文献詳細
文献概要
病気のはなし
原発性免疫不全症候群
著者: 土屋滋1
所属機関: 1東北大学医学部小児科
ページ範囲:P.208 - P.214
文献購入ページに移動我々の住む生物界には無数と言ってよいほどの微生物が存在し,この中にはある種のウイルスや細菌のように,生体に感染を起こすと強い病原性を発揮するような微生物も少なくない.したがって特異的であれ非特異的であれ,これら病原微生物に対する防御機構が生体には必要とされ,事実円口類以上の脊椎動物のすべてにこの防御機構が存在していることが証明されている.
生体の免疫能とは,病原微生物に対する防御機構を含め,自己の体を形成する組成以外の細胞成分あるいは化学物質に対し,それを非自己と認識し,特異的・非特異的とを問わず何らかの形で非自己の成分に対する排除反応を引き起こす能力であると理解しておく.最も高等な脊椎動物に位置するヒトでは,やはり免疫能を担当する機構が高度に発達し,複雑な調節機構を有するネットワークを形成し外界の微生物の侵襲より身を守り,一個体として生物界に生存可能な条件が満たされていると言える.自己免疫疾患や悪性腫瘍の発症は,このような複雑な免疫調節機構の破綻が原因であると考えることもできる.一方これから話題にしていく原発性免疫不全症候群とは,先天的に免疫能を担当する機構の一部あるいはすべてに欠陥が生じたときに発症する,外界の病原微生物に対する免疫反応の欠落による易感染性を主徴とした疾患群である.
掲載誌情報