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研究
実験的脳腫瘍ラットにおける細胞性免疫抑制の機序
著者: 上出利光1 佐藤修1 井口進2 菊地浩吉2
所属機関: 1札幌医科大学脳神経外科 2札幌医科大学第1病理
ページ範囲:P.503 - P.508
文献購入ページに移動悪性脳腫瘍の治療に種々の化学療法,免疫療法が導入されたとはいえ,従来の手術,放射線併用療法に比べ,その生存期間の延長は微々たる現状である38).しかも不注意な免疫療法は逆に腫瘍の増大をもたらすという報告もみられる32).一方,中枢神経系は生体の免疫監視機構の及ばないimmunologically privileged site16)と考えられてきており,免疫学的には未知の分野も多く残されている.しかし脳腫瘍患者において種々の細胞性免疫能の低下4,18,27,37,45)が報告され,この低下が病期および予後と相関があること,更に悪性脳腫瘍のなかに箸しいリンパ球浸潤を示す例26)があり,これらの予後が非常に良好なこと等,免疫反応と脳腫瘍との関連が少しずつ明らかになってきている,このような状況をふまえ,脳腫瘍患者の細胞性免疫能の低下の機序を明らかにすることは,今後の免疫療法の向上に対する最初のステップと考え,実験的脳腫瘍ラットを用いて細胞性免疫能の低下の機序について検討したので報告する.
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