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文献詳細

雑誌文献

検査と技術11巻10号

1983年10月発行

文献概要

トピックス

脳死

著者: 竹内一夫1

所属機関: 1杏林大学医学部脳神経外科

ページ範囲:P.940 - P.940

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 「脳死」は英語でbrain deathまたはcerebral death,ドイツ語でder Hirntodと呼ばれる.わかりやすく言えば,「生きた体に死んだ脳」"a dead brain in a living body"と言うことになる.
 わが国の学会できめた脳死の定義は,「大脳半球のみならず,脳幹を含めた脳全体の非可逆的な機能喪失状態」である.このような状態はわれわれの専門領域では決して珍しくない.例えば頭部外傷により頭蓋内に脳挫傷と出血巣が発生し,頭蓋内圧亢進による脳ヘルニアのため呼吸停止が起こったとしよう.もちろん意識は深昏睡状態である.救急病院では直ちに気管内挿管による人工呼吸をはじめ,種々の蘇生術を行うことになる.状態の安定を待って開頭術による血腫除去も行われる.しかし術後も昏睡状態が続き,自発呼吸も戻らない場合が珍しくない.そして間もなく急激に血圧が下降し,瞳孔は散大し,対光反射も完全に消失する.この時点で脳波を記録すると,全く平坦で脳波活動はみられない.その後6時間以上連続して記録しても,その間全く脳波活動はみられない.このような状態は脳死の判定基準を十分満足するものである.患者は引続き人工呼吸のもとに種々の治療を行ったが,結局第7病日に心停止・死亡した.すなわち死亡前約1週間にわたり脳死状態が継続したことになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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