文献詳細
文献概要
医学の進歩をになった人々
北里柴三郎・5
著者: 中溝保三1
所属機関: 1都立荏原病院
ページ範囲:P.49 - P.51
文献購入ページに移動新設の伝染病研究所で北里柴三郎が最初に手をつけた研究は,つつが虫病の病原体を発見しようとする試みであった.このために,明治26年に新潟県に出張して,患者の血液を日本ザルに注射して,病毒の感染実験に成功し,その病原体は,患者の血液中にあるプラスモジウム様の小体であると報告した.しかし,この新説は,一般の承認が得られず,のちに日本の学者によってリケッチア病原説が確立されたのは,ご承知のとおりである.
明治27年5月に香港の日本領事から電報がはいって,Bubonic plague(ブボーニック・プレーグ)が香港で大流行して,毎日数百人の人がそのために死亡していると知らせてきた.ところが,外務省ではブボーニック・プレーグとはどんな病気かさっぱりわからない.内務省の保健課に問い合わせがあったが,そこでもお手上げになった.そこで北里のもとで研究していた高木友枝に相談があって,高木が調査したら,それが腺ペストであることが判明した.
掲載誌情報