1 植村研一1
所属機関: 1浜松医科大学脳神経外科
ページ範囲:P.455 - P.462
文献購入ページに移動これから呈示する症例は,症状発現より最終診断にいたる1年間,主として,その局在と性質の異なる疼痛を訴えた.初発の疼痛が心窩部痛であり,尿中アミラーゼの上昇があったため,慢性膵炎の診断のもとに治療を受けていた,このほかに,既往歴の消化性潰瘍の治療歴や,慢性肝炎を示唆する血液生化学の所見や肝腫大の理学的所見,加えて超音波診断による総胆管拡張の所見等,すべてが腹部内臓器の異常を指していた,わずかに間欲性心窩部痛は運動で増悪したこと,食欲は障害されることなく,食餌の摂取と全く無関係の疼痛だったことが納得し難い点であった,したがってこの初期の段階では,慢性膵炎の診断は無理からぬものであった.しかし初発症状出現より5カ月後には,疼通の局在も性質も変化してきて,もはやその診断名では説明がつかなくってきている.臨床像の症候論的分析が正しい診断への道であることを示すよい例と思われるので,CPC的な形で提示する.
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