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核医学的手法による心疾患時の肺血流動態の解析
著者: 島田孝夫1 川上憲司1 井川幸雄1
所属機関: 1東京慈恵医大・臨床検査医学
ページ範囲:P.1080 - P.1080
文献購入ページに移動肺血流分布は肺動脈圧,肺静脈圧,および間質圧が複雑にからみあった四つのzoneからなっている.zone Iは,肺胞内圧>肺動脈圧>肺静脈圧で規定されるzoneで,正常人では肺尖部にわずかに存在するといわれている.肺胞内圧は大気圧にほぼ等しいため肺動脈圧が上昇すると当然ながら,このzone Iは消失する.zone IIは,肺動脈圧>肺胞内圧>肺静脈圧の関係にある肺野で,上部肺の大部分を占め,このZoneでは血流の上下方向の傾斜が大きい.zone I とZone IIの境界,つまりzone IIの上端の高さ(右室からの)は肺動脈圧を表わしている.肺動脈圧が上昇するとzone IIの上端は肺尖を越えてしまうので,zone IIの上端を同定できなくなるが,zone IIの傾斜を外挿することによりその上端を推定することができる.次に,zone IIIは主として中肺野に存在し,肺動脈圧>肺静脈圧>肺胞内圧の関係により規定されている.つまり,zone IIIでは肺動脈圧と肺静脈圧の圧差で血流が流れているが,重力の影響により血流は下肺野で多い.zone IIIの上端(zone IIとIIIの境界)は肺静脈圧の上昇によって上昇する.zone VIは,主として肺底部に存在するが,ここでは血流はかえって減少する,これは肺の重さによる間質圧の上昇によるものであり,間質に浮腫が生じたりすると,このzoneIVの上端が上昇する.なお各zoneの境界では単位肺当りの血流量が不連続的に変化する.
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