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技術講座 血液
線溶試験2—ユーグロブリン溶解時間
著者: 松田保1
所属機関: 1東京都老人総合研究所臨床第二生理
ページ範囲:P.719 - P.723
文献購入ページに移動フィブリン平板法は,線溶能の活性を一定時間で溶解するフィブリンの面積(量)であらわすのであるが,一定の条件下で生じたフィブリン塊が完全に溶解するまでの時間を測定してもよい.
そのもっとも単純な方法は,全血凝固時間の測定に際し,ガラス試験管内で凝固した血液をそのまま37℃恒温槽中で保存し,何時溶解がおこるかを観察するもので,血餅溶解時間(whole bloodclot lysis time)と呼ばれる方法である.通常,普通のガラス試験管が用いられるが,血液とガラスとの接触によって生ずる内因性の線溶機序が結果に影響するのを避けるため,試験管の内面をシリコンで被覆する方法も行われる.このような場合,試験管中の血液をそのまま凝固させてもよいが,シリコン加工試験管では凝固時間が延長するので,血液2mlにトロンビン6単位を加えても良い.判定に要する時間はきわめて長く,24時間以内で血餅(赤血球をまき込んだフィブリン塊)が溶解すれば,プラスミンまたはプラスミノゲン・アクチベーターによる異常な線溶活性化を生じていることになる.24時間の観察で血餅が溶解しなければ陰性とする.なお,凝血塊と空気との接触面積は測定結果に影響を及ぼすとも言われ(空気との接触による内因性線溶機序(連載第1回参照)によると思われる),試験管の内径を一定にする必要がある.また,細菌による汚染は結果に影響するので,清浄なガラス器具を使用する必要がある.この方法は流血中のプラスミノゲン・アクチベーターおよびプラスミノゲンによって主に影響されると思われるが,いずれにしても,きわめて鈍感で陽性所見の得られることはまれであり,ことに線溶低下を診断する目的には適していない.
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