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文献詳細

雑誌文献

検査と技術10巻12号

1982年12月発行

文献概要

病気のはなし

ダウン症候群

著者: 黒木良和1

所属機関: 1神奈川県立こども医療センター小児科部

ページ範囲:P.1032 - P.1037

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歴史的事項
 1866年JLH Down1)は精薄の人種的分類を試み,蒙古人種に似た一群の精薄を蒙古人型白痴(mongolian type of idiocy)と命名した.これがダウン症候群を疾患単位としてまとめた最初のものである.mongolian type of idiocyの記述は,当時としてはかなり優れたもので,顔貌,体型,性格などの臨床像が的確にまとめられている.当時はDarwinの「種の起源」が出されたころで進化論の影響を強く受け蒙古人型白痴は進化した人種の退行現象として理解されていた.本症の病因については,両親特に母親の感染症(結核,梅毒),母体の老化,胎児の内分泌異常などが主張されたが,いずれも確証が得られないまま消滅していった.
 そのような中で1930年代にすでに本症の原因を配偶子突然変異,すなわち染色体異常に求めた研究者たち(Waardenburg, Bleyer, Fanconi,Penrose)がいた.染色体分析技術もないころにこのような予想がなされていた事実は特筆に値する.それから20年後の1956年にヒトの染色体数が46本であることがTjioとLevan2)により発表され,1959年Lejeuneら3)によって本症の原因が21トリソミーであることが確認されたのである.日本人における最初の報告は,Makinoら(1960)4)によってなされた.現在は病名もダウン症候群に統一されている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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