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文献詳細

雑誌文献

検査と技術10巻7号

1982年07月発行

文献概要

トピックス

尿中Na量測定の重要性

著者: 木下安弘1

所属機関: 1千葉大保健管理センター

ページ範囲:P.606 - P.607

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 原因のはっきりとわからない高血圧症(最高血圧/最低血圧>150/90 mmHg)は,本態性高血圧症(高血圧症全体の90%以上)といわれているが,最近この検査法と治療をめぐって古くて新しい問題が,再び提起されている.高血圧症に食塩制限が効くというのは,1904年に発表されたといわれているが,以来,高血圧症と食塩の関係には多くの論議があって,例えば,Na摂取の低い未開人には高血圧症がないのに,日本人は多量の食塩を毎日摂取するため,世界でも有数の高血圧症国民になっているとか,いやそうでなくて文明国でも,食塩をかなり摂取しても高血圧症になる人種とならない人種があるから,高血圧症と食塩は余り関係がないとする説などである.その是非は別として,両者が病因論的に直接結びつかないにせよ,経験から減塩により高血圧症の多くの因子が作動しなくなるだろうという考えは,常に存在しており,とくに現在のように有効な降圧薬のできるまでは,無塩に近い厳重な食塩制限が高血圧症の治療になっていた.その際,また一日の食塩摂取量が正確に測定できないので,それに代わる便法として24時間尿中Na量の測定が,既に取り上げられていたが,しかし,血圧,統計処理などの方法論の不十分さのために,減塩に伴う血圧下降の真偽のほどは明らかにされなかった.
 ときの流れとともに,最近,尿中電解質の自動分析法による測定の進歩もあって,この問題がにわかに活気を帯びてきた.すなわち,対象となる高血圧症の程度をあるレベルに揃えて,あるコンスタントな状態に置き,次にこれに偽薬(Placebo;テスト薬剤と外見上全く同じもの)と試験薬(この場合はNa含有錠)を無作為に割り付け,同一患者が投薬順序はどうあろうとも必ず両方を服用(交叉)するが,そのときどちらが服用されていたかは,実験終了まで医師にも患者にも(二重)わからない(盲検)という方法(二重盲検交叉法)を用いてこの問題の解決が試みられた.具体的には,軽〜中等度の本態性高血圧症患者で2か月間全く治療を受けていなかったものを選び,まずこれらの患者に一日のNa摂取量が60〜80mmolになるような食事を食べさせ,実験開始前および後から2週ごとに血圧,24時間尿中Na量などの測定を行った.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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