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文献詳細

雑誌文献

検査と技術11巻4号

1983年04月発行

文献概要

病気のはなし

ウイルス性肝炎(非A非B型肝炎)

著者: 志方俊夫1

所属機関: 1国立予防衛生研究所病理部

ページ範囲:P.312 - P.317

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ウイルス性肝炎とは
 全身倦怠感,黄疸,発熱などを主な症状とする急性肝炎は,黄疸というはっきりした症状があるので昔から知られていた.しかしウイルスという概念のなかったときはカタル性黄疸,つまり十二指腸にカタル性の炎症がおこって,総胆管の閉塞がおこるためと考えられていたのである.
 その後疫学的にあるいは臨床的に,この疾患がウイルスによるものであると推定されてからウイルスがみつかるまで長い時間がかかった.ウイルスが見つからない前から経口感染で,しばしば大流行をおこすA型肝炎あるいは流行性肝炎と,同一注射針を使用しての予防注射などにより伝播される血清肝炎があることはよく知られていた.このウイルス性肝炎の起因ウイルスは長いことみつからなかったので,少なくとも先進国では,コントロールの方法がいまだ確立していない最後の感染症になってしまったのである.しかし1960年代になってBlumbergがオーストラリアの原住民の血清中に特異なリポ蛋白――現在HBs抗原と呼ばれているもの――を見いだしたことを契機にしてB型肝炎ウイルスが見つかり,それから10年してA型肝炎ウイルスも見つかった.現在すでにA型肝炎とB型肝炎は予防とか治療とか対策の段階に入っている.しかしA型肝炎とB型肝炎の確定診断が血清免疫学的にできるようになると,A型でもB型でもないウイルス性肝炎がさらに存在することが明らかになった.これを現在かりに非A非B型肝炎と呼んでいるのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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