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文献詳細

雑誌文献

検査と技術10巻6号

1982年06月発行

文献概要

検査法の基礎理論 なぜこうなるの? 選択培地の機構・2

グラム陽性球菌用選択分離培地

著者: 猿渡勝彦1

所属機関: 1長崎大学病院第II内科

ページ範囲:P.499 - P.503

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 臨床細菌学および基礎細菌学の分野における検査あるいは研究を行ううえには,細菌を人工的に増殖させる必要がある.このような目的で用いられる培地は細菌の増殖に必要な炭素源,窒素源およびPO42-,SO42-,K,Mg2+,Ca2+,Fe2+,Mn2+,Cu2+などの無機イオンなどを含有する必要がある.これらの物質はペプトン,肉エキスあるいは酵母エキスなどに多量に含有されており,一般に培地はこのようなペプトンあるいはエキス類を主成分として作製されている.炭素源,窒素源あるいは無機イオンなどは前述したようにペプトンまたはエキス類に含まれており,ほとんどの細菌はこれらの成分中のもので十分であり,特に添加の必要はない.しかし場合によっては緩衝作用のあるリン酸塩あるいは硫酸マグネシウムなどの塩類を加えることもある.さらに窒素源としてはアミノ酸類,アンモニウム塩など,炭素源としてはブドウ糖をはじめとする糖類グリセリンなどのようなアルコール類,有機酸塩などを加える場合がある.また多くの培地に用いられている塩化ナトリウムは主として浸透圧調整の意味で用いられている.
 この培地には大きく大別して寒天培地(固形培地)と液体培地があり,さらにこれらは非選択培地と選択培地とに分けられる.血液寒天培地やチョコレート寒天培地のように,一般に用いられる培地には多くの菌種が増殖できるが,選択分離培地は,多くの細菌が混在している材料から目的とする菌種を選択的に分離するもので,そのために他の細菌の増殖を阻害するような物質,例えば色素,抗生物質および薬品などを加えて,目的菌だけを増殖させるように工夫されたものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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